プロジェクトの概要
| 研究プロジェクト | 近代精神と古典解釈:伝統の崩壊と再創造 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 実施期間 | 2008~2010年度(第3年次) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 研究代表者 | 手島 勲矢 国際高等研究所企画委員/元同志社大学大学院神学研究科教授 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 研究目的要旨 | ヘブライ語聖書とホメロス研究の方法論は、近代において「科学」という概念の下で、大きな変容を遂げるけれども、その方法論における変容は、いかなる意味で、時代を超えた価値を有するものであるか、またいかなる意味で、「近代」という特殊な時代背景において理解されるべき産物であるのか、テキスト、文脈、言語の三つの研究分野の視点から反省・検証し、21世紀、宇宙時代における古典研究の新しい形を、「科学」と「批判」概念の再構築も視野に収めながら、模索・提案する努力である。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 研究目的 | ① 背景:
Umberto Cassutoが、19世紀に発展したモーセ五書資料説と、同時期のホメロス問題への対応とには共通した発想や学的認識が観察されることを指摘している。この指摘は、カスートが伝統的ユダヤ人研究者として科学的批判による聖書や古代理解に取り組む中で、ヨーロッパの人文科学にはある種のキリスト教神学の影響下にある「科学」「批判」には数々の予断があるという意識と不可分である。このカスートの指摘は、ホメロス研究においても、聖書研究においても、検証されることなくいままで黙殺されてきた指摘であるが、科学的な古典研究の方法論の見直しを企図するものには向き合うことを避けて通れない指摘である。 ② 必要性:欧米においては、聖書研究における「ユダヤ」と「キリスト教」の思想的亀裂は深く、その亀裂を評価し論じることはきわめて難しいが、文化的背景が異なるゆえに日本のホメロス研究者と聖書研究者にとっては、虚心坦懐に、欧米のこれまでの研究史・学説史を共同で振り返る基盤づくりが、比較的容易である。従来の科研の枠組みでは、聖書とホメロスの分野を実質的につなぐことは審査の観点から難しかった。まして伝統の価値を見直し、近代欧米の古典解釈の方法論に批判的にフォーカスするという着想は、ユダヤ学が導入されてきた最近の動向であり、きわめて国際的にも最前線の問題提起であるがゆえに、このプロジェクトの追求は、ギリシャとヘブライを新たな視点で結ぶ新分野の開拓にもつながるものであり、「まず始める」というところに最大のチャレンジがあった。日本と海外の研究者、また聖書とホメロスの研究者の間に、自らの研究方法に関してコミュニケーションと相互理解が生まれることは、古典研究の刷新にとどまらず、そのまま、人間の精神にかかわる諸分野にも意味を持つ、最も本質的な形での批判的思考の言葉とは何かの追求にもつながり、それは、根本的な文字の「読解」「批判」概念を刷新する作業にも、長い目で見れば、国際的な意味でも、人文と理系を結ぶ新たな学術の「言葉」や「科学」概念を創出することにもつながるものである。 ③ 方針:海外からの一線の研究者や権威の代表に、プロジェクトの問題意識を共有させることができるのかどうかが、このプロジェクトの評価と価値をそのままテストすることになる。こういう立場から、毎年、著名な4名ほどの研究者を海外から招いて討論を重ねてきた。その中では、日本側の研究者も所信を述べて、双方向的に、新たな「自己認識」のはじまりとなるように、大きな見解の統一以上に、問題認識とテーマの必然性に関する問題意識の共有に重きを置く。なぜなら問題意識の共有こそは、新しい、垣根を越えた総合的な古典研究の基盤に不可欠と考えるからである。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| キーワード | ヘブライ語聖書、ホメロス問題、高等批評、近代精神 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 参加研究者リスト (15名) |
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 2010年度 研究活動予定 |
① 研究会開催予定: 第1回: 2010年8月6日~7日 (於:高等研) 第2回: 2010年10月1日~2日 (於:高等研) (海外からの招聘研究者との公開講演会またはシンポジウムを開催する予定) 第3回: 2010年11月26日~27日 (於:高等研) ② 話題提供予定者: シンポジウムのために海外より2名を計画している。 交渉中: Steve Weitzman, Professor, Jewish Studies, Stanford University Joyce Reynolds, Cambridge University |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 研究活動実績 |
2008年度:
古典研究と近代の関係性の見直しの意義と必要性を考えるための第一回研究会おいて、久保正彰氏より17世紀の古典学者ヤコブス・ホイエルの先駆的本文批評の問題意識と彼の時代の空気(スピノザ他)との関連性の可能性をお聞きした。また池田裕氏の聖書学と自然(植物)の視点を結びつけることで異文化に属する人々も聖書を遺産として抱える当事者(欧米)に対して対等な発言の立場を得るという発想をお聞きした。第二回研究会では、ロフェ氏のカスート氏の業績に対する極めて俯瞰的にして詳細な評価を学ぶことができた。またティゲイ氏の経験重視のアプローチによって行われたギルガメッシュ編集の研究から、アプリオリとしてではない資料仮説のあり方が提示された。両者の発表は最終報告書に掲載予定である。第三回研究会では、京大に滞在中のケアンズ氏を招待し、アガメムノン王イメージの近代的解釈の思い込みとテキスト細部の相違についてお聞きした。いずれの研究会でも活発な意見交換がなされ、その中で、西洋古典研究と聖書研究の意外な結びつきと同時に、両分野の重要な研究背景の違いなどが明らかにされた。 研究会開催実績:第1回: 2008年5月23日~24日 (於:高等研) 第2回: 2008年8月5日~7日 (於:高等研) 第3回: 2008年11月28日 (於:高等研) 話題提供者:4名
2009年度: 4月にデイヴィス教授をお招きして、古典解釈と近代の関係についてドイツでの展開とイギリスでの展開の差について伺った。イギリスの古典研究の特徴として、現実社会の格闘の中で、その自らの状況を理解するためにギリシャ古典の言葉を引用する傾向があるが、これは実際的な古典研究の基礎を近代のイギリスで築いたのが政治家であったことに起因する。つまりドイツの学者は、歴史科学的な方法論の確立に努力を傾注して古典学をきわめて閉じられた聴衆のみが理解する特別の用語の世界にしたが、イギリスでは現実社会に関わる政治家が自らの素養として古典解釈に努力したことが研究の基礎となっている。10月に村岡崇光教授をお招きして近代以前のヘブライ文法理解から何を学ぶべきか、またストア派やデカルト派が古典解釈に及ぼした影響などをお聞きした。村岡氏は、近代のヘブライ語文法学者が発見としていたヘブライ語文法のいくつかの特徴は、中世の文法学者によってすでに指摘しているという事例を踏まえて、近代の文法学の評価の見直しの必要性を述べられた。11月にお招きしたファウラー教授からは、ホメロス研究の方法論をめぐる歴史的視点の変遷について多くの示唆を得たが、中でもファウラー氏も本文批評とホメロス形成の学説の間にある恣意的な両義的な関係について認識されている点はきわめてプロジェクトにとって重要であった。 研究会開催実績:第1回: 2009年4月17日~18日(於:高等研) 第2回: 2009年10月23日~24日(於:高等研) 第3回: 2009年11月27日~28日(於:高等研) 話題提供者:6名
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 研究成果報告書 の出版 |
2012年3月出版予定 |
