プロジェクトの概要
| 研究プロジェクト | 絵画と文学に表象される、時間と空間の脳による認識 |
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| 実施期間 | 2008~2010年度(第3年次) | ||||||||||||||||||||
| 研究代表者 | 近藤 寿人 大阪大学大学院生命機能研究科教授 | ||||||||||||||||||||
| 研究目的 | ① 背景:
人間とその意識を正しく理解するための学問として、脳機能の研究を発展させるためには、その目標の中に「このような人間の意識の表象が説明されるべき」という課題を具体的に設定することが求められる。絵画や文学には、認識されうるものとしての時間や空間が如実に表象されている。しかし、脳機能の研究と、美術・文学の研究とはこれまで接点に乏しかった。 ② 必要性:このプロジェクトでは、脳機能研究、絵画研究、文学研究の専門家たちが、それぞれの立場から「時間と空間の認識」に関する問題を提起し、公開の場で議論を交わすことによって新しい発想をくみ上げる。脳機能の研究に将来的な課題を提示しつつ、美術や文学の演出的な効果のなかに無意識で用いられている「脳機能の特性」を発見するための手がかりを得て、新しい研究の潮流を生み出す。 ③ 方針:これまでに接点に乏しかった芸術と脳機能の分野の交流はまだ萌芽的である。すでに確立した研究者の発想の拡大をはかるとともに、将来の脳科学を担う大学院生・若手研究者を積極的に議論に参加させて、彼らの脳科学の目標を示す。脳による芸術への表象は、性差の意識や宗教の成立とも密接な関係があるので、これらの分野の研究家をも交えて、本研究プロジェクトを深める。 |
キーワード | 時間と空間の認識、脳機能、美術、文学、ジェンダー、原始宗教 | ||||||||||||||||||
| 参加研究者リスト(10名) |
プロジェクトの進展とともに、必要に応じて他のプロジェクトや外部から講師を招く。 |
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| 2010年度 研究活動予定 |
① 研究会開催予定:
1日の研究会を、国際高等研究所において1-2回開催。 ② 話題提供者:2009年度の研究会での手島勲矢氏による問題提起について、議論を更に深めるために、手島氏を再度講師として招聘する予定である。そのほか「物の質感」の知覚を専門とする脳研究者(交渉中)をまねくとともに、藤田一郎による「奥行き」の認識について、また岡田温司による「処女懐胎」の絵画表現についての話題提供を予定しており、本研究会の議論の一定の収束をめざす。 |
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| 研究活動実績 | 2008年度:
脳研究者からは、藤田一郎より「脳と視覚〜見ることの裏側〜」、小倉明彦より「時空間記憶の形成と夢の仮説」を主題として問題提起がなされた。視覚の脳機能が如何に形態や空間の認識に関わるのか、その結果、脳が描く空間が物理的な形態や空間とのずれをどのように生ずるのか、それがどのような芸術的な効果を生みうるのかが議論された。また、脳科学の研究が明らかにする、場所の記憶の成立機構や、記憶の成立への夢の関与が紹介された。美術研究者からは、岡田温司より「ルネサンス絵画の時間と空間」、若杉準治より「絵巻物の時間」を主題として問題提起がなされた。絵画表現における遠近法の成立と、遠近法を逆手にとった絵画表現、異時同図法(帰属文明に依存しない)による時間経過の表現と物語性などが、先の脳機能との対応が議論された。文学研究者からは、小倉孝誠より「歴史叙述・時間・物語」、山本登朗より「物語における時間と空間」を主題として問題提起がなされた。文学から派生した歴史学、「進化」的な歴史観の興隆と反論などが、集団的記憶としての歴史という観点から論じられた。また、「歴史的現在」としての過去と客観的な過去の混在が織りなす文学的な効果などが、丁度千年紀を迎えた源氏物語などを実例として論じられ、文学表現における時間認識について議論された。今後、これらの議論を深化させるとともに、性意識や原始宗教の成立期に関する専門家を研究会の演者に含めて、脳の認識機能の根源に近づくことを目指す。 研究会開催実績:第1回: 2008年11月1日 (於:高等研) 参加研究者のほか、22名の大学教員・大学院生ならびに社会人が参加した。 2009年度: 近藤寿人よりまず、抽象絵画の成立と、脳の複数の認知機能の並立との関連を例にして、本研究会の趣旨が再度確認された。時間の認識と芸術表現に関して、肥塚隆より、「造形芸術と時間−−南アジアの説話浮彫を中心に−−」というテーマで、説話の時間経過がどのように壁面に表現されるかの分析がなされ、2008年度に議論した日本の絵巻物の場合との、時空間に関する表現方法の大きな違いが指摘された。また、岡田温司は、新約と旧約聖書の間のタイポロジー的な関連から、キリストの磔のプロトタイプに関するジェームズ・フレーザーの大胆な説を紹介するとともに、それを看破していたと思われるミケランジェロの作品を解説した。ジェンダーに関しては、小倉明彦が、男女の脳機能の変動とそれを支配する性ホルモンから議論を展開し(「隠れている脳の性差」)、小倉孝誠は、「近代フランスにおけるジェンダーの構図」というタイトルで、19世紀の文学と絵画において(その作者の男女をとわず)例外なく女性は「見られる」立場であったのが、フローベールの「ボヴァリー婦人」においてはじめて女性が「見る」立場を取ったことを示し、その革新性を指摘した。手島勲矢は、その「ユダヤ教伝統と文字解釈の諸相」において、数字と文字の意味の根本的な相違を豊富な具体例で示し、その認識(つまり対応する脳機能)の分離を鋭く指摘した。また、佐々木閑は、「仏教哲学における時間と空間の認識」について、アビダルマにおける認識論を展開し、特に「刹那滅」という離散した時間の意義を説いた。2年目の研究会では、参加者も異分野融合環境に慣れてきて、相互に突っ込んだ議論が活発に行われ、3年目の研究会への大きな期待につながった。 研究会開催実績:第1回: 2009年12月5日 (於:大阪大学総合学術博物館) 参加研究者および話題提供者のほか、19名の大学教員・大学院生ならびに社会人が参加した。 話題提供者:2名
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| 研究成果報告書 の出版 |
2012年3月出版予定 |
