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公募研究

領域横断型の生命倫理プラットフォームの形成に向けて

研究代表者:児玉 聡
京都大学大学院文学研究科准教授

近年、社会的に注目されている課題として、出生前診断や代理母を含む生殖補助医療、終末期医療、再生医療研究、医学研究者の不正行為など、いわゆる生命倫理(bioethics)の諸課題がある。今日、とりわけ日本においてはこれらのテーマに関する領域横断型の研究・教育体制作りが遅れてきた。そこで本プロジェクトでは、国際的な生命倫理学の研究・教育拠点を日本に作るべく、その基盤となる生命倫理プラットフォームの形成を図ることを目的とする。

参加研究者リスト2017.04.01現在

児玉 聡
京都大学大学院文学研究科准教授
伊勢田 哲治
京都大学大学院文学研究科准教授
位田 隆一
国際高等研究所副所長、滋賀大学学長
一家 綱邦
国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター倫理相談・教育研修室長
伊藤 達也
京都大学医学部附属病院講師
木村 敦子
京都大学大学院法学研究科准教授
齋藤 信也
岡山大学大学院保健学研究科教授
佐藤 恵子
京都大学医学部附属病院特定准教授
下妻 晃二郎
立命館大学生命科学部教授
鈴木 美香
京都大学iPS細胞研究所特定研究員
竹之内 沙弥香
京都大学医学部附属病院特定講師
鶴山 竜昭
京都大学大学院医学研究科准教授
戸田 聡一郎
東北大学病院臨床研究推進センター特任助教
長尾 式子
北里大学看護学部看護システム学准教授
錦織 宏
京都大学大学院医学研究科准教授
野崎 亜紀子
京都薬科大学薬学部教授
服部 高宏
京都大学法学系(大学院法学研究科)教授
東島 仁
山口大学国際総合科学部講師
松村 由美
京都大学大学院医学研究科准教授
三成 寿作
大阪大学大学院医学系研究科助教
立場 貴文
京都大学大学院文学研究科修士課程 (RA)

■ 研究目的・方法

生命倫理(bioethics)の諸課題の解決に向けて、本研究では、主に関西圏の研究者の交流を促進して、新たなアイデアや実践に反映しうる斬新な解決策を創出するための「生命倫理プラットフォーム」を作ることを目指したい。そして、近年の医療技術の進歩や先端的な生命科学研究の発展に即応できる、生命倫理に関する研究・教育の土台を構築し、それにより、政策提言など現実の課題解決に資する取り組みに積極的に関与する生命倫理のシンク&ドゥ・タンクの設立を目指す。

この目的のため、第一に、関西圏での生命倫理に関連する領域の研究者や実務者の連携強化・加速化を目指して、「生命倫理プラットフォーム」を形成する。これを基盤として、人文・社会科学系と自然科学系の研究者がともに参加し自由に議論できる研究会を定期的に開催し、文理融合型の研究の促進を図る。第二に、関西圏には生命倫理学を領域横断的な方法で学ぶ教育プログラムがないことを鑑み、「生命倫理学教育コアカリキュラム」の作成を行い、臨床現場の倫理問題および医学研究の倫理問題に対応するための「生命倫理学入門コース」を計画・実施し、より良いカリキュラムの作成を目指す。第三に、形成されたプラットフォームを研究交流の場として、優先的に解決すべきテーマを選定し、具体的な検討と実践を行う。議論によって得られた成果については、政策提言等の形でまとめたものをHP等を通じて公表すると同時に、政府(関係省庁)への働きかけや、医療機関や研究機関で提言が実施されるように具体的な実践モデルを作成・提案するなどして、具体的な社会実装を目指す。

今後の計画・期待される効果

第一に、2017年度も、引き続き国際高等研究所にて生命倫理に関する研究会を開催する予定である。現在、プロジェクトメンバーから提案されているテーマは、公衆衛生倫理(予防をめぐる問題)、インフォームド・コンセント、ゲノム医療などである。メンバーとの議論を踏まえて、テーマを選定し、適切なゲスト報告者を選んで有意義な研究会を開催して報告書等にまとめる予定である。
第二に、引き続きウェブサイト等で本研究会を含めた生命倫理に関する情報の発信に努める。とくに、研究会でもすでに取り上げたゲノム編集の問題については、国際的動向を引き続き注視していく予定である。
第三に、2016年度に引き続き、臨床倫理の入門コースなど、プロジェクトメンバーの協力を得て教育活動を実施する。
第四に、プロジェクトメンバーを中心に、これまでの研究会での議論も踏まえた、新しい生命倫理の教科書の作成を計画している。すでに出版社との交渉も行っているため、できるだけ2017年度内の出版に努めることとする。
最後に、今年度が本プロジェクトの最終年度であることに鑑み、関西圏を中心とした生命倫理プラットフォームの継続的な活動のために、科研費等の研究費の申請を実施予定である。これに関しては、プロジェクトメンバーからの意見も聴取しつつ、次世代の研究者の育成も含めて息の長い取り組みができるような形を目指して取り組む予定である。

活動報告

アニュアルレポート