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第16回 けいはんな「エジソンの会」

開催概要

防災・減災を克服するためのAIやIoT、ビッグデータの活用について

講師
  • 堀 宗朗
    東京大学 地震研究所巨大地震津波災害予測研究センターセンター長、教授
    内閣府SIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」プログラムディレクター
  • 上田 修功
    理化学研究所 革新知能統合研究センター 副センター長
開催日時 2017年12月26日(火 )13:30~ 19:30
開催場所 公益財団法人 国際高等研究所
住所 〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
概要 自然災害の多く発生する日本において、我々の命を守るためには、災害に対する事前の備えを行い、災害を如何に早く察知し、災害が起こった時には如何に迅速に対応するかが求められており、それらを克服するために、AIやIoT、ビッグデータの高度な活用が大きく期待されています。
第16回会合では、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で、「レジリエントな防災・減災機能の強化」のプログラムディレクターを務めておられる堀先生より、AIを活用し、システマチックに防災、減災を実行するとはどのようなことかについて、日本としての統合的な取り組みの状況とともにご紹介頂きます。理化学研究所の上田先生には、人工知能研究の立場から、防災・減災に関わる人工知能の適用範囲とそれを支える最先端技術及び今後の展望についてご説明頂きます。
配布資料
講師:堀 宗朗 「レジリエントな防災・減災機能の強化」の現状と展望
PDF [14 MB]
講師:上田 修功 「防災分野における人工知能の活用 ~理研 革新知能統合研究センター 防災科学チームでの取り組み紹介~」
PDF [5 MB]

タイムテーブル

13:00~
受付
13:30~14:50
「レジリエントな防災・減災機能の強化」の現状と展望堀 宗朗 東京大学 地震研究所巨大地震津波災害予測研究センター センター長、教授
内閣府SIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」プログラムディレクター
15:00~16:20
防災分野における人工知能の活用 ~理研 革新知能統合研究センター 防災科学チームでの取り組み紹介~上田 修功 理化学研究所 革新知能統合研究センター 副センター長
16:30~17:50
インタラクティブ・セッション
18:00-19:30
懇親会

当日の様子

  けいはんな「エジソンの会」第16回会合は、「防災・減災を克服するためのAIやIoT、ビッグデータの活用」というテーマで開催いたしました。
 被害を最小限に留めるとともに被害からいち早く立ち直り、元の生活に戻らせる、という考え方のもと、「レジリエントな防災・減災の強化」のプログラムによる国土強靭化対策が実施されていますが、防潮堤の充実と言った物理的な対策以外にも、具体的な津波予測技術に基づく避難想定や災害対応、1時間先のゲリラ豪雨予測による災害対応力の向上、液状化対策技術によるインフラの補強、など最新技術の活用により、我々を災害から守る様々な試みがなされていることが理解できました。
AIを活用した災害時における都市部での混乱予測や、混乱を避けるための集団最適誘導のシミュレーションも研究されており、また、時空間統計解析による様々な用途での利活用の可能性も高まり、これまでの科学とAIを連携させて、新たな科学的アプローチにより私たちを災害から守り、また災害からの復旧を迅速に行うための様々な取組みについて幅広い知識を得ることが出来ました。ご講演頂いた内容は下記の通りです。

「レジリエントな防災・減災機能の強化」の現状と展望

堀 宗朗 東京大学 地震研究所巨大地震津波災害予測研究センター センター長、教授
内閣府SIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」プログラムディレクター

