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第14回 けいはんな「エジソンの会」

開催概要

VR(仮想現実)/AR(拡張現実)について

講師
  • 廣瀬 通孝
    東京大学大学院情報理工学系研究科 教授
  • 榊原 彰
    日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者(CTO)
開催日時 2017年9月21日(木 )13:30~ 19:30
開催場所 公益財団法人 国際高等研究所
概要 仮想現実(VR:Virtual Reality)、拡張現実(AR:Augmented Reality)は現実環境と仮想空間とを関連付ける新しいテクノロジーですが、これまでのコンピュータと人間とのインターフェースを変革する可能性が高く、適用分野においては医療分野での手術時の3Dモデルの利用や術者の感覚的な体感を共有、共感することによる事前疑似体験に見られるように、人間への新しい出力の在り方そのものを変化させてきました。
テクノロジーの進化によりHMD(Head Mount Display)の視野角が大幅に拡大し、加速度計/角速度計を含むセンサがコンパクト化、高性能化し、より現実に近い3D画像とインタラクティブにやり取りができるようになりました。それにより、多種多様な分野への企業の参入も始まり、VR/ARは我々の生活に非常に身近な存在となりつつあり、市場の急成長が見込まれています。

第14回会合では、VR/ARのテクノロジーの最新状況と適用分野及び今後の展望について、日本バーチャルリアリティ学会の設立に貢献し、会長を務めた後、現在特別顧問を務められている廣瀬通孝先生に、テクノロジー面に加え、新たに心理学的手法を活用する観点からご説明をいただきます。

また、日本マイクロソフト株式会社の榊原彰氏より、コンピュータで作り上げた仮想空間と現実の世界を融合した「AR/VRを超えるMixed Reality(複合現実)」を実現することにより、人間とコンピュータとの新たな関係がどのように構築され、どのように展開されていくかについて、社会や生活や仕事にイノベーションをもたらす各種事例を交えながら説明していただきます。

VR/ARにおける先進事例と今後の展望に触れていただくことによって、AIを中心とした新たなテクノロジーがどのように活かされ、人間とコンピュータとの新しいインターフェースが従来型産業を如何に革新していくのか、分野を超えた研究者・技術者、企業の様々な立場の皆様にも大いに参考にしていただけるものと期待しています。
配布資料
講師:廣瀬 通孝 「VR2.0の世界」
PDF [7 MB]
講師:榊原 彰 「産業にイノベーションをもたらすMixed Reality」
PDF [10 MB]

タイムテーブル

13:30~14:50
「VR2.0の世界」廣瀬 通孝 東京大学 先端科学技術研究センター 教授
15:00~16:20
「産業にイノベーションをもたらすMixed Reality」榊原 彰 日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者
16:30~17:50
インタラクティブ・セッション
18:00~19:30
懇親会

当日の様子

 けいはんな「エジソンの会」第14回会合では、VRのテクノロジーの最新状況とそれらを駆使したビジネスへの様々な用途への応用と今後の可能性についての紹介があり、ここまで技術が進化していることに驚きを感じました。今後、画像処理やセンサー、周辺機器の技術革新により、さらにリアルで使いやすいものになることで、ミッションクリティカルな産業分野からエンターテイメントまで幅広い適用領域があることを感じさせられました。サイバーフィジカルシステムにおいて、サイバーとフィジカルを結ぶ、機械と人間を結ぶためのキーテクノロジーとして、よりポピュラーなものになることが期待されます。ご講演頂いた内容は下記の通りです。

