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プロジェクトの概要

 

研究プロジェクト

メタマテリアルの開発と応用

実施期間 2009~2011年度(第3年次)
研究代表者 石原 照也 国際高等研究所招へい研究員/東北大学大学院理学研究科教授
研究目的要旨

電磁波の波長よりも十分に小さく、原子よりは十分大きな構造をうまくデザインすることによって負の屈折率などの異常な電磁応答を実現することができる。このような「新物質」をメタマテリアルと呼ぶ。メタマテリアルを用いることにより波長分解能を超えたイメージング、電磁波迂回による透明化、光領域の磁性などが実現されると考えられている。

本研究会では、マイクロ波から、テラヘルツ波、可視領域までの電磁メタマテリアルに関心をもつ産学の研究者がそれぞれ固有のバックグラウンドを超えて交流し、新しいメタマテリアルの開発とその応用を議論して、日本におけるこの分野を推進し、世界をリードすることを目指す。

研究目的 ① 背景:

電磁波に対する応答を制御するために、波長より小さい構造を利用するという考え方は古くからあった。これによって誘電率と透磁率を同時に負とすることにより屈折率が負の物質を作り出すことができると認識された時点でメタマテリアルという新しいパラダイムが誕生したと考えられる。現在では負の屈折率物質にとどまらず、誘電率、透磁率およびカイラリティを、マイクロ波、THz波および光波に対するサブ波長構造によって制御することで生じる新奇な物理現象とその応用を扱う大きな研究分野が急速に成長を続けている。メタマテリアルを用いることにより波長分解能を超えたイメージング、電磁波迂回による透明化、光領域の磁性などが実現されると考えられている。

② 必要性:

初期の発展において、光について議論された現象が、マイクロ波というずっと波長の長い領域で検証された。メタマテリアルは広範な既存研究分野に関係した現象を、マックスウェル方程式の粗視化に基づく共通の概念で理解する学問分野であるといえる。波長領域によって、材料パラメタ、加工方法、応用対象は異なるが、異なった既存研究分野に属する研究者が一堂に会して、議論することはこの分野の発展のために必要不可欠である。

③ 方針:

大学、研究所、企業に属する研究者が通常の学会とは異なった、十分な時間をとった環境で徹底的に議論を行う。各自の研究成果の発表のみならず、基礎的な事項に関するチュートリアル講義および諸外国やメンバー以外の研究についてのレビュー発表による情報共有を行い、各自の研究基盤の強化を図る。これまで、異なった学会で独自に発展してきた研究文化の相互理解と、その刺激による新たな発展により、日本がリードする研究分野の確立をめざす。

キーワード メタマテリアル、負の屈折率、左手系物質、マイクロ波、テラヘルツ、光、産学連携
参加研究者リスト
(54名うち
学界38名、
産業界 16名)
JSPS先導的研究開発委員 30名: 学界16名、産業界14名
石原 照也 国際高等研究所チーフリサーチフェロー/東北大学大学院理学研究科教授
宇野  亨 東京農工大学大学院共生科学技術研究院教授
岡本 隆之 理化学研究所河田ナノフォトニクス研究室先任研究員
尾辻 泰一 東北大学電気通信研究所ブロードバンド工学研究部門教授
梶川 浩太郎 東京工業大学大学院総合理工学研究科教授
北野 正雄 京都大学大学院工学研究科教授
五神  真 東京大学大学院理学系研究科教授
榊原 久二男 名古屋工業大学大学院工学研究科准教授
迫田 和彰 物質・材料研究機構先端フォトニクス材料ユニットユニット長(2009年度:高等研委員)
真田 篤志 山口大学大学院理工学研究科教授
佐野 栄一 北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センター教授
田中 拓男 理化学研究所基幹研究所田中メタマテリアル研究室准主任研究員
西村 直志 京都大学大学院情報学研究科教授
野田  進 京都大学大学院工学研究科教授
萩行 正憲 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター教授
堀井 康史 関西大学総合情報学部教授
秋山 浩一 三菱電機株式会社先端技術総合研究所主任研究員
井川 耕司 旭硝子株式会社中央研究所ガラス技術領域グループ
ソフトソリューション技術ファンクション ファンクションリーダー
尾内 敏彦 キヤノン株式会社総合R&D本部不可視領域イメージング第二研究室室長
大西  大 ローム株式会社フォトニクス研究開発センターセンター長
大和 壮一 株式会社ニコン精機カンパニー開発本部ニコンフェロー
唐木 幸一 オリンパス株式会社未来創造研究所所長
坂本 哲洋 ソニー株式会社CDDG・SMBD・次世代光メディア開発部統括課長
笹部 孝司 パナソニック電工株式会社先行技術開発研究所分析技術研究室室長
新谷 俊通 株式会社日立製作所中央研究所先端ストレージ研究部主任研究員
高岸 成典 住友電気工業株式会社研究統括部 主幹
外谷 高志 オムロン株式会社エレクトロニックコンポーネンツカンパニー
エンジニアリングセンタ開発センタグループ長
納富 雅也 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所グループリーダー
福田 浩章 株式会社リコー グループ技術開発本部グループ技術企画室
技術戦略室スペシャリスト
藤川 久喜 株式会社豊田中央研究所情報電波応用研究部
光デバイス・システム研究室主任研究員

