

本年4月から副所長に就任いたしました。尾池新所長からお誘いいただき、以前に先生のもとで大学や財団の運営のお手伝いをさせていただいたということもありますが、何よりも、本研究所には、今世紀初めに企画委員に加えていただき共同研究プロジェクトを組織して以来、その活動方針・スタイルに共感しながら関与し続けていたことから、ほとんど二つ返事でお引き受けした次第です。
本研究所の存在理由というか魅力は、学術全般にわたって分野や世代の異なる研究者の自由闊達な対話交流によって、基礎的原理的テーマを協働して研究し、新しい学術の芽を見つけ育ててゆくことだと理解しております。
私の専攻は、法哲学という、法学のなかではかなり特殊な分野で、自分の研究を進める上で、理論と実務の連携や隣接分野との交流が不可欠だったこともあり、法律・行政などの実務家や人文・社会科学系研究者とは若い頃から接触して多くのことを学んできました。その後、かなり歳をとってから生命倫理問題や環境安全問題に職務として関与するようになったり学術会議会員となったりしたことをきっかけに、自然科学系研究者との交流も急速に増え、新鮮な知的刺激を受け続けております。
このような個人的な体験から、異分野の研究者と意見交換し議論することは、個人的に視野を拡げそれぞれの研究を進めるのに有益この上ないのですが、それを活かした一定の成果がまとまるまでには相当の試行錯誤的な醸成期間が必要で、学際的共同研究自体から何か具体的な成果・効果を直接的・短期的に生み出すのは、とくに基礎的原理的なテーマであればあるほど、なかなかむずかしいと痛感しております。この種のいわば「ゆとり研究」が、科学研究費をはじめ公私各種の研究助成の対象となりにくくなっており、残念です。本研究所が、中長期的な知の再編と刷新をめざす挑戦的な共同プロジェクトを重点的に支援し、学術の持続的発展の拠点としての役割を果たし続けることを願っていま。また、知の再編と刷新のためには、世代間交流による知の持続的な伝承も不可欠であり、共同プロジェクト編成において、異分野接触だけでなく、老壮青が忌憚なく自由に議論しあえる対話フォーラムの提供ということにもいっそう留意してゆくべきだと考えております。
本研究所は、基礎的学際的研究とともに、国際的な研究の推進ということも活動方針としてきておりますが、残念ながら、大規模な国際的連携研究は、財政的制約もあってむずかしくなってきている観があります。しかし、とくに社会・文化、政治・経済などの分野における稔りのある国際的な共同研究には、欧米だけでなく、東アジア諸国との交流が不可欠で、今後ますます重要となってゆくと予測され、その充実をはかる工夫をする必要を感じております。
微力ながら本研究所の研究活動をいっそう発展させてゆくことに努めさせていただく所存です。ご指導とご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
高等研ニュースレター68号
(2009年10月発行より)
