プロジェクトの概要

 

研究プロジェクト

ナノ物質量子相の科学

実施期間 2008~2010年度(第2年次)
研究代表者 金森 順次郎  国際高等研究所上級研究員/大阪大学名誉教授
研究目的要旨

ナノ物質で総称される系の原子レベルでの多様な動的、静的構造とその量子状態は、新しい物性を生む母体として注目されている。しかし、ナノダイナミックスや量子位相制御に着目すると、まだその一部が解明されているだけであるといってよい。現在多くの孤立したプロジェクトが組織され、様々な角度から研究が進められているが、一つの研究方向に集中することの必要性の反面、多様な可能性の一端だけを捉えて、他の可能性に気がつかず大魚を逸する危険性を常に秘めている。これを防ぎ、新しい可能性を発掘するための物質科学に立脚し、学術コミュニティ間、各種プロジェクト間の壁を取り払った多角的な総合調査を行い、さらに学理を深く究め、応用を視野にいれてイノベーションへ繋げていく。また、社会科学のコミュニティとの交流を企画し、新たな物質科学技術の社会的受容についても検討する。

研究目的

ナノ物質で総称される系の原子レベルでの多様な動的、静的構造とその量子状態は、新しい物性を生む母体として注目されている。しかし、ナノダイナミックスや量子位相制御に着目すると、まだその一部が解明されているだけであるといってよい。現在多くの孤立したプロジェクトが組織され、様々な角度から研究が進められているが、一つの研究方向に集中することの必要性の反面、多様な可能性の一端だけを捉えて、他の可能性に気がつかず大魚を逸する危険性を常に秘めている。これを防ぎ、新しい可能性を発掘するための物質科学に立脚し、各種プロジェクト間の壁を取り払った多角的な総合調査を行い、さらに学理を深く究め、応用を視野にいれてイノベーションへ繋げていくことは、現在の情勢から考えて極めて時宜を得ていると考えられる。


本研究会はナノ物質のデザインと創成、構造制御および評価から始まり、光励起、イオン伝導等に伴う動的原子構造変化、光による電子状態制御等のミクロ構造の制御から生まれる新しい物性の研究から、巨大物性応答を利用した各種高感度センサー、高効率触媒と高効率エネルギー変換および新しいクラスの次世代ナノエレクトロニクス関連の各種デバイスへの応用研究をカバーする予定である。ナノ物質は、生体物質研究や環境問題に関連して各種の微量物質の検出と有害物質除去に応用されるようになっているが、新しい需要に応えてより広く可能性を開拓することが期待される。また各種電池や新しい触媒開発も環境問題やエネルギー問題を解決するための大きな目標である。電圧による磁性制御を可能にする強磁性、強誘電性を同時に発揮する物質や非線型電流特性をもつ新しいナノ物質の探求も構造制御されたナノ物質の量子状態の研究課題の例である。転移温度が室温に達しないために、用途が限られていたsuperconductorも、新しい超伝導機構を示唆する各種の新物質の発見とともに、酸化物等でミクロな領域では高温までその性質を保持する可能性が最近発見されている。これらの量子状態を利用するエレクトロニクスは、従来optoelectronics のように、研究対象の物性と物質に応じて、nonlinear, spin, calori, molecular, superconductivity, multiferroic, oxide等の形容詞を付して分類されていたが、分野横断的な展開が今後ますます重要となる。たとえば、ナノ粒子のレーザー発光もその波長調節の容易性から新しいカラーディスプレイに利用する可能性も最近の話題の一つである。過去にさかのぼれば、スピンエレクトロニクスでの最近のMRAMの発展も構造デザインと制御という基礎的分野からデバイスまでの縦断的研究の例である。今世紀初頭、Fe系の強磁性金属(100)面にMgOを適当な厚さ積み上げるデザインが高効率のスピン偏極電流を生むことが理論的に予言された。これを受けて、Fe面の酸化を防止する構造制御が鍵となってその有効性が実験によって確立され、その後TMR材料研究が飛躍的に発展して実用的MRAMの実現に至った。分野横断的な研究のもう一つの例は、イオン伝導による原子移動を利用した新しい電流スイッチである。