「VR2.0の世界」

廣瀬 通孝 東京大学大学院情報理工学系研究科教授

「VR(Virtual Reality)」とはコンピュータが作り出した空間の中に入り込み、そこでいろいろな体験をしようという技術のことであるが、VRという言葉が社会に登場したのは1989年で、ルーツは宇宙航空技術である。VRでいう現実感とは、その場にいるかのように、はっきり見える首尾一貫した法則が感じられ、シミュレーションとヒューマンインターフェースが一体になったものをいう。VRの提供するインタラクションは現実世界に近いものであり、GUIについては約束事の極小化を目指している。その場に居ながらの臨場感を持つVR技術に対し、AR(Augmented Reality拡張現実)は実世界との接点を持つ技術であり、現実の世界から逃れられないが、限定的なところに絞られるVRよりも、実世界への広がりがあると言われている。
VRは現在第2世代に突入しつつあり、パフォーマンスは目を見張るほど向上した。それにはインターネットが大きく影響しており、GPUなどの驚異的な高性能化低廉化と当時存在しなかった周辺技術も充実したことで、高い臨場感の映像をインタラクティブに体験する技術基盤は揃いつつある。これはまさにVRを支える技術の生態系が整いつつあり、今がVR元年と呼ばれる所以である。
人工知能が知性の技術であるとすると、VRというのは感覚とか感性に非常に密接に関係する技術であり、五感の研究と近い関係にある。最近は心理学を使った五感の錯覚を利用した補完技術の利用により、技術だけではなく心理学を活用しながら費用対効果の面で圧倒的に異なったアプローチが実現できるようになってきた。
VRで空間を超える技術としては、通信による仮想空間の共有技術を用いた遠隔臨場感技術(テレプレゼンス)があるが、ネットワークの進化により、より存在感と臨場感を体現できる新たなメディアに近づいてきている。また、位置情報/記録媒体/画像技術が進化し、人の一生のライフログ取得が現実化しており、それらの情報をどう取り扱っていくかがこれからの大きなテーマとなる。また、VRを通した可視化技術を通して、頭で理解した次に、VRで体験して理解することにより、より理解度を深めることが可能となってくる。
VR技術の持つ可能性の一つとして、高齢化に伴う労働力の仮想化を考えている。高齢者の細分化された労働力を再構成し、高齢者の新しい就労形態を構築して、社会構造を変化させ、新規ビジネス創出と高齢者の社会参加促進を促したい。
フェイクの追求では本質的な面白さは見えないので、どうしたら現実で難しい問題をバーチャルにすることによって解決できるかという視点が非常に重要であり、VRでの実現を目指していきたい。

「産業にイノベーションをもたらすMixed Reality」

榊原 彰 日本マイクロソフト株式会社執行役員・最高技術責任者(CTO)

複合現実(MR:Mixed Reality)を、弊社は物理的現実と仮想現実の融合と定義しており、物理的な物体とデジタルな物体が共存し、すべての物体が実在しているかのような新たな環境を作り出すことである。
HoloLensは、MRを実現するための世界初の自己完結型ホログラフィックコンピューターで、Windowsのデバイスである。複数の高度なセンサーや透明なホログラフィクレンズに光学投影システムを搭載し、ホログラフィック処理装置(HPU)により、各センサーからの大量データを高速処理し、ユーザーのジェスチャーや視線の検知と周辺環境のリアルタイムマッピングを実現可能にしている。また、ホログラムの音の合成と再生に対応しており、臨場感あふれるホログラフ体験やネットワーク経由での共有が実現できる。世界で22,000のデベロッパーを抱えており、現在は英語圏のみの対応だが、日本語化も予定している。
HoloLensで実現するMRは、制作&デザイン、組み立て&製造、トレーニング&開発、コミュニケーション&学習、エンターテイメント&エンゲージメントなど様々な分野で活用が可能である。Volvoでは、店頭でのカタログ体験にMRを利用し、新たな消費体験を作り出している。例えば、階段昇降機の設計については、計測とデザインの段階からHoloLensを用いて空間設計をすることで、ミリ単位の計測や設計段階のイメージから完成までをユーザーが確認でき、試作機を作らず短期間・低コストで仕上げることが可能になっている。また、建築会社では、設計から竣工までのタイムラインをHoloLensに表示させ、設計現場の建設全行程管理に利用している。空間マッピングにより設計内容のインスペクションを行ったり、デザインを瞬時に変えることが出来るのも大きな利点である。エレベータ保守作業にも利用されており、作業者のスキルを補って遠隔地から支援し、保守作業の迅速な対応に役立てている。医療の世界では、患者の人体をスキャンして3Dモデルを生成した後HoloLensに戻し、手術時や事前手順確認に使用したり、パーキンソン病患者の手の震えをKinectでスキャンし、HoloLensに映すことにより遠隔から3Dでリアルタイム診断を行い、医師が投与する薬の量を変える試みも行われている。
マイクロソフトのAIへの取り組みはMSリサーチにて行われているが、設立から26年間、AIを誰にも、使いやすい形でリーズナブルなコストで使ってもらえ、人の日々の生活を支えるためのAI機能を研究してきたが、画像認識、音声認識などについては深層学習の進化により、弊社の音声認識率は5.1%、画像誤認識率は3.5%と人の誤認識率を超えることができた。また、画像からのObjective recognitionによる文章作成にも取り組んでいる。地球上のすべての人々とすべての組織がより多くのことを達成できるようにする、というミッションのもと、MRを通してよりよい社会を実現していきたいと考えている。

[インタラクティブ・セッション]

情報過多の時代への対応、Diminished Realityについて、フィジカルからサイバーへの情報のつなぎ方、AIの民主化、高齢化社会と所得分配、仮想現実と現実感、テレビ会議と遠隔講義など多くのテーマから活発な意見交換が行われました。

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