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第20回 けいはんな「エジソンの会」

開催概要

「AIの進化に伴う人文社会系の問題を考える」 ~雇用/働き方/人材育成の観点から~

講師
  • 岩本 晃一
    独立行政法人経済産業研究所上席研究員
  • 鈴木 敏恵
    シンクタンク未来教育ビジョン代表・一級建築士
開催日時 2018年4月23日(月) 13:30~19:30
開催場所 公益財団法人 国際高等研究所
住所 〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
概要 AIはロボットやIoTなどとともに、科学技術全体の指数関数的な進化を牽引するといわれています。それらのもたらす大きな変化はシンギュラリティ論争に代表されるような人と機械の関係性の変革のみならず、仕事との向き合い方や職業の変化、新たなデジタルディバイドのリスク、プライバシーやヒューマニティに係るリスクなど、これまでにない社会的課題やリスクを生み出してしまうことが懸念されています。
今後新たに噴出してくる課題にはどのようなものがあるのか、来るべきAIネットワークの時代に、それらの恩恵を最大限享受しながらも、安寧で安定した社会を築いていくためにはどうしたらよいのかについて、理解を深めるとともに、皆様と深く考究して行きたいと思います。

第20回会合では、岩本晃一先生に、AI等が雇用に与える影響などに関するこれまでの研究結果を踏まえ、AI等が雇用に与える影響、AI時代の働き方・人材育成などに関する日本の現状と今後の方向性など「雇用の未来」「AI時代の働き方改革・人づくり」について、世界で発表された論文や日本で先生が行われた調査、及びドイツに出張されて得たドイツの「労働4.0(Arbeiten4.0)」プロジェクトの概要等を交えながらお話を伺います。
また、学校のインテリジェント化を先駆け、現在は「意志ある学び」をコンセプトに全国の教育界、医療界へ未来教育プロジェクト学習を実践されておられる鈴木敏恵先生には、IoT/AIが雇用に与える影響や働き方を踏まえ、AI時代の教育と人材育成についてお話をお伺いします。さらに、参加の皆様と深く対話をしていただきます。

また、2018年4月1日付で松本紘先生が高等研の所長に就任し、新たな研究体制が始動いたしました。
今年度初回となる「エジソンの会」第20回会合にて、エジソンの会にご参加いただく皆様に向けて松本所長よりご挨拶を予定しております。(変更になる場合もあります。)
また、有本副所長がインタラクティブセッションに登壇、佐和副所長はエジソンの会に出席の予定です。
この機会に是非みなさまのご参加をお待ちしております。
配布資料
講師:岩本 晃一 「人工知能AI等と『雇用の未来』『働き方・人材育成』」
PDF [12 MB]
講師:鈴木 敏恵 資料A 「AI時代の教育-意志ある学び プロジェクト学習  ~インテリジェント化で知の共有・知の成果をかなえる~」
PDF [11 MB]
講師:鈴木 敏恵 資料B 「AI時代の教育-意志ある学び プロジェクト学習  ~インテリジェント化で知の共有・知の成果をかなえる~」
PDF [4 MB]

タイムテーブル

13:00
受付開始
13:30~14:50
「人工知能AI時代の『雇用の未来』『働き方・人材育成』」岩本 晃一 独立行政法人経済産業研究所上席研究員
15:00~16:20
「AI時代の教育-意志ある学び プロジェクト学習  ~インテリジェント化で知の共有・知の成果をかなえる~」鈴木 敏恵 シンクタンク未来教育ビジョン代表・一級建築士
16:30-16:40
2018年度新体制についてのご挨拶松本 紘  国際高等研究所所長
上田 修功  理化学研究所革新知能統合研究センター副センター長
 「エジソンの会」スーパーバイザー
16:40~17:50
インタラクティブ・セッションご登壇者(岩本 晃一氏、鈴木 敏恵氏)
有本 建男 国際高等研究所副所長、政策研究大学院大学教授
上田 修功 「エジソンの会」スーパーバイザー
18:00~19:30
懇親会

当日の様子

けいはんな「エジソンの会」第20回会合は、「AIの進化に伴う人文社会系の問題を考える~雇用/働き方/人材育成の観点から~」というテーマで開催致しました。
 科学技術は指数関数的な進化を遂げ、ますます我々個人や社会に大きな影響を与えながら進展していくと思われますが、人間の倫理感や法制度や社会についての様々な問題が科学技術の進化に追いついていないのが現状です。AIは人間を超える存在になるのか。科学技術の進化がさらに進展する状況の中で、AIが代替するであろう労働と雇用の未来、求められる人材とその育成の在り方、そこでは我々自身がどのような未来を創造していくのかが大きく問われていると思います。我々のありたい未来を想定した上で、AIが生み出す様々な問題に対して、個人、集団、社会、国家、世界、それぞれの層が最適に機能していくためには、どのようにすればよいのか、先行する欧米の動きにそのヒントがあるのか、非常に多くのことを考えさせられる会合でした。ご講演頂いた内容は下記の通りです。

