中国の演劇というと、どなたも孫悟空がトンボを切って大暴れする京劇を思い出されると思います。あるいは「覇王別姫」や「花の生涯-梅蘭芳」など、京劇を題材とした最近の中国映画を連想される方もおられるでしょう。京劇は俳優が顔に隈取(くまとり)をするなど、日本の歌舞伎に似ているところがありますが、中国の演劇には京劇だけではなく、さまざまな種類があり、中には日本ではあまり知られていない仮面劇もあって、それはまた日本の能ともよく似ています。
この講演では、京劇をはじめとする中国各地のさまざまな演劇、特に珍しい仮面劇について紹介し、中国の演劇と日本の歌舞伎や能との類似点、相違点、さらにそれらが歴史的にどのような関係にあったのかについてお話したいと思います。古代以来、日本の文化は中国からさまざまな影響を受けてきましたが、日本独自の文化と思われている歌舞伎や能にも中国の影響があることを知っていただき、日中文化交流についての理解を深めていただければ幸いです。講演ではヴィデオをご覧いただき、実際に中国の演劇を目と耳で楽しんでいただきたいと思っております。