プロジェクトの概要

 

研究プロジェクト

数量的アプローチによる日本経済の比較史的研究

実施期間 2008~2010年度(第2年次)
研究代表者 宮本 又郎 国際高等研究所フェロー / 大阪大学名誉教授 / 関西学院大学大学院経営戦略研究科教授
研究目的

日本における歴史的なマクロ経済成長と、同時的に生じたさまざまな制度的変化との因果関係を明らかにすることは、今日の日本経済の力強い再生のために不可欠の思考的基盤となり、その現代的意義は疑いがない。たとえば、いわゆる戦時経済システムの構築を目指した1930年代以降の政治的・経済的諸制度の変更が、戦後の高度経済成長の基盤形成につながったことは、既にさまざまな視角による研究が明らかにしているところである。この10年来唱えられつづけた「構造改革」の対象こそは、こうした高成長指向・調整重視の「日本型経済システム」であった。その歴史的根源にさらにメスを入れると同時に、さらにシステム形成以前にはいわゆる「古典的な資本主義」にあったといわれる日本経済の市場的発展に対する知見を増すことは、望ましい将来のシステム構築に大いに裨益すると考えられる。また、日本経済の歴史的経験を諸外国のそれと正確に比較することは、経済の国際化を進める上で誤った先入観や単なる印象論を脱却するために有用であり、そのための研究対象・視角はこれまで以上に多様でなければならない。本研究では、現代経済の分析に用いられる視角や手法の採用によって、経済史学としては最も端的に上記の課題にこたえようとする。すなわち、数量経済史的手法の明示的な使用によって、長期(近世、近代、現代)にわたる日本経済の成長と制度的展開を多面的かつ比較史的に明らかにする。世界史的に位置づけられた日本における長期経済発展の像を、より明確かつ包括的なものにすることによって、持続的成長に適合的な制度と市場の関係を明らかにし、その社会的設計に示唆を与えることを目的とする。研究会の構成メンバーである経済史・経営史研究者の研究対象・視角は、取引制度、教育制度、家族制度、「市場(いちば)」制度、・・・と広範囲にわたり、これらを「制度の比較史的研究」に集約することによって、「社会の未来」、「異文化の接触と理解」という普遍的な課題に対して有意義な知見が得られるものと考える。

前年度の研究の概要

2008年度は9月高等研での夏季コンファレンス(8報告)を中心に、その後12月と2009年3月に準備研究会をそれぞれ東京(東京大学社会科学研究所、2報告)と大阪(大阪大学大学院経済学研究科、3報告)でおこなった。コンファレンス報告においては、主に①マクロ・レベルでみた日本経済(とりわけ農業部門の成長推計)②広義の企業経営に関する多角的な分析(生産性推計、労務管理・技術開発の実証、企業家論)③家族史(家族経済史、小農・農家経営など)の3方面から分析がおこなわれた。これらは総じて、持続的成長における制度と技術、ならびにマイクロ・レベルの経済主体における戦略の重要性を指摘・実証するものであった。このコンファレンスの内容を補完し、あわせて研究上の視野の拡大をはかるため、近代初期の税制度や資金流通に焦点をあてた報告と在来産業に関する研究報告をおこなった。これらにより、近代初期日本における経済システムについてさらに多面的な分析を揃えることができ、その特質を明らかにするための基礎的理解を得た。

