• 高等研報告書
  • 国際高等研究所てどんなところ?

第6回 けいはんな「エジソンの会」

開催概要

AIがもたらす産業構造の変化と自動運転技術

講師
  • 関 啓一郎
    総務省近畿総合通信局長
  • 谷口 恒
    株式会社ZMP代表取締役社長
開催日時 2017年1月25日(水)13:30~19:30
開催場所 公益財団法人 国際高等研究所 レクチャーホール
概要 IoTやAI技術が駆動するインダストリー4.0によって変化する産業構造について、センサー,AI技術を駆使し総合ロボット会社として事業展開されている事例も併せて、行政およびビジネスの視点から俯瞰的かつ具体的に切り込み、AIの具体的な応用のみならず、データ駆動型へと移行するビジネス・エコシステムの転換について理解を深める。
配布資料
講師:関 啓一郎 「AIやIoTが駆動するIndustry4.0とそれによる産業構造の変化」
PDF [4 MB]
講師:谷口 恒 「自動運転技術の応用」
PDF [4 MB]

タイムテーブル

13:30〜14:50
インダストリー4.0と産業構造の変化  ~業務プロセスのIoT化が生み出す破壊力~関 啓一郎 総務省近畿総合通信局長
15:00〜16:20
自動運転技術の応用谷口 恒 株式会社ZMP代表取締役社長
16:30〜17:50
インタラクティブ・セッション
18:00〜19:30
懇親会

当日の様子

第6回会合では関局長より、AIやIoTが産業構造を大きく変化させ、グローバルでの競争構造をも大きく変化させていくであろうという重要な示唆をいただきました。日本としても官民を挙げて産業構造の変化への対応に取り組んでいくため、新たな変化のうねりを逸早く理解し、協働して前進することが喫緊の課題であるとのお話しをいただきました。 
また、ロボット技術から自動運転技術に特化するなかで、新たな装置の開発販売のみならず、サービス化の途まで開拓されている谷口社長からは、より具体的なビジネス展開の方向性をお聞かせいただいたことで、参加者の方々にはAIやIoTによる産業構造の変化と、それらを活用した実際のビジネス展開の両面から、来るべき変化の方向性と、その姿を具体的にご理解頂きました。

インダストリー4.0とそれによる産業構造の変化

関 啓一郎 総務省近畿総合通信局長

 情報通信革命は、人間の知的処理機能(脳、神経、五感)の機械化を遂げたものであるとも言え、さまざまな用途に適応可能な、まさに汎用技術であり、情報通信がもたらす変化の大きさは過去の産業革命に匹敵するものである。それらはモノの生産やサービスの提供においても、現実空間とサイバー空間をIoTにより接続し、ビッグデータをAIで解析することで一体化を図る「サイバーフィジカルシステム」(CPS)により接続されることで、新たな付加価値を生み出すとともに、これまでの産業構造を大きく変革していくインパクトを持っている。
 欧米においては既にIoTを中心とした科学技術・産業振興戦略を打ち出しており、特にドイツではインダストリー4.0を掲げ、「製品+ネット」から「部品+ネット」というミクロ方向と、業務プロセス全域に亘るマクロ方向の両方向への深化アプローチを進めている。そして、これらはイノベーションをさらに加速するために、自社で手掛けるクローズ領域と他者に委ねるオープン領域を分割することで、自社に有利な国際的水平分業体制を構築していくという新たな戦略をもたらしており、これによって新興国での旺盛な需要に対応し、世界中の知と労働力を使い、主導権と競争力を維持しようとしている。それは日本が得意とする人手と暗黙知に頼っていた現場の英知(ノウハウ、匠の技、品質管理など)がICTにより形式知化されることにより、これまで我々が蓄積してきた競争力の源泉が破壊されることにもつながる。
 日本も「日本再興戦略2016」において、IoT、ビッグデータ、AI、ロボット・センサーの技術を活用し、新たな有望成長市場の創出を目的にとした未来投資会議のもと、省庁連携で政策を実施している。科学技術立国を標榜する日本が、産業構造の変化に対応し、情報通信技術を核とする指数関数的な進化をキャッチアップし、さらに発展していくためには、IoT推進のための環境整備(データ利用のルール作り、プライバシー保護、サイバーセキュリティ、IoTのためのネットワーク、責任分界点に関するルール作りなど)を行っていくとともに、企業経営者の理解を深めながら産官学連携による、世界に先駆けた「超スマート社会」(Society 5.0)の実現に向けて力を結集していくことが肝要である。

自動運転技術の応用

谷口 恒 株式会社ZMP代表取締役社長

 大学卒業後、エンジニア、商社の営業、インターネット関連会社の経営に携わったが、インターネットの次に時代を変えるのはロボット技術であると確信し、2001年にロボット開発会社を設立した。その後日本初の家庭用二足歩行ロボットの商品化を実現したが、傾き制御が難しく最終的にはその販売を中止したこともあった。その後、2007年に車輪移動の音楽ロボット「miuro」を発売し、画像解析、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping自律位置推定と環境地図作成)機能を搭載することで、家庭内での移動ルートの記憶と自動走行を実現させた。しかしながら、その時点で家庭用ロボットはあまり普及せず、リーマンショックで経営が悪化した時期に、「自分が作りたいロボットを作る」から「人や社会に役立つものを作りたい」へと考えを改め、ロボットで培われた技術を活用し、ロボットの目の機能と頭脳機能を合わせた自律移動技術をコア技術として搭載したロボカーの開発を始めた。2008年からADAS(Advanced Driving Assistant System先進運転支援システム)による自動運転R&D用プラットフォームを開発し、自動車メーカー、大学、各種機関の研究用に販売した。2013年に故郷の兵庫県に帰省した際、過疎化で路線バスの廃止、タクシー会社の廃業で交通手段のない地域の状況を目の当たりにし、「交通弱者を交通楽者にする」を目的に無人運転のタクシーサービス「ロボタク構想」を掲げた。内閣府「近未来技術実証特区」自動運転検討会への参加を機に、DeNAと共同で「ロボットタクシー」を設立し、2020年のオリンピックでの実走行をめざし、神奈川県、小石川、お台場で現在実証実験を実施しており、その結果、当社は実証時間、走行距離ともに日本一の実績を誇っている。
 一方、無人運転技術を自律飛行のできるドローンに応用し、橋梁等インフラ点検、建築時の工事管理に活用展開している。特に土量測量では90ヘクタールを3日間で測量することが可能となり、業界から高い評価を頂いている。また、自社製以外のドローンに対しても画像解析と診断サービスの提供を予定している。
 物流部門では、宅配業者の人手による台車移動の過酷な状況を見て、追従型のロボット台車「CarriRo」を開発した。一人で複数台の台車を使えるので、労働も楽になったと評判である。さらに、SLAM機能を搭載することで、無人搬送、商品にRFIDを付けて在庫データを把握し、作業状況の可視化を図る機能を追加したサービス事業を検討しているところである。ロボットは自律的に情報収集する究極のIoT機器であり、得られたデータを活用することにより、今後も新しいサービスを創出していけるものと確信している。
最後に、「現状維持は後退につながる」というメッセージをお伝えしておきたい。
テクノロジーは刻々と変化し、政治、経済を含めた環境もどんどん変化していく。現状を維持しているつもりでも必ず後退している。これは変化の速い時代だからこそ大きな意味を持つ言葉であり、これは自分にとっての戒めであり教訓でもある。これからもこの言葉を胸に、イノベーションを起こし社会に貢献して行きたい。イノベーションはコラボレーションでもあることから、ここに集っておられる皆さんとも