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2012年度のプロジェクトの概要

 

研究プロジェクト

東アジア古典演劇の「伝統」と「近代」
-「伝統」の相対化と「文化」の動態把握の試み-

研究代表者 毛利 三彌  成城大学名誉教授
研究目的要旨

日本、中国、韓国の古典演劇(能、狂言、歌舞伎、人形浄瑠璃、京劇、崑劇、川劇、儺劇、タルチュム、パンソリ)が、科学技術の進歩とともに到来した近代という時代に、どのように変質したかを、「演劇という芸術の近代化」という視点や、近代における東アジアの民俗芸能の変容という視点をもまじえて検証し、「伝統」というものの実態を把握し、「文化」の動態把握のモデルを提示する。

研究目的 ① 背景:

日本でいえば、能楽、歌舞伎、文楽の伝統演劇と呼ばれる演劇は、その「伝統」という言葉によって、一般的に「不変」というイメージが強い。しかし、俳優という「人」によって担われる演劇が100年、200年という時間の経過のなかで「不変」であることは常識的にも考えがたく、実際にはかなり大きな変容をとげているのだが、「伝統」という言葉の呪力からであろう、一般的には「不変」と思われているのが実情である。もちろん、伝統演劇の研究においては、その変容は当然認識されているが、変容の実態となると、研究はほとんどなされていないのが現状である。本プロジェクトはそうした現状に着目して、近代における変容の実態を伝統演劇各分野において明らかにし、それによって、従来の伝統演劇研究には欠落していた面を補い、トータルな伝統演劇研究の進展に資したと考えている。

② 必要性:

本プロジェクトは近代における伝統演劇の変容の実態究明を目的としているが、対象とする時代を近代としたのは、近代が科学技術が飛躍的に発展した時代であり、それだけに伝統的な演劇がこうむった影響が大きかったからである。従って、近代における伝統演劇の変容についての研究は、「近代」という、われわれにもっとも近く、また、歴史的にも特異な時代たる「近代」の特質を明らかにすることにもなるわけである。このような視点からの「近代」研究はこれまでにはなかったものであり、その点で、本プロジェクトによって、新しい「近代」研究の地平が開かれることが期待される。

③ 方針:

本プロジェクトは、以下のような目標に沿って推進される。
(1)伝統演劇における「伝統」という概念の解明。 日本、中国、韓国朝鮮の伝統演劇における「伝統」の概念とはどのようなものか、あるいは、そこにはどのような違いがあるかについての解明。これには、当然、西洋演劇における「伝統」概念との対比が求められる。
(2)東アジアにおける演劇の「近代化」の実態の解明。 「近代」は、もともと西洋における時代概念であるから、非西洋における「近代」は多くの場合、「近代化」のあり方となるが、その過程は国によって異なり、 同一の国でも演劇のジャンルによって、「近代化」の様相も異なる。その実態と、そのような違いが生じる理由(背景)の解明。
(3)世界の演劇思潮と東アジア演劇との関係についての解明。 「モダン」と「ポストモダン」、あるいは「近代性」と「ポスト近代性」については芸術諸分野において種々の議論がなされているが、ポストモダンの時代になって、演劇の分野では、アジアの伝統演劇への関心が高まっている。この潮流は演劇史的にどのようにとらえるべきなのか。
(4)近代の伝統演劇と近代の科学・技術の関係についての研究。 近代の科学と技術は、近代の文化にも多大の影響を与えてきた。伝統演劇あるいは演劇一般の近代化は、その近代の科学・技術、あるいは近代経済にどのような影響をうけてきたのか。

キーワード 伝統、近代、演劇、東アジア
参加研究者リスト
16名
毛利 三彌 成城大学名誉教授/比較演劇
岩井 眞実 福岡女学院大学人文学部教授/歌舞伎
内山 美樹子 早稲田大学名誉教授/文楽
惠阪  悟 羽衣国際大学現代社会学部非常勤講師/能楽
大西 秀紀 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター非常勤講師
神山  彰 明治大学文学部教授/歌舞伎
小田中 章浩 大阪市立大学大学院文学研究科教授/フランス近代演劇
佐藤 かつら 青山学院大学文学部准教授/歌舞伎
田草川 みずき 早稲田大学文学学術院日本学術振興会特別研究員RPD/日本古典演劇
中尾  薫 大阪大学大学院文学研究科専任講師/能楽
野村 伸一 慶応義塾大学文学部教授/韓国演劇
平林 宣和 早稲田大学政治経済学術院准教授/中国演劇
正木 喜勝 大阪大学大学院文学研究科招へい研究員/日本近代演劇
山下 一夫 慶応義塾大学理工学部准教授/中国演劇
山路 興造 京都女子大学文学部日本史専攻非常勤講師/日本芸能史・民俗芸能
横山 太郎 跡見女学園大学文学部准教授/能楽
2012年度
研究活動予定
① 研究会開催予定:
第1回:2012年9月10日~9月11日(於 高等研)
第2回:2012年12月17日~12月18日(於 高等研)
※以上はいずれも予定。
② 話題提供予定者:
話題提供者は2名(各回1名)を予定しているが、現時点では具体的には決まっていない。なお、話題提供者としては、演劇研究者だけでなく、歴史学、社会学の研究者の招聘も考えている。