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2012年度のプロジェクトの概要

 

研究プロジェクト

ジェンダーからみた家族の将来

研究代表者 姫岡 とし子 東京大学大学院人文社会系研究科教授
研究目的要旨

社会のダイナミックな構造変化とともに少子化が進展し、家族が個人化・多様化する現在、世代をつなぐケアの必要性や親密な人間関係の形成を、もはや従来の制度的な家族の枠内だけでは考えられなくなっている。実際、諸外国では多様な家族の法的平等を実現し、個人や家族の多様な生き方に合わせた家族政策を採用している。本研究では、ジェンダーと家族の関係に注目し、1,歴史研究、2,現状分析と政策研究、3,国際比較の観点から家族の将来の展望について考察する。研究の対象は日本およびドイツで、比較の観点から現状をより深く理解し、将来展望を描くためにアメリカとアジアを加える。

研究目的 ① 背景:

代表者が参加していた筑波大学の日独家族政策プロジェクトを継承し、少子化および家族の多様化という時代に求められる家族政策や、将来の家族の行方について、歴史的変化をふまえつつ国際比較の観点から検討しようと考えた。

② 必要性:

現在、ヨーロッパでは非常に革新的な家族政策が行われている。家族を従来の夫婦と子どもという制度的な家族に固定せずに、また家族の担う世代をこえたケアに企業や社会が協力する体制を推進している。多様化の進む日本の家族に関する政策や家族の将来を考えるには、国際比較が不可欠であり、また歴史的変化という縦軸も導入していかなければならない。

③ 方針:

歴史研究では、ドイツと日本における近代化過程から現代までの家族の変化とその要因を分析する。現状分析では、社会変化と関連させながら、家族に関する言説、統計、実態報告、インタビューなどから家族の変化を把握し、家族政策の変化、ジェンダー政策や、経済界の動向などを国際比較の観点から考察し、将来の家族像と家族問題解決の道を模索する。

キーワード 家族、ジェンダー、家族政策、ワークライフバランス
参加研究者リスト
12名
姫岡 とし子 東京大学大学院人文社会系研究科教授
綾部 六郎 同志社大学法学部法律学科助教
石井 香江 同志社大学言語文化教育研究センター准教授
大島 梨沙 新潟大学大学院実務法学研究科准教授
岡野 八代 同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授
落合 恵美子 京都大学大学院文学研究科教授
田中 洋子 筑波大学大学院人文社会学研究科教授
辻 由希 立命館大学政策科学部助教
水戸部 由枝 明治大学政治経済学部専任講師
牟田 和恵 大阪大学大学院人間科学研究科教授
本澤 巳代子 筑波大学人文社会系教授
若尾 祐司 名古屋大学名誉教授
2012年度
研究活動予定
① 研究会開催予定:
第1回  2012年5月 (於 高等研)
第2回  2012年10月 (於 高等研)
第3回  2013年2月 (於 高等研)
② 話題提供予定者:1名(未定)
研究活動実績 2010年度:

2010年度は、2回の研究会を開催した。6月の研究では、参加研究者の牟田および岡野が執筆した『家族を超える社会学』を取りあげ、家族の将来像との関連で母性をとう捉えるのかが議論になった。9月には、プロジェクトメンバーの姫岡、本沢、田中、落合が、ドイツの「ベルリン日独センター」で開催された「日独家族政策」に関するワークショップに参加し、落合をのぞく3名が報告した。テーマは主にワークライフバランスで、この観点から田中がドイツと日本の事例について報告し、姫岡は日本とドイツの家族の変化との関係で、なぜワークライフバランスが必要かについて報告した。本沢は全体の総括報告を行った。

第2回目の研究会では、姫岡がドイツの家族政策の全体像について報告し、田中が9月の報告内容をさらに深めて、ドイツのワークライフバランスとその背景にある雇用・家族政策について報告した。加藤は、日本において直系家族が現在なお継続し、将来はその傾向がさらに強まるという予測を統計データにもとづいて報告した。

研究会開催実績:
第1回 2010年6月26日 (於:高等研)
第2回 2011年1月8日 (於:高等研)
話題提供者:1名
加藤 彰彦 明治大学政治経済学部准教授
その他の参加者:3名
綾部 六郎 北海道大学大学院法学研究科博士課程3年(学術道場生)
大島 梨沙 北海道大学大学院法学研究科助教
川北  稔 大阪大学名誉教授
2011年度:

2011年度は2回の研究会を開催した。第1回は前年度から継続中の比較家族政策に関してフランスの政策を大島梨沙氏が報告し、婚姻・パクス・同棲の法的な相違や出生率の高さを導く家族支援政策について議論した。さらに『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』を出版された千田有紀氏を招き、著書に内容について報告してもらうとともに、歴史的な家族形成と将来の方向について議論した。 第2回は、石井香江氏が1950年代から70年代にかけてのドイツの育児政策について報告し、社会主義とは異なるキリスト教的な近代家族を基本とし、家族は私的な事柄として積極的な政策を講じなかった西ドイツが、70年代になって子ども手当支給など、家族への財政的支援にのりだした契機について論じた。続いて辻由希氏が、ジェンダーからみた日本家族の将来について報告し、現代政治のあり方とからめながら家族政策の展開について議論した。

研究会開催実績:
第1回 2011年5月21日 (於:高等研)
第2回 2011年11月26日 (於:高等研)
話題提供者:1名
千田 有紀 武蔵大学社会学部教授