高等研プロジェクト委員 24名: 学界22名、産業界2名
浅居 正充 近畿大学生物理工学部教授
浅川  潔 筑波大学数理物質科学研究科客員教授
岩長 祐伸 物質・材料研究機構先端フォトニクス材料ユニット主任研究員
上田 哲也 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科助教
大野 誠吾 東北大学大学院理学研究科助教
岡本 敏弘 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部助教
落合 友四郎 大妻女子大学社会情報学部社会情報学科准教授
小野田 勝 秋田大学大学院工学資源学研究科准教授
酒井  道 京都大学大学院工学研究科准教授
澤田  桂 理化学研究所播磨研究所XFEL研究開発部門
データ処理系開発チーム特別研究員
下条 雅幸 芝浦工業大学工学部教授
杉本 喜正 物質・材料研究機構先端フォトニクス材料ユニット主席研究員
田丸 博晴 東京大学大学院工学系研究科附属光量子科学研究センター特任講師
張  紀久夫 大阪大学名誉教授
徳田 安紀 岡山県立大学情報工学部教授
冨田 知志 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科助教
永井 正也 大阪大学大学院基礎工学研究科准教授
中山 和之 東北大高等教育開発推進センター助教
古屋 一夫 物質・材料研究機構国際ナノテクノロジーネットワーク拠点副拠点長
松本  潔 東京大学IRT研究機構特任教授
宮嵜 博司 東北大学大学院工学研究科准教授
宮丸 文章 信州大学理学部助教
佐藤 和夫 株式会社豊田中央研究所情報エレクトロニクス研究部
電波応用研究室室長
東條  淳 株式会社村田製作所技術・事業開発本部商品開発統括部
商品開発3部上級研究員
2011年度
研究活動予定
① 研究会開催予定:

第1回: 2011年 6月頃 1泊2日(於 高等研)

第2回: 2011年11月頃 1泊2日(於 高等研)

② 話題提供予定者: 4名程度

スピントロニクス、プラズマ、電子ビーム、加速器のコミュニティでメタマテリアルの概念が適用できそうな専門家を招聘する予定。

研究活動実績 2009年度:

学術振興会の先導的研究開発委員会と合同で研究会を運営した。設立総会においては末松安晴、 粟井郁雄両先生に新しい研究分野を開拓するのに参考になる講演をいただいた。その後の研究会では共通理解を確立するためのチュートリアル講演(1時間半の時間に自由に質疑)とグループの研究成果あるいは国内外の研究動向を報告する講演(30分の話題提供と30分質疑応答)2つを組み合わせるスタイルをとった。各回の話題は特定のテーマを定めるのではなく、マイクロ波・THz波のメタマテリアルに関する話題と光メタマテリアルに関する話題をバランスよく配置し、どちらの分野の研究者も参加しやすいように配慮した。また、ナイトセッションでは自己紹介や近況報告を行い、研究交流が活性化するように工夫した。異なったバックグラウンドの研究者が交流することが、学際的なメタマテリアル研究を推進するのに本質的に重要であるからである。先行する高等研研究プロジェクト「ナノ物質量子相の科学」では研究会において生みだされる知的財産の保護するために、研究機構を作り、守秘義務をもつ(産学連携高等研モデル)としたが、本研究会ではメンバー間の議論の結果、研究会はオープンであるとし、議論された内容をそれぞれのグループに持ち帰り、議論をフィードバックすることが、現在の研究フェーズにおいてはより重要であるという結論に達した。