キーワード 数量経済史、経済成長、日本経済、制度的展開、経済政策、生産性
研究計画・方法
  • 参加研究者の多くは既に1970年代・80年代から「数量経済史研究会(略称 QEH)」「19世紀の会」を組織し、継続的な研究活動によって多大な成果をあげてきた。それらは『数量経済史論集』全4巻(日本経済新聞社、1976-1988年)や『日本経済史』全8巻(岩波書店、1988-1990年、その中国語版は刊行済み、英訳版は現在、Oxford University Press から刊行中 )として公刊され、わが国の日本経済史研究を抜本的に革新したものとして評価が定まっている。今回の研究計画では、従来のメンバーが再結集するとともに比較的若い世代の研究者(外国史研究者ならびに外国人研究者も含む)が新しく参加し、1990年代以降における経済史研究の焦点である「制度・組織」「技術形成」「ミクロ経営主体の戦略的行動」の問題を中心に数量経済史的研究を比較史的視野から重ねることにより、2000年代の新しい潮流である「制度の経済史」を「生産性の経済史」あるいは「技術形成の経済史」「ミクロ主体の戦略の経済史」としてより実証史・数量史的に直接的に経済成長に関連する形で精緻化し、一層発展させる。

  • 2009年9月初旬に2泊3日のコンファレンスを国際高等研究所で開催する。これを「年次コンファレンス」と呼称し、研究会活動の中心に置かれるものとする。報告論文(6本程度)は事前に全参加者に送付して報告時間の節約を図り、討論を充実させるよう努める。統一テーマとしては「効率と生産性の比較史的研究」を予定しているが、上記目的(経済史研究の望ましい新動向の模索)に照らし、3分の1程度の報告はそれに必ずしもこだわらない自由なテーマとする。また、比較史的視点の重視から、海外の経済史研究の動向紹介や、外国史に関する実証的・数量史的研究を含めるように編成を工夫する。

  • 上記年次コンファレンスの準備と補完のため、東京または大阪でそれぞれ1回ずつ半日程度(報告3本程度およびビジネス・トーク)の定例研究会を実施する。

  • 上記研究会の成果であるペーパーから精選し、論文(報告)集を作成、高等研叢書などの形の公刊を目指す。「制度・組織」「技術形成」「経済主体の戦略」という本共同研究の主要関心事を結ぶものは、手法的には広義の数量経済史であり、切り口・視角としては「生産性」ということになるであろう。この「生産性」という論点に最も直接関連する、序論等の書下ろしを含む4本以上の報告・論文を軸とし、上にあげたキータームズに関連するその他の論点に拠った論稿を加えて、計6-10章程度の構成を考える。
研究会開催予定
定例研究会2009年12月
2010年3月
(開催地 東京都内)
(開催地未定 東京または大阪)
年次コンファレンス2009年9月初旬
(2~6日予定)
(開催地 東京都内)
(於 高等研)

この他、1~2回の準備研究会を随時行なう場合がある。

参加研究者
18名
宮本 又郎 国際高等研究所フェロー/大阪大学名誉教授
関西学院大学大学院経営戦略研究科教授
阿部 武司 大阪大学大学院経済学研究科長・教授
天野 雅敏 神戸大学大学院経済学研究科教授
猪木 武徳 国際日本文化研究センター所長・教授
岡崎 哲二 東京大学大学院経済学研究科教授
尾高 煌之助 一橋大学名誉教授
斎藤  修 一橋大学経済研究所教授
澤井  実 大阪大学大学院経済学研究科教授
谷本 雅之 東京大学大学院経済学研究科教授
友部 謙一 大阪大学大学院経済学研究科教授
中林 真幸 東京大学社会科学研究所准教授
中村 隆英 東京大学名誉教授
西川 俊作 慶應義塾大学名誉教授
速水  融 慶應義塾大学名誉教授
鴋澤  歩 大阪大学大学院経済学研究科准教授
廣田  誠 大阪大学大学院経済学研究科教授
松本 貴典 成蹊大学経済学部教授
山本 有造 中部大学人文学部教授
話題提供者
攝津斉彦 一橋大学経済研究所非常勤研究員
尾関 学 一橋大学経済研究所非常勤研究員
谷山英祐 大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程
高槻泰郎 東京大学大学院経済学研究科博士後期課程
結城武延 東京大学大学院経済学研究科博士後期課程
 
研究成果報告書 2012年3月出版予定