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2019年夏季IIAS塾ジュニアセミナー

当日の様子

2019年8月7日(水)から2泊3日(合宿型)の日程で行いました。受講者は、京都、大阪、奈良、滋賀の高校生28名です。
開講式では、高見茂先生(国際高等研究所副所長)から「IIAS塾の眼目は「独立自尊の志」の涵養にある。ソサエティ5.0に注目が集まっているが、人間の創造性がこれまでにも増して強く求められている。IIAS塾はこうした要請に応えるものである」として、受講生への励ましの言葉がありました。
2日目は、朗読家 三岡康明先生にご指導いただきながら、特別講話・体験交流「朗読の愉しみ」を実施。自らの思いを言葉に乗せて相手に伝えることの意義についてお話しいただきました。
セミナー最終日は、第1日目の講義、そして第2日目へと続く班別によるグループ討議を踏まえて、これまでの班編成を組み替えた2グループで、各班の討議内容をお互いに交換し、班を越えての討議を展開しました。
閉講の辞では、松本紘先生(国際高等研究所所長)から、「学びのあり方に関して、青年時代は知識を吸収する時期であり、貪欲に知識を求めてほしい。それらが何時の日か総合知として結晶する時がある。視野を広く持ち、多様な分野に関心を寄せてほしい」との言葉があり、受講生の今後の人生への期待が語られました。
受講生たちは、3日間、知的対話と交流を通じて、また寝食を共にしながら自ら夢を語り、励まし合えたことの喜び、新しい友達関係と、その輪の広がりに充実感を覚えながら、またの再会を誓いながら会場(国際高等研究所)を後にしました。

  • 開講式の様子
  • 討議の様子
  • 交流の様子
  • グループ討議の様子
  • ゲーテ像の前にて
  • 閉講式の様子

参加者の声

すべての時間が学びにつながった。TAの方たちと沢山話せてとても嬉しかった
高校1年男子
日常生活で倫理・哲学について深く考える機会はあまりないので、今回参加した事で自己の理解をすることもでき、他者の理解もすることができた点で大変刺激になった
高校3年女子
とても興味深い講義を受け、多様な仲間達と勉強の他、夢や自分達について語り合うことができた
高校3年男子
様々な学校の方々やTAの方々、各界で御活躍の先生方と過ごし、自身の世界を広げることができた
高校1年女子
ここまで奥の深い討議を行えるとは思っておらず、想像以上に為になりました。勉強面のみならずコミュニケーション面でも大変良い経験ができました
高校2年男子
講義、討論、2泊3日の生活の全てが自分にとって大きな学びとなり、良き友人に出会う素晴らしい機会でした
高校2年女子
これほどまで充実した密度の濃い3日間は初めてでした。周りのレベルの高い仲間との議論や、何気ない会話も全ていい思い出です
高校3年男子

開催概要

講師とテキスト主題

安部 浩

京都大学大学院人間・環境学研究科教授
メインテキスト
和辻哲郎に学ぶ
サブテキスト
和辻哲郎『人間の学としての倫理学』(岩波文庫 2007年)

専攻は、西洋哲学、日本哲学。ジーボルト賞(ドイツ連邦共和国)受賞。著書に『「現」/そのロゴスとエートス―ハイデガーへの応答』(晃洋書房)、『ハイデガー読本』 (共編著、法政大学出版局)、『続・ハイデガー読本』(同)、『京都学派の遺産―生と死と環境』(共著、晃洋書房)。

近代日本哲学の精華として、西田哲学と並び称される和辻倫理学。だが他方では、その空前絶後の大業がしばしば、明治憲法下の国体と命運を共にし、敗戦をもってその使命を終えた歴史的遺物として敬して遠ざけられていることもまた事実です。このように今や「死せる犬」と化した感がある和辻倫理学から、我々が現在もなお何かを学ぶことは、はたして可能なのでしょうか。私の答えは「然り」です。しかもそこには、今後我々自身が歩むべき道を示す道標までもが見出されうるように思われます。しかしその為には、目下その生命力が枯渇し、あたら犬死にしつつある和辻倫理学を今一度賦活する必要があります。ここでは再生医療よろしく、それがまさに生まれ出でんとする生成の場面(「幹細胞」?)にまで和辻倫理学を遡源させることで、これを時代の最先端を行く「反グローバライゼイションの哲学」として復活せしめる蘇生術を試みてみたいと存じます。

