プロジェクトの概要
研究プロジェクト | 21世紀における文化としての設計科学と生産科学 |
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実施期間 | 2009~2011年度(第3年次) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
研究代表者 | 岩田 一明 大阪大学・神戸大学名誉教授 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
研究目的要旨 | 近年における人工財(ハードウエア、ソフトウエアや仕組み・仕掛けなど人間が生み出す有形、無形のもの)の創出に関わる設計科学と生産科学分野は、人口・資源・エネルギーなどの諸問題や価値規範の多様化の中で、新たな状況に直面している。このことは人工財の設計科学と生産科学の役割や責務などを、生活様式や社会通念、制度などを含む文化の視点より再考する必要性を示唆している。本課題では、文化としての設計科学と生産科学(製造文化)を検討するために、前提となる現代的課題や制約条件などを抽出するとともに、それらの関係性を総合的に考証する。同時に、そこから生まれてくる新しい製造文化の姿についても議論を行う。 |
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研究目的 | ① 背景:
20世紀は科学技術の世紀といわれ、社会生活に占める重みが増大した。その後も、科学技術への傾斜は続いているように見える。同時に、科学技術がもたらす問題点も、多数、顕在化した。科学技術に対する精神面の不安定さが拡大することへの懸念も少なくない。21世紀初頭の現在、これら社会と科学技術の関係性において生起する問題の本質が混沌として明確でない状況にある。 従前より、多様な文明論、文化論が展開されてきた。今後、グローバル化した世界の視点を包含した、わが国の文化的存立の構築と維持に関する検討、すなわち21世紀の文化像や文明をどのように考えればよいかが希求されている。このとき、文化・社会と科学技術とのInter-disciplinary、Trans-disciplinary(超領域的)、また、Cross-disciplinaryな諸相への深層的な検討の重要性が指摘されている。その際、科学/技術、とくに「広義の人工財創出」を対象にするとき、どのような「系、目的、制約条件、合意形成」を考慮すべきかを検討し、制度やルールの設計という視点も融合させて取り扱うことが不可避と考えられる。 上示のように、現在、21世紀における「人工財創出」の新しい枠組みの深耕が希求されている。たとえば、人工財創出の系そのものの捉え方、人工財としてのロボットと人間との連続性・不連続性の問題、また人間社会・文化の枠組みの中でのロボット・人工臓器の位置づけと役割など、学術研究や開発に先立つ考え方が深く検討され、合意されておくことが不可欠である。 ② 必要性:この課題は、とくに人工財創出面における根源的なものであり、人類の将来に向けて緊要で避けることができないものと考えられる。いいかえれば、科学技術に関わる部分問題から全体問題への視点の変化の中での俯瞰的・根源的課題と理解され、そこに新たな学術の芽が隠されている。 大学など研究機関で実施されている研究開発課題は、多くが部分問題であり、価値規範の本質的変遷を意識したものは限定されている。これに対し、本課題では多様な専門分野の卓越した専門家による知の融合と触発の中に、この種の問題への解決を導く。すなわち、個別専門分野適応問題というよりも多分野融合型のアプローチである。本課題は、戦略性とともに緊要性を有する課題であり、遅滞は人類の生存、また、わが国の歴史性を踏まえた持続的発展と生存に大きな支障をきたす可能性がある。近未来のわが国の文化形成における根幹的問題を内蔵している。同時に、学術領域にも社会一般にも、理念のみでなく、より具体的な検討と合意への素案が必要である。この意味で、本課題に対する今後のアプローチの枠組みの提案は新たな学術の芽としての枠組みの提案であり、その検討は学術領域で知の蓄積を図ってきた研究者の、未来に向けての貢献課題であり、義務ともいえる。 ③ 方針:多分野の識者の学術的討議を通して、「21世紀における文化としての設計科学と生産科学」の前提とすべき基本的な考慮の視点ならびにベースとなる系や制約条件、また課題のモデルや解決手法などの諸点を提示・集約し、今後に向けて考究すべき新学術領域の候補課題とその枠組みについて検討したい。例えば、醸成すべき新しい文化(技術文化、製造文化)や科学技術と社会とのかかわりの問題などである。 |