「人工知能AI時代の『雇用の未来』『働き方・人材育成』」

岩本 晃一 独立行政法人経済産業研究所上席研究員

第一次から第三次までと比べ第四次産業革命は、インターネットの出現、情報・通信技術の発展により、圧倒的なコンピュータパワーと高速ネットワークに支えられ、高速通信、大量データの扱い、安価化、小型化を実現し、向こう10~20年後には、新たなビジネス・企業・雇用が創出され、巨大市場が生まれる予感がある。また、巨大市場の先行利得を目指して世界中の企業が熾烈なグローバル競争を展開し、全ての産業分野に変革を齎し、全ての国にとって大きく飛躍できる絶好の機会ではあるが、競争に負ければ一気に沈没する可能性もあり、改革(Reform)でなく、まさに革命(Revolution)と呼ぶにふさわしい。
世界の経営トップへの調査では、今後のビジネスモデルはオープンプラットフォーム型へ移行し、最大の脅威は異業種からの競争者の新規参入であると考えられているが、日本の多くの経営者の認識は不十分であり、危機感は皆無のように思われる。
米国企業はインターネット元年以降、モノを作らず、データ処理のみでグローバル競争で圧勝してきたが、日本では正社員数を見ても5年前より大幅に減少し、自動車関連に大きく依存した産業構造となっており、産業の多様性が無くなってきた。日本の産業は、世界のリーダーとなるか、ジリ貧となるか、今我々はその分岐点にいる。
2013年オックスフォード大学のフレイ&オズボーンが米国において10~20 年内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが70%以上、という推計結果を発表し、世界中から数百本の論文が発表されたが、世界では2016年には研究ブームはピークを越え、雇用の未来を雇用の質と構造問題として取り組んでいる。「AIは人間の雇用を奪うか」といった二極対立的な議論を展開しているのは日本だけである。
フレイ&オズボーンの推計に対する評価は、米国の自動化可能性の算出であり、雇用の未来にパイオニアの役割は果たしたが、技術的な可能性を示しただけであり、雇用が増えることは一切考慮していない。ドイツ連邦政府がZEW研究所に委託し、1つの職業をタスクに細分化し機械に代替可能かの判断を行った調査結果では、米国7%、ドイツ12%であり、この数字は世界的にコンセンサスの取れたものとなっている。
ドイツは、2013年「全自動無人化工場」をインダストリー4.0の構想として発表し、雇用問題を研究するArbeiten4.0プロジェクトを開始した。機械化による雇用への影響を再計算し、企業活動の中核を人間が担うとして、雇用対策の強化などを提言している。また、ニュルンベルクのドイツ連邦政府・労働社会省所管のIABは2025年ドイツにおいて失われる雇用は1460万人、創出される雇用は1400万人とほぼ同数であることを示したが、職業の増減にかかわらず技術の進歩に対応できない人は失業の可能性があり、再訓練の充実化により、失業を低く抑えることにも注力し、職業訓練所のカリキュラムにIoT/AIを組み込む作業が進行中である。
情報技術は、高スキル(抽象的仕事)と低スキル(マニュアル仕事)雇用を二極化し、需要は上昇するが、賃金水準については、高スキル労働は上昇するが低スキル労働は上昇しない。また、2016年の米国経済白書によると、低賃金労働ほど自動化により代替されやすく、オンラインの恩恵を受けることができない労働者は、就職活動、サービス、教育面で様々な不利益を被るため、情報格差の縮小が必要である。先進国の格差拡大の主な要因は技術革新(ICT投資)であり、日本でも同様であるが、ICT投資の推進は、我が国の経済成長力の向上のためには不可欠である。
新技術の導入に対する雇用環境について日本の大手製造企業の現場を調査したところ、熟練作業員不足による労働部分の代替と人間への負荷軽減のため人間を「エンパワー」するために新技術を導入しているのであり、機械化、自動化、省力化よりも「人と機械の調和」を図ることを目的にしているように思われる。生産現場が分かり、現場と対話できるITエンジニアの育成が求められており、AI、ロボット、IoTなどICTの活用と作業員との連携によって、今後生産性を大きく伸ばすことが望まれる。
日本企業全体の動向として、最も減った職業は、「事務職」であり、傾向としては専門職・技術職を大切にし、ルーティン業務の事務職を削減する方向でIoTが導入されつつある。ICTの活用により一旦雇用は減少し、新しいビジネスが増えた時点で増加するという世界の論文からの予測とは異なり、日本の現状では雇用は増加しているという点が興味深い。
2000年と2010年の欧米と日本との人的投資を比べたところ、米国・ドイツ・英国は60%近く増えているのに対して日本は60%以上減っている。第四次産業革命を見据え、異分野からの人材獲得投資やAI・IoT等の人材育成が重要であり、人間本位の産業社会を創り上げ、様々なつながりによる新たなビジネスモデルを創造するために、人的資本投資の促進が求められる。
AI時代に備え、我々は、過去の前例を「学習」し、その延長線上にある判断やルーティン業務はAIに代替し、前例のない事柄や新しい創造的な仕事、科学的な経営のサポートをする人材、コミュニケーション能力・対人能力を持った人材、AIを超える能力を持った専門家を養成するために、再教育・再訓練を行う必要があるとの認識を高めていくことが求められる。
日本の急速な人口減少・少子高齢化は、30~40 年前からかなりの高い精度で予測されており、
資金的に余裕のあるうちから手を打つべきだと良識派は主張していたが、そうした声はかき消され、目の前に危機が訪れるまで、日本は手を打たずに、ここまで来た。「雇用の未来」の問題も、数多くの調査分析により、将来の姿はある程度予想され、必要な対策もほぼ明らかになった。日本という船を沈没させないために、今度こそ現実の危機に直面する前に、今から真剣に取り組まないといけない。