「レジリエントな防災・減災機能の強化」は、Society5.0の実現に向けた内閣府の戦略的イノベーションプログラム(SIP)の一環として、災害予測・予防・対応と情報共有の高度化を図り、国、自治体、企業、国民の防災・減災の実践力向上を成果として、世界に先駆けた「超スマート社会」の実現を目的としたものである。
 現在、行政の縦割りの弊害を打破し、情報の速やかな共有を実現するための府省庁連携防災共有システム(SIP4D)を稼働させており、既に厚労省・農水省のシステムと連接済であり、今後は他省庁や都道府県との連接を図っていく。将来は、民間団体や住民コミュニティに拡大していく予定であり、2030年に完成を目指しており、SIP4Dには、①津波、②豪雨・竜巻予測、③液状化対策、④災害情報収集・リアルタイム被害推定、⑤災害情報配信、⑥地域連携による災害対応の6つの課題を組み込んでいる。
 教訓として、東日本大震災では情報提供の不備が避難の遅れの一因となり、さらに防災施設の倒壊をも招いた。そのため今後の災害に向け、津波到来までの猶予時間の最大限活用による津波被害の軽減を目指し、津波即時予測技術開発と防護施設評価手法開発に取り組んでいる。さらには、沿岸構造物に与える津波外力の基礎研究を行い、防護性能評価の手法も構築した。
 また、ゲリラ豪雨や竜巻は発達が非常に速く、短時間に集中して大雨をもたらすが、それに対しては、世界最高性能の高速レーダの開発により、予測が困難だった豪雨や竜巻を事前に捉えることが可能となり、それらへの対応力は飛躍的に向上している。予測情報を活用することにより、今後、府省庁・自治体の早期対応体制の充実、一般市民の避難など防災行動、下水道管理者、公園管理者、建設事業者、地下管理者などでの連携した対応が可能になってくる。特に鉄道事業者へは、列車停止位置・旅客避難支援システムなどで有効に利用できるものと考えている。
 今後は国全体で状況認識を統一し、的確な災害対応を行うために、多数の府省庁・関係機関等の間で、横断的な情報共有・利活用を実現するシステム開発を行い、SIP終了までに少なくとも、4府省システムとの連接を実現し、防災情報サービスプラットフォームのプロトタイプ構築に結び付けていきたい。災害時の応急通信技術については、適用性の検証と併行して社会実装および国際展開を目指し、新たなメディアによる情報配信や、被災者・被災地に対する既存回線に頼らない情報伝達手段を構築していく。さらに産業集積地の大規模災害対応の迅速化・最適化を図るため、災害情報共有基盤と活用アプリケーションを開発し、産官連携の標準化手法を確立し、超広域巨大災害への対応を次の課題として取り組んでいきたい。

防災分野における人工知能の活用 ~理研 革新知能統合研究センター 防災科学チームでの取り組み紹介~

上田 修功 理化学研究所 革新知能統合研究センター 副センター長

 理研では2016年に革新知能統合研究センターを立ち上げ、主にAIの基礎研究を行っており、脳やコミュニケーション技術開発を行うNICT、社会実装を行う産総研との3機関が日本のAI研究開発拠点となって日本産業の活性化に取り組んでいる。
 今年NIPS(Neural Information Processing Systems)の会議に参加してきたが、講演や論文発表の70%程度が深層学習であることから見られるように、AI研究の現状は、機械学習ブームと呼ぶべきところがあり、米中の巨大IT企業がブームを加速している。今後は深層学習だけではなく、様々なアプローチが切磋琢磨していくべきと考えている。
 IoTの本格的な到来により、2020年には70億人の各人が毎年150個のセンサーを消費する規模となり、現在の100倍を超える状況となる。そこでは、今までと違った新たな試みを実現出来る。物理センサーの増加により、単一種データから多次元データの収集が可能となり、現状分析から未来を予測する、また時間・空間にセンサーが繋がっている多次元複合データを利用した時空間多次元集合データ分析により、「いつ、どこで、何が、どうなるか」といったことが予測出来るようになる。時空間統計解析は、21世紀のフロンティアとして、統計科学の諸分野の中で最も注目を浴びているテーマである。
 国連が2年ごとに発表している世界の都市化比率を見ると、日本は現状でも50%を超えており、2050年には66%との予測がある。全世界的に見ても都市と地方の人口推移から分かるように、都市化は加速の一途を辿っている。3.11時に都市部での帰宅難民の続出からもみられるように、災害時における都市部対策は急務であり、都市部の混乱を防ぐための技術として、リアルタイム時空間予測・制御技術を研究している。当該技術を活用してオリンピックスタジアムでの入場/退場の最適な誘導を行う新たな学習型マルチエージェントシュミレーションを構築した。
 AIによる地震被害・発生予測については、スパコンでの超大規模な物理シミュレーションによる被害予測モデルの構築と地震発生予測モデルの構築を目標に掲げている。地震対策用のシナリオを作るため、地震の揺れ(地震動強度)マップを50m以下の分解能で作り、ビルに取り付けたMEMS (Micro Electro Mechanical System)センサーでデータを把握し、建物の危険度の自動判定に繋げたい。地震発生予測のモデル構築については、実現の可能性を見極めるため、物理シミュレーションデータを作成中であるが、過去の地震発生時期を見て、パラメータを逆に作成できないかも検討している。
 アリストテレスから始まった実験科学は、ニュートンにより理論科学へと進化した。ジム・グレイにより計算科学が生まれてシミュレーションが容易となり、データ集約型科学によりデータからの仮説発見が可能となってきた。AIと計算科学・データ集約型科学を連携させ、その先にある新たなシミュレーション科学の実現に挑戦していきたい。

[インタラクティブ・セッション]

 防災・減災の個人への啓発の動き、防災・減災を意識した都市計画や都市設計の在り方、集団最適誘導での施設のキャパシティやパニックへの対応、テロを含むエクストリームイベントへの対応、防衛省との連携の必要性、防災時のSNSの利用評価など、様々な意見が交換されました。最後に、危険な国ではあるが、それを逆に好機と捉え、対応策を世界へ展開していくべきである との意見も出ました。

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