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キーワード | 設計科学、生産科学、製造文化、持続可能性、生存可能性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
参加研究者リスト11名 |
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2011年度 研究活動予定 |
① 研究会開催予定:
5月、11月に午後半日の研究会を、8月、2月に一泊二日の研究会を開催予定。会場は全て高等研で実施。 ② 話題提供予定者:4名科学技術公共学、価値の科学、共感と縁の科学など、本プロジェクトで提案する新学術領域に関連の深い専門家を国内より4名程度招へい予定。 |
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研究活動実績 | 2009年度:
「21世紀における文化としての設計科学と生産科学」に関して今後検討すべき基軸となる課題を抽出選定するために、外部の話題提供者、および、研究会参加者による話題提供、ならびにそれら内容に対する討議を中心に活動を行った。討議を行った話題の概要は以下のように整理できる。
これらの結果から、これまでの設計科学、生産科学が議論してきたような、与えられた目的関数のもとで、いかに効率良く、コストパフォーマンス良く、人工財を創出するかという課題ではなく、前提となる現代的課題や制約条件が大きく変化しつつある中で、人工財の設計科学と生産科学の役割や責務が大きく変貌し、我々は人工財として何を作るべきかが問われていることを明確にすることができた。 研究会開催実績:第1回: 2009年7月1日 (於:高等研) 第2回: 2009年9月18日~19日(於:高等研) 第3回: 2009年11月14日 (於:高等研) 第4回: 2010年1月22日~23日(於:高等研) 第5回: 2010年3月19日 (於:高等研) 話題提供者:3名
2010年度: 2009年度に抽出された課題の方向性、すなわち、前提となる現代的課題や制約条件が大きく変化しつつある中で、人工財の設計科学と生産科学の役割や責務がどのように変貌しつつあるなか、我々は人工財として何を作るべきか、を探るための主要なキーワード、今後への問題点、新しい概念やモデルなどを検討するために、外部の話題提供者、および、研究会参加者による話題提供、ならびにそれら内容に対する討議を中心に活動を行った。討議を行った話題の概要は以下のように整理できる。
今年度は特に、変革しつつある社会における科学技術の役割の変化、社会と科学技術の関係性の変化を中心に討議を行った。これらに基づき、来年度に中心的に検討すべき課題、新しい学術領域について第6回研究会において議論を行い、三つの方向性に集約した。一つは、科学技術が社会に与える影響はこれまで以上に今後増大する可能性があり、このとき、科学技術の開発、発展には何らかの倫理的方向付け、規範がますます必要となってくる。本課題は、例えば、ユニバーサルデザインにその兆しが見受けられるような、倫理に根ざしたイノベーションや技術革新の可能性を探る「科学技術公共学」である。第二は、「価値の科学」である。設計科学・生産科学は使用者に対して価値を創造し提供するための科学であるが、世代間、世界における地域間で価値観が多様化しており、今後ますます発散する危険性が高い。このような状況のもとで、設計科学・生産科学の基礎論として「価値」をどのように理解すればよいのかを探る。第三は、第二の課題とも関係するが、現代において価値は、従来的なモノの提供よりもむしろ、共感であったり、個と個の関係の成立であったり、個人の体験や関与することから生じる傾向がある。このような価値を社会で増幅する仕組みを検討する「共感と縁の科学」である。 研究会開催実績:第1回: 2010年5月28日~29日(於:高等研) 第2回: 2010年7月3日(於:高等研) 第3回: 2010年9月4日(於:高等研) 第4回: 2010年10月15日~16日(於:東京) 第5回: 2010年12月17日~18日(於:高等研) 第6回: 2011年3月5日(於:高等研) 話題提供者:6名
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研究成果報告書 の出版 |
成果報告書に関しては作成の方向で検討しているが、正式には3年度の活動状況や委員のご意見を踏まえて、最終的に判断する。 |