ギリシア時代のヒポクラテスから継承された治療医学は、病気になって初めて診断・治療をする患者を前提としてきました。21世紀の超高齢化・超運動不足社会に突入し、医学は一大転換期にさしかかっています。それは患者を前提としない医学です。患者になって初めて役に立つ医学ではなく、健康なうちに役立つ予防医学の発展が今後の大きな社会的ニーズになるでしょう。
遺伝的要因と生活習慣(食事、運動、休養)が長期間にわたって不適切だった人の罹りやすい病気が生活習慣病です。「 死の四重奏」と呼ばれる肥満症、糖尿病、高脂血症、高血圧症は、自覚症状がないために気づくのが遅れ、手遅れになってしまうことが多いです。最近の運動・医科学の研究により、これら生活習慣病に慢性的な運動不足が大きく関係していることが明らかになりました。今や、「生活習慣病」は「運動不足病」と言っても過言ではありません。
体脂肪を調節しているのは自律神経です。運動をしないと自律神経の活動が低下します。筋力が落ちて筋肉の量も減り、基礎代謝も低下し、その結果として太るわけです。軽い歩行程度の運動でも、筋肉から免疫強化や生活習慣病の予防・改善に役立つ多数の遺伝子をONにする物質が放出されることが明らかとなってきました。運動は過剰な食欲を減らし、内臓脂肪を低減させます。 現在と将来の健康のため、これを機会に自分の生活習慣について考えてみましょう。