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第9回 けいはんな「エジソンの会」

開催概要

サイバーフィジカルシステムについて

講師
  • 喜連川 優
    国立情報学研究所所長
    東京大学生産技術研究所 教授
  • 萩田 紀博
    株式会社国際電気通信基礎技術研究所 フェロー
    知能ロボティクス研究所所長
開催日時 2017年4月25日(火) 13:30~19:30
開催場所 公益財団法人国際高等研究所
概要 第9回会合では、AI、ビッグデータ、IoTを駆使したシステムの全体像の概念を、サイバー空間と実世界の動きが緊密に結合されるCPS*(Cyber Physical System)を通して示し、CPSを支えるシステム基盤とこれまでとの違いについての技術的な紹介と解説を、電子情報通信学会ならびに情報処理学会フェローで文部科学省や経済産業省のプロジェクトで中心的な役割を果たされている喜連川優先生にお話を頂きました。
また、ビッグデータやセンシングデータを取り込み、あらゆる情報を統合的に働かせるCPSが、人間社会との調和を図りながら、サイバー空間と実世界のやり取りをどのようなセンシングとアクチュエーションを駆使して実現していくかを、JSTのCREST「人間と調和した創造的協働を実現する知的情報処理システムの構築」の研究統括であり、ネットワークロボットなどによる人と機械の融合した知的情報処理システムの先駆者である萩田紀博先生にお話を頂きました。

*CPS(Cyber Physical System)とは、
実世界(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術等を駆使して分析/知識化を行い、そこで創出した情報/価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図っていくものです。
配布資料
講師:萩田 紀博 「人間社会との調和のとれた新たなセンシングとアクチュエーション」
PDF [4 MB]

タイムテーブル

13:30~14:50
「仮想空間と現実世界を統合するサイバーフィジカルシステム(CPS)のインパクト」喜連川 優 国立情報学研究所所長 東京大学生産技術研究所 教授
15:00~16:20
「人間社会との調和のとれた新たなセンシングとアクチュエーション」萩田 紀博 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 フェロー 知能ロボティクス研究所所長
16:30~17:50
インタラクティブ・セッション※インタラクティブ・セッションでは講師の対談に加えて、参加者からの質問やコメントも加えたインタラクティブな場とします。
18:00~19:30
懇親会

当日の様子

「仮想空間と現実世界を統合するサイバーフィジカルシステム(CPS)のインパクト」

喜連川 優 国立情報学研究所 所長 東京大学生産技術研究所 教授

 サイバーフィジカルシステムは既に至るところで使われるようになっている。例えば、中国全土で流行しているレンタサイクルであるMOBIKEは、ユーザーがスマートフォンで位置情報を確認して自転車を借り、支払はウィーチャットで決済し、返却は乗り捨て、提供側はGPSを利用して管理するというふうに、サイバーとフィジカルが連携したCPSによる新しいソリューションが提供されている。
人間の活動は、時代や文明とともに進み、グローバルにどれだけ情報が運ばれるかにその進歩を見ることが出来るが、それゆえ日々増大する情報を運ぶインフラとしてのネットワークは大容量で強力なものが必要である。また昨今の、クラウドサービスにシフトしていく流れは、コンピュータのリソースが外部に出ていくことを意味し、益々ネットワークの太さが重要となる。クラウドをワークさせるためには、膨大なエッジ端末を接続する必要があり、IoT、ビッグデータの進展により、接続する端末が膨大になればなるほど、クラウド上のハードウエアリソース以上に接続ラインの重要性が増す。つまり、国家の発展はネットワーク・インフラをどれだけハイバンドに取っておくかに左右されるということになる。
IoT、ビッグデータ、AIの3つのキーワードは社会の変革を可能にし、大きな社会価値をもたらしている。IoTは原則としてデータ収集系の役割を果たし、データの解析はAIが担うが、AIはビッグデータが無ければ成り立たない。これまで取れなかった膨大なビッグデータという領域で、AIが社会に変化を与えているのであり、これは「データの時代」であると同時に「情報爆発の時代」といえる。「データの時代」にあって社会価値を見出すためには、学問そのものがもはや単純なモデリング、通常のフォーミュラでは表せない時代に入ってきており、それらを超えたデータ基盤の作成が必須であり、それはまさに大きな世界観の変革であるといえる。そこでは、データそのものが一番大きな価値となり、マシンが生成するデータに権利が及ばない現行の法体制から脱却して、データという新たな情報財をどうやって国家として守るのかが重要となってくる。もはや通信インフラについては研究開発に大きな投資が回ることは少なくなり、コンピュータの処理速度も頭打ちの状態である。次に投資の重点に置かれるのはコンテンツであり、コンテンツを生み出す基となるのがビッグデータである。
社会的価値にフォーカスしたビッグデータの活用事例としては、センサーデータに基づく河川のモニタリングと気象情報によるダムの管理(洪水/治水)、車のセンサー情報と外界の環境情報による交通事故削減への取り組み、医療のレセプト情報に基づく健康管理についての分析など、今までできなかった世界をどんどん拓くことが可能となってきている。一方でAIは、画像認識やアルファ碁の勝利に見られるように、対象がクローズされた世界では多くの実績を上げてきているが、チャットボットの事件やテスラの死亡事故に見られるようにオープンワールドに対する取り組みはまだまだこれからであり、クローズドワールドとの間には大きな壁が立ちはだかっている。
現在はすでに「データの時代」になったことが実感されるが、「データの時代」の次には、「Observable by design」、つまり「目的によって識別できる良いデータをどうやって作るか」ということが重要であり、それが次に世界を変革する一番重要な鍵であることから、我々は社会価値を最大限に引き出すべく、それに取り組んで行く必要がある。

