公募研究
生命活動を生体高分子への修飾から俯瞰する
- 研究代表者:岩井 一宏
- 京都大学大学院医学研究科教授
タンパク質、DNA、脂質などの生体高分子はいつも一様な機能を発現しているのではなく、修飾によって機能が調節されている。修飾する因子、様式には多様性があり、その違いによって機能制御メカニズムが異なるが、多くの共通点もある。本研究では専門領域にとらわれることなく生体高分子の修飾に関与する研究者を一堂に会し、修飾の特徴、役割の観点から多様な生命現象の制御機構について俯瞰し、生命科学に新たな視点を提供することを目指す。
参加研究者リスト2016.07.01現在
- 岩井 一宏
- 京都大学大学院医学研究科教授
- 有田 誠
- 理化学研究所統合生命医科学研究センターチームリーダー
- 五十嵐 和彦
- 東北大学大学院医学系研究科教授
- 石濱 泰
- 京都大学大学院薬学研究科教授
- 稲田 利文
- 東北大学大学院薬学系研究科教授
- 大隅 良典
- 東京工業大学科学技術創成研究院特任教授
- 木下 タロウ
- 大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授
- 白川 昌宏
- 京都大学大学院工学研究科教授
- 鈴木 聡
- 神戸大学大学院医学研究科教授、九州大学生体防御医学研究所客員教授
- 田中 啓二
- 東京都医学総合研究所所長
- 仲野 徹
- 大阪大学大学院生命機能研究科教授
- 西田 栄介
- 京都大学大学院生命科学研究科教授
- 山本 雅
- 沖縄科学技術大学院大学細胞シグナルユニット教授
- 吉田 稔
- 理化学研究所吉田化学遺伝学研究室主任研究員
■ 研究目的・方法
これまで、生体高分子への修飾は関連する生命現象の研究者コミュニティ内でのみ議論されていることがほとんどであった。DNAのメチル化やヒストンのアセチル化、メチル化などはエピジェネティック制御の研究者間で、タンパク質のリン酸化はシグナル伝達研究の枠組みの中で、タンパク質のユビキチン化は発見の経緯もありタンパク質分解系の研究者のコミュニティ内で議論されてきた。
しかし、修飾から生命現象を観察すると異なった視点から現象を理解できる。ユビキチンのポリマーであるポリユビキチン修飾がタンパク質分解のシグナルとして機能している。ユビキチンはタンパク質であり、そのポリマーは修飾因子としては非常に大きいので、ポリユビキチン鎖のみでシグナルとして機能できるから分解シグナルとして選択されたのだろう。一方、塩基対の形成に影響を与えないためにはDNAの塩基の修飾はメチル化など小さな修飾でなければならない。すなわち、制御対象となる生命現象に応じて、それに適した修飾因子、修飾様式が選択されていると考えられる。
そこで、本研究では専門を問わず、生体高分子に対する修飾が関与する種々の生命現象、種々の生体高分子の修飾、修飾による生体高分子の機能変換機構、種々の修飾の同定などの研究に従事している広範な分野の研究者が集い、修飾が関与する生命現象制御に関する話題を持ち寄り、修飾因子の視点から議論する。それらの議論を通して、生体高分子の修飾の生命現象の制御における役割を明確とし、生体高分子の時空間的制御様式と生命現象との関連を明確とすることを目指す。
今後の計画・期待される効果
生体高分子の修飾は幾多の生命現象を制御しており、修飾に関してオリジナリティの高い研究の多くは関連する生命現象と深く関連している。修飾の役割を理解するには研究分野の背景等の理解が不可欠であり、長時間の話題提供をお願いしている。
修飾に使われる材料が利用可能な細胞内の局在、生体高分子の本来の役割を妨げないサイズ、電荷などを踏まえて、種々の修飾が選択される可能性は想定されたが、「なぜその特定の生命現象を制御するためには、その修飾でなければならないのか?」との問に答えることは非常に難しいことが明瞭となった。また、質量分析技術の発展が生体高分子の修飾の同定とその機能の理解に大きな役割を演じるため、質量分析技術を活かした脂質研究従事者を新たにメンバーに加える。
2年間の研究プロジェクトを通じた提供された修飾によって制御される種々の生命現象の話題を統合すると、生命現象の制御には1つの修飾だけではなく、種々の修飾が複雑に絡み合って制御していること、修飾因子の修飾の役割が明確になった点が挙げられる。
最終年度では、種々の修飾が複雑に絡み合って生命現象を制御する点を中心にプロジェクトを進め、本プロジェクト終了後には我が国の生命科学研究の新たな一石を投じられる様な他の研究組織の樹立を目指したい。
また、生命科学全体を俯瞰できる次世代の研究者の育成にも貢献できればと考えており、意欲的な若手研究者の参画を企画する。
研究会の開催状況
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活動報告
アニュアルレポート |
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