本研究会は、専門領域を超えた自由な討論の場を提供することにより、ナノ物質量子相の新しい科学を開拓するための総合調査を実施する。

前年度の研究の概要

2008年度は、キックオフ会議を含め4回の研究会と4回の幹事会を実施。

ナノ物質量子相の代表的なもので、最近大きな進展のあった領域に焦点をあてて議論を深めた。特に第2回では、細野教授の研究チームで見いだされた鉄・ニクタイド系の物質の超伝導のメカニズムについてと、フラストレート系の典型である鹿野田教授による三角格子子上での超伝導状態、半強磁性状態、さらに量子スピン液体の実証についての議論を深めた、これらはナノ物質での量子効果面白さを示すものである。
◆ 研究会
1) キックオフ会議  2008年7月8日(火)
場所:日本学術振興会 一番町事務室 5階第一会議室
趣旨説明、幹事任命、
特別講演「磁気抵抗効果材料研究の発展をかえりみて」
新庄輝也 京大名誉教授、国際高等研究所上級研究員
2) 第2回研究会
2008年9月26日(金)14:00~21:00
2008年9月27日(土)9:30~12:00
場所 [216号室]
テーマ:CuO系超伝導、FeAs系新超伝導、有機系超伝道量子相の類似性と非類似性
学振第181委員会と共催
3) 第3回研究会
2008年12月12日(金)14:00~21:00
2008年12月13日(土)9:30~12:00
場所 [216号室]
テーマ:極端・極限条件下でのナノ量子相の科学
4) 第4回研究会
2009年3月13日(金)14:00~21:00
2008年3月14日(土)9:30~12:00
場所 [216号室]
テーマ:ナノカーボンの量子相の科学
学振第181委員会と共催

◆ 幹事会
2008年6月16日(火)18:00~ 吹田市内にて
2008年9月16日(火)18:00~ 京都市内にて
2008年12月13日(土)12:00~ 国際高等研究所にて
2009年1月31日(土)15:00〜 国際高等研究所にて
キーワード ナノ物質、量子相、スピン、電荷、軌道
研究計画・方法
1.総合研究会
年に3~4回、1回あたり2日間の研究会を開催
参加予定者は30~40人/回 程度
各回、両日で最大8名の講師に話題提供をお願いし、ディスカション時間を十分にとるように計画
初日の夜はナイトセッションを開催し、研究会とは違った主題について議論する
2.先導的・機動的研究会
年に1~2回、1回あたり1日間の研究会を開催
参加予定者は10~30人/回 程度
各回、最大3名の講師に話題提供をお願いし、ディスカション時間を十分にとるように計画
特に、参加研究者外で、異分野の講師を招聘する
研究会開催予定

総合研究会:年に3~4回、開催予定(於 高等研 2日連続、宿泊型)
先導的・機動的研究会:年に1~2回 開催予定(1日)
なお、総合研究会のうち1~2回は、(独)日本学術振興会産学協力研究委員会第181委員会と共催予定

1) 第5回研究会
開催日2009年6月19日(金)
2009年6月20日(土)
14:00~21:00
9:30~12:00
場所216号室
テーマ「光と物質の相互作用によるナノ量子相」
2) 第6回研究会 (学振181委員会と共催)
開催日2009年9月4日(金)
2009年9月5日(土)
14:00~21:00
9:30~12:00
場所216号室
テーマ「ナノ・メゾ空間での量子相の発現」
(有機錯体空間、無機物による空間)
(学振181委員会と共催)
3) 第7回研究会
開催日2009年12月ごろ 予定
◆ 幹事会
2009年4月11日(土)13:00~ 国際高等研究所にて
拡大幹事会として開催予定

研究会テーマ(案)キーワードとして
○ 2008年度(実施済、計画済)
高温超伝導から常温超伝導へ(重い電子系、対称性と量子相、有機超伝導体 など)
極端・極限条件下での量子相(超高圧、超強磁場、超高電場 など)
ナノカーボン
○ 2009年度以降(企画段階)
スピン流の基礎とデバイス応用(スピントランジスタ、スピンホール素子 など)
表面・界面の量子相構造(超伝導、磁性、誘電性、化学反応、触媒効果 など)
有機分子と無機物質との界面での相互作用(電極問題)
物質の量子相と光の相互作用(光発電、非線形応答)
低散逸系を実現するナノ量子相
特長あるナノ量子相を実現する物質創成とその応用
(超格子、量子ドット、ナノチューブ、グラフェン、超分子、ナノ・メソ空間など)
ナノ物質の量子相と情報処理(量子情報処理)
膜がかかわるナノ量子ダイナミックス(生体膜、人工膜)
生体物質の量子効果と生物活性(光合成、代謝調節・呼吸 感覚 など)
量子揺らぎからマクロ揺らぎへ(確率共鳴、スケーリング則とユニバーサルクラス)
社会科学との接点 経済物理
トランスサイエンス・社会的受容
参加研究者 78名うち学界62名、産業界16名(*幹事)
金森 順次郎 国際高等研究所上級研究員/大阪大学名誉教授
秋永 広幸 産業技術総合研究所ナノ電子デバイス研究センター副センター長
阿波賀 邦夫 名古屋大学物質科学国際研究センター教授
岩佐 義宏 東北大学金属材料研究所教授
潮田 資勝 物質・材料研究機構フェロー
大野 英男 東北大学電気通信研究所教授
小口 多美夫 広島大学大学院先端物質科学研究科教授
小野 輝男 京都大学化学研究所教授
腰原 伸也 東京工業大学フロンティア研究センター教授
島川 祐一 京都大学化学研究所教授
鈴木 義茂 大阪大学大学院基礎工学研究科教授
十倉 好紀 東京大学大学院工学系研究科教授
永長 直人 東京大学大学院工学系研究科教授
新田 淳作 東北大学大学院工学研究科教授
浜田 典昭 東京理科大学理工学部教授
中村 貴義 北海道大学電子科学研究所教授
吉田  博 大阪大学大学院基礎工学研究科教授
渡部 行男 九州大学大学院理学研究院教授
射場 英紀 トヨタ自動車株式会社電池研究部部長
今本 浩史 オムロン株式会社テクノロジーコラボレーションセンター主幹
大森 達夫 三菱電機株式会社先端技術総合研究所デバイス技術部門部門統轄
長我部 信行 株式会社日立製作所研究開発本部本部長付
佐川 眞人 インターメタリックス株式会社代表取締役
曽根 純一 日本電気株式会社中央研究所支配人
高尾 正敏 国際高等研究所フェロー/前パナソニック株式会社中尾研究所参事
中村 志保 株式会社東芝研究開発センター記憶材料デバイス・ラボラトリー研究主幹
横山 直樹 株式会社富士通研究所フェロー
吉田 佳一 株式会社島津製作所基盤技術研究所長