「AI時代の教育-意志ある学び プロジェクト学習 ~インテリジェント化で知の共有・知の成果をかなえる~」

鈴木 敏恵 シンクタンク未来教育ビジョン代表・一級建築士

OECDの調査でも分かるように、日本は他国と比べ、知的好奇心を持って自ら学び続ける人が少なく、自殺率を見ても生きる力を身に付けているとは言えない。幸せ度を見ても世界で54位であり、男女平等ランキングは114位、労働生産性は21位と低い数字になっている。特に生産性の低さは、知識を入れるばかりで生み出すことをやってこなかった教育の問題によるところが大きく、目の前の現実から課題を発見することをしてこなかったことによるのではないかと考えられる。
AI時代の教育に求められることは、人間にしかできないビジョンを描く力を身に付けることであり、目の前の現実を何とかしたいと考えることにより課題が発見され、それをもとに目的・目標を自らが決定することで、知的なアウトカムを生み出せるのである。そこでは、自己対話により客観的に自分を見る力が求められる。
未来教育のインテリジェント化を目指し、知の共有、プロセスの共有、リアル(社会)の価値を教育の中に取り入れる必要がある。特にネット社会では高い没入感に浸り、現実が希薄になることもあるが、感性豊かな時期には、手応えのあるリアリティー、例えば、自然、街、人と会う面白さや価値を教育の中に取り入れることが必要である。
 IoT 、AI、ロボットの時代において、新しいテクノロジーを活かして人間は何を生み出せるのか、どんな未来を目指すのか、新しい価値あるものを創造的に生み出すのかを考えていく必要があり、また私たち一人ひとりがそこへ向かうためには、標準的で、皆同じというこれまでの定型的な教育ではなく、創造的な思考や多様で様々な人々が力を合わせてビジョンとゴールへ向かうことができる新しい教育が求められる。
ビジョンを描く力と目の前の現実からの課題発見、目的・目標の自己決定からプロジェクト学習で知の成果を生み出し、プロセスを俯瞰し、一人ひとりが違う価値・資質・センス・個性・自尊感情(自己肯定感)を持つために、ポートフォリオを作り、知の共有を図ることが必要である。ここで言うプロジェクトとは、ビジョンや使命感に基づき、ある目的を果たすための構想や計画などを指す。また、ポートフォリオとは経済学で言う最適分散投資ではなく、ゴールに向かうプロセスで得られた情報や閃いたアイディアやメモなどを一元化したものであり、ゴールを常に意識しながらポートフォリオをめくることで、目標へ向かう思考プロセスを追うことができるものである。
未来教育プロジェクト学習は、意志ある学びをかなえる新しい教育のプラットフォームとして教育界、医療界などでの課題解決力のある人材育成や目標実現の手法として広く実践されている。プロジェクト学習のゴールは、他者に役立つ「知の成果」を実現することであり、目的を持って、ゴールに進むためには、ポートフォリオの個々のフェーズと、それぞれのフェーズで身に付く力、それらをコーチングする力が求められると言えよう。実際にプロジェクト学習の活動プロセス(計画、情報・解決策、制作、プレゼンテーション、再構築、成功の確認)を通して、2001年より多くの成果を生み出すことができた。
ポートフォリオの活用は、模範による学びではなく、「自分がしたこと」から学ぶリフレクションと、見方を変えて同じシーンでも違ったとらえ方をすることができ新しい発想につながるリフレーミングに繋がるものである。この次世代教育モデルは患者の安全・安楽・尊厳・自律を原理原則とし、他者の幸せを目指す看護教育の特徴に類似しており、AI 時代に求められる能力は、情報収集能力、課題発見力、解決力、高度なコミュケーションによる対人関係能力、多職種における高度なチームワークなど「看護師の資質」とも共通するものと言えるのではないか。
対人関係力・コミュニケーション力、洞察力、思いやり、機微、思考力、判断力、行動力などの人間的要素をより良い成果として導き出すことが出来るプロジェクト学習を通して、未来学び舎の実現に向けて活動を続けていくことで、AI時代においても有効な意志ある学びを実践していきたい。

[インタラクティブ・セッション]

現状の分化した教育制度の問題、研究開発者の人間力の重要性、人材育成の方向性、労働と富の再配分、社会科学の重要性と研究者の養成、企業の教育体制の崩壊と新たな教育システムの模索、第四次産業革命に対する時代認識とSDGsとの関わり、グローバリゼーションと労働力など多岐にわたる意見交換がされました。

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