鎌田東二

京都大学名誉教授
メインテキスト
二宮尊徳に学ぶ
サブテキスト
二宮尊徳『J-47二宮翁夜話』(中公クラシックス 2012年)

宗教哲学・民俗学・日本思想史・比較文明学専攻。石笛・横笛・法螺貝奏者。神道ソングライター。フリーランス神主。
著書『神界のフィールドワーク』(青弓社)『聖地感覚』(角川ソフィア文庫)『神と仏の精神史』『現代神道論』『世直しの思想』『天河大辨財天社の宇宙~神道の未来へ』(ともに春秋社)『神道とは何か』『日本人は死んだらどこへ行くのか』(ともにPHP新書)『世阿弥』『言霊の思想』(ともに青土社)、最近著は第一詩集『常世の時軸』(思潮社)。

二宮金次郎は「災害の子」である。天明大飢饉の渦中に生れ、天保大飢饉を生き抜き、安政3年に死去した。子供の頃、酒匂川(神奈川県小田原市を流れる)の氾濫で家と田畑を失い、14歳で父親、16歳で母親を亡くし、一家離散の憂き目を見た。だが、その困窮の中で、家を復興し、村(栢山村)を復興し、藩(小田原藩)を復興し、幕府領の復興をも果たした。ある夏前に茄子の味が秋の味になっているので、その夏が冷夏となることを予知し、粟や稗を植えて備えをしたら、天保の大飢饉となった。茄子の味一つで天保の大飢饉を予知し、適切な対策を講じて被害を最小に食い止め、小田原藩では餓死者を一人も出さなかったという。その鋭い観察と経験によって正確に災害や災難(天災・人災)を予測し、それに明確な対策を立てて実行に移し、人々の苦難を救った。その二宮尊徳の人生と行動と信仰は未来へのさまざまなヒントとメッセージを秘めている。

森 孝之

北里研究所北里柴三郎記念室次長
メインテキスト
北里柴三郎に学ぶ
サブテキスト
山崎光夫『北里柴三郎 雷と呼ばれた男(上・下)』(中公文庫 2007年)

北里柴三郎博士の生涯を医史学の観点から研究している。なお、北里大学特任講師として自校教育「北里の世界」の講義を担当。他方、学外からの講演依頼も多く幅広い年齢層を対象にした講演活動も積極的に行っている。

今から120年程前の日本人の平均寿命は男性42.8歳、女性44.3歳でした。劣悪な栄養状況、衛生環境の不備、そして貧困あるいは教育の欠如などに加え、致死率の高い感染症の蔓延も要因の一つでありました。「衛生行政の立ち後れと学問知識の未熟さゆえに毎年、何万という尊い命が伝染病で失われていく。これで文明国といえるのか」と近代国家を目指す日本の盲点を指摘した北里柴三郎は伝染病研究所を創設したのです。ベルリン大学のローベルト・コッホ博士から病原細菌学を学んだ彼は医薬品や予防治療法の研究・開発を推進しました。一方では関連法案の制定に参画するとともに衛生思想の普及にも努めたのです。北里が掲げた近代日本医学の在り方とは何かを考えてみたいと思います。

募集要項

募集対象 関西地域(京都府・大阪府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)に所在する高校及び大学の学生で、IIAS塾ジュニアセミナー開催委員会において、受講を認めたもの概ね20名。
応募対象 申し込みは、公益財団法人国際高等研究所ホームページより2019年6月14日(金)必着で行うこと。(郵送可)ただし、高校生にあっては、当該高等学校の教員の推薦及び保護者の同意を得ること。
受講決定 選考結果は、2019年6月下旬、応募者本人宛て、「申込書」に記載された住所へ郵送。
開催日 2019年8月7日(水)~8月9日(金)
開催場所 公益財団法人国際高等研究所アクセスマップ
宿泊場所 公益財団法人国際高等研究所内にある宿泊棟を用意
参加費用 メインテキスト代、朝昼夕食を含む宿泊費は、主催者が負担。
自宅と会場間の交通費は自己負担。サブテキストは各自で入手。
問い合わせ・申込先 公益財団法人国際高等研究所
IIAS塾ジュニアセミナー開催委員会事務局
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9-3
Tel:0774-73-4000/Fax:0774-73-4005
E-mail:iias19-2015@iias.or.jp
URL:http://www.iias.or.jp/
共催、後援、協力 【主催】公益財団法人国際高等研究所(IIAS塾ジュニアセミナー開催委員会)
【後援】京都府・大阪府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県の各教育委員会(予定)
【協力】京都大学、大阪大学
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