(高等研プロジェクト委員 50名:学界44名、産業界6名)
赤井 久純 大阪大学大学院理学研究科教授
東  正樹 京都大学化学研究所准教授
安達 千波矢 九州大学未来化学創造センター教授
石黒 武彦 京都大学名誉教授
石原 照也 東北大学大学院理学研究科教授
市川 能也 京都大学化学研究所特定助教
遠藤 康夫 国際高等研究所フェロー/東北大学名誉教授
大谷 義近 東京大学物性研究所教授
小川 一文 香川大学工学部教授
小川 琢治 大阪大学大学院理学研究科教授
葛西 伸哉 京都大学化学研究所助教
金藤 敬一 九州工業大学大学院生命体工学研究科教授
北川  進 京都大学物質-細胞統合システム拠点教授
北川 善太郎 国際高等研究所フェロー/京都大学名誉教授
北川  宏 九州大学大学院理学研究院教授
鹿野田 一司 東京大学大学院工学系研究科教授
小林 研介 京都大学化学研究所准教授
齋藤 軍治 名城大学総合研究所教授
齊藤 高志 京都大学化学研究所附属元素科学国際研究センター助教
佐藤 和則 大阪大学産業科学研究所助教
志水 隆一 国際高等研究所上級研究員/大阪大学名誉教授
下田 達也 北陸先端科学技術大学院大学ナノマテリアルテクノロジーセンター教授
白石 誠司 大阪大学大学院基礎工学研究科准教授
新庄 輝也 国際高等研究所フェロー/京都大学名誉教授
瀬恒 謙太郎 大阪大学大学院工学研究科教授
高田 昌樹 理化学研究所播磨研究所高田構造科学研究室主任研究員
高野 幹夫 国際高等研究所フェロー/京都大学物質-細胞統合システム拠点特定拠点教授
高柳 英明 東京理科大学大学院理学研究科教授
夛田 博一 大阪大学大学院基礎工学研究科教授
多々良 源 首都大学東京都市教養学部准教授
田中 雅明 東京大学大学院工学系研究科教授
田畑  仁 東京大学大学院工学系研究科教授
寺倉 清之 北陸先端科学技術大学院大学先端融合領域研究院特別招聘教授
堂免 一成 東京大学大学院工学系研究科教授
長谷川 達生 産業技術総合研究所光技術研究部門強相関フォトエレクトロニクスグループ長
春山 哲也 九州工業大学大学院生命体工学研究科教授
福山 秀敏 東京理科大学理学部教授
細野 秀雄 東京工業大学フロンティア研究センター教授
壬生  攻 名古屋工業大学大学院工学研究科教授
宗片 比呂夫 東京工業大学大学院理工学研究科教授・像情報工学研究施設長
本河 光博 国際高等研究所フェロー/東北大学名誉教授
科学技術振興機構先端計測技術推進部プログラムオフィサー(開発統括)
森川 良忠 大阪大学産業科学研究所准教授
山口 茂弘 名古屋大学大学院理学研究科教授
米満 賢治 自然科学研究機構分子科学研究所准教授
足立 秀明 パナソニック株式会社先端技術研究所ナノテクノロジー研究所主幹研究員
桜井 宏巳 旭硝子株式会社中央研究所主幹研究員
田中 裕久 ダイハツ工業株式会社滋賀テクニカルセンター先端技術開発部
エクゼクティブ・テクニカル・エキスパート
林  仁志 株式会社デンソー基礎研究所第六研究室室長
松川  望 パナソニック株式会社先端技術研究所ナノテクノロジー研究所主任研究員
森田 雅夫 NTTアドバンステクノロジ株式会社先端技術事業本部材料分析センタ長
研究成果報告書 2011年3月出版予定