研究会開催実績:
第1回(設立総会) 2009年5月18日(於:東京)
第2回: 2009年7月24日~25日 (於:高等研)
第3回: 2009年10月30日~31日 (於:高等研)
第4回: 2010年1月8日~9日  (於:高等研)
幹事会: 2009年5月18日 (於:東京)
話題提供者:7名
粟井 郁雄 龍谷大学理工学部教授
落合 友四郎 富山県立大学工学部准教授
金森 順次郎 国際高等研究所上級研究員/大阪大学名誉教授
末松 安晴 国立情報学研究所名誉教授
田中 耕一郎 京都大学理学研究科教授
野村 壮史 株式会社豊田中央研究所安全・情報システム研究部電磁波応用研究室研究員
宮崎 康次 九州工業大学工学研究院准教授
その他の参加者:18名
落合 友四郎 富山県立大学工学部准教授
倉見 洋輔 京都大学大学院情報学研究科大学院生
黒澤 裕之 東北大学大学院理学研究科大学院生
玉山 泰宏 京都大学大学院工学研究科大学院生
中島 龍也 東北大学大学院理学研究科助教
藤森 和博 岡山大学大学院自然科学研究科助教
畑野 敬史 東北大学大学院理学研究科大学院生
久門 尚史 京都大学大学院工学研究科大学院生
ホセ・ナチェル 公立はこだて未来大学複雑系科学科准教授
三間 圀興 国際高等研究所フェロー/光産業創成大学院大学特任教授
足立 雅和 パナソニック電工株式会社先行技術開発研究所CAE設計技術研究室主任
岡村 慎一郎 オムロン株式会社エレクトロニクスコンポーネスビジネスカンパニー
エンジニアリングセンタ開発センタ
草尾  幹 住友電気工業株式会社
諏訪  敦 パナソニック電工株式会社先行技術開発研究所
塚越 拓哉 オリンパス株式会社未来創造研究所主任研究員/岡山大学大学院自然科学研究科
鳥羽 英光 株式会社ニコンコアテクノロジーセンター研究開発本部光技術研究所第五開発課
水谷 夏彦 キヤノン株式会社
山崎 慎太郎 株式会社豊田中央研究所走行安全研究センター電磁波応用研究室
2010年度:

昨年と同様、チュートリアル的な講演と話題提供を組み合わせた研究会を行った。新規参加者が毎回いるので、ナイトセッションでは自己紹介、近況報告を必ず行い交流を深めるよう配慮した。本年度第一回の研究会ではSeoul National Univ. のD.S.Kim教授とMax Planck 固体研のM. Lippitz准教授の参加を得、それぞれの最新成果と、韓国とドイツにおけるメタマテリアル研究の現状を紹介していただいた。第二回の講演会では一日目のチュートリアルに続き、ナイトセッションでは9月にドイツで開かれたMetamaterials2010の報告が萩行教授からあった。3月11日には新学術領域研究「電磁メタマテリアル」と一般公開のシンポジウムを東京大学本郷キャンパスにて共催し、アメリカから、UCLAの伊藤龍男先生とこの分野のブレークの契機となる負の屈折率の実験的な検証を行ったDuke大のD.R.Smith教授を招聘してこの分野の面白さを広い領域の研究者・学生に広めた。伊藤先生の講演中に東北地方太平洋沖地震がおき、建物の外に避難するように大学から指示があったため、40分間講演が中断された。翌日には、それに引き続き、伊藤先生、Smith教授を交えて高等研・学振の研究会として、メタマテリアルの応用に関する議論を行った。東京において、新学術領域研究と合同で外国の著名研究者を招聘して共催シンポジウムを行ったのは、メタマテリアル研究の裾野を広げて研究のさらなる活性化をはかるとともに、より多くの企業研究者に興味を持っていただき、学術振興会のナンバー委員会への助走を行うことが狙いであった。

研究会開催実績:
第1回: 2010年6月4日~5日  (於:高等研)
第2回: 2010年11月5日~6日  (於:高等研)
第3回: 2011年3月11日~12日 (於:東京大学)

第1回幹事会: 2010年11月5日  (於:高等研)
話題提供者:9名
飯田 琢也 大阪府立大学21世紀科学研究機構ナノ科学・材料研究センター特別講師(テニュア・トラック講師)
伊藤 龍男 カリフォルニア大学(UCLA)教授
鶴田 健二 岡山大学大学院自然科学研究科准教授
道下 尚文 防衛大学校電気電子工学科助教
宮崎 英樹 物質・材料研究機構量子ドットセンター主幹研究員
川島 宗也

日本電信電話株式会社NTT未来ねっと研究所

ワイヤレスシステムイノベーション研究部

Daisik Kim Department of Physics, Seoul National University
Markus Lippitz Max Planck Institute for Solid State Research
David R. Smith Duke University教授
その他の参加者:20名
大塚 智也 徳島大学大学院工学研究科大学院生
大淵 泰司 電気通信大学先進理工学科
黒澤 裕之 東北大学大学院理学研究科大学院生
志水 隆一 国際高等研究所フェロー/大阪大学名誉教授
高野 恵介 大阪大学
中島 龍也 東北大学大学院理学研究科助教
中西 俊博 京都大学工学研究科
中山 和之 東京大学研究員
新納 和樹 京都大学大学院情報学研究科大学院生
玉山 泰宏 京都大学大学院工学研究科大学院生
久門 尚史 京都大学
松尾 哲司 京都大学工学研究科
松本  潔 東北大学大学院理学研究科特任教授
青山  茂 オムロン株式会社
梅内 芳浩 オムロン株式会社エレクトロニック&メカニカルコンポーネンツビジネスカンパニー
岡村 慎一郎 オムロン株式会社エレクトロニックコンポーネンツカンパニーエンジニアリングセンタ開発センター
田中 健二 ソニー株式会社コアディバイス開発本部
鳥羽 英光 株式会社ニコン コアテクノロジーセンター研究開発本部光技術研究所第五開発課
藤岡 良介 オムロン株式会社
山田 龍太 凸版印刷株式会社
研究成果報告書
の出版
シーエムシー出版より2011年6月に成果の一部を出版予定
参考: CMC出版の出版企画書
■監 修
石原照也(東北大学)、真田篤志(山口大学)、梶川浩太郎(東京工業大学)
■出版のねらい
2007年に出版した「メタマテリアル-最新技術と応用-」からはや3年が経ちました。その間に、発表される論文は指数関数的に増大し、日本の中からもカイラル真空状態の発見など重要な寄与がなされています。一方、国内では2010年に科学研究費補助金の新学術領域研究で「電磁メタマテリアル」が採択され、メタマテリアルに関する関心が高まっています。このようななか、国内外の最新の研究状況を知るための便宜をはかるための書籍の出版はタイムリーかつ重要です。そこでこの2年間に国際高等研究所と日本学術振興会の共催で行われている研究会「電磁メタマテリアルの開発と応用」で講演を行なった方を中心に執筆をお願いし、出版を企画しました。執筆者自身の研究の紹介には偏せず、他の研究との関係などが初心者にもわかるように注意をはらっていただけると幸いです。本書を契機に日本のメタマテリアル研究がさらに質・量ともに発展し、独創的なものを生み出すことを期待しています。               (監修一同)
■本書の想定読者
本書が想定する読者層は、メタマテリアルに関心をもつ電子部品・電子材料メーカー、電機メーカー、光学関連メーカーなどの研究開発担当者、大学・研究機関の研究者の方々です。
■発行までのスケジュール
原稿締切: 2011年2月28日(月)
校  正:2011年4月下旬以降の予定(制作の進行状況により前後します) 発  行:2011年6月(予定)