「人間社会との調和のとれた新たなセンシングとアクチュエーション」

萩田 紀博  株式会社国際電気通信基礎技術研究所 フェロー
      知能ロボティクス研究所 所長

 人と機械の調和は、最近のロボットや人工知能の技術革新で注目されているが、古くから社会実装の課題であり、既に90年代初頭立石科学技術振興財団では「人と機械の調和を促進する研究」が基本理念として取り上げられていた。人が機械を制御する制御工学は受け入れられても、機械が人を制御するといったものは受け入れ難い。私はロボティクスにおけるセンシングとアクチュエーションとインテリジェントコントロールを駆使して、10数年前からロボットの実証実験を通じて人と機械の調和と協働に取り組んできた。 ATRにおいて先駆的に人と調和的協働が可能なロボットを開発し、2003年からコミュニケーション機能を持ったロボット(Rovovie)を開発し、自律型ロボット開発においてはロボカップに5年連続優勝した。その間センシング能力は飛躍的に向上し、日本ではロボット単体での高機能化を実現してロボットを発売するに至ったが、米国ではロボカップの発想をビジネスに応用してネットワークロボットを開発し、米国大手企業の配送センターの自動化により、物流支援のビジネス化に成功している。
 ネットワークロボットは、IEEEにて委員会が発足し、ワークショップや各種シンポジウムの開催など国際的な広がりを見せているが、IoT、ビッグデータ、AIを含む革新的な技術の進化により、ネットワークロボット技術も進展し、ユビキタスネットワークロボットからスマートネットワークロボットへと進化してきている。一方、社会常識(社会的知能)を持ったロボットサービスを実現するためには、環境理解についての研究が必要であり、その良し悪しはユーザーのみではなく、他人(ノンユーザー)の評価尺度も考慮した開発を進めることが必要である。
スマートネットワークロボットは、これまでの単地点、単独作動、個別情報から、多地点、協調連携作動、情報共有、遠隔操作に加え、脳や生体情報に基づくヒューマンインターフェースの機能向上やビッグデータ、AIの活用により、人と機械の調和的協働を実現する格段に機能向上された高度なサービスに進化し、実現すれば多くの社会課題を解決することが出来るようになる。ビジネス化を加速するために、2014年7月にフォーラム(i-RooBO Network Forum)を立ち上げたが、やりたい人(I am eager to do)が集まる場にしていかないといけないと考えている。
今後、社会実装には、ELSI(倫理的・法的・社会的課題)を配慮した学術的研究・分析・合意形成が不可欠であり、けいはんなに立地する企業・機関の皆さまと是非力を合わせて取り組んで行きたい。

[インタラクティブ・セッション]

CPSにおける社会価値の創出、ロボットなどの利用における倫理的問題、データの信頼性、法制度の整備、著作権問題に加え、「AIは自意識を持つか」など、色々な側面から活発な意見交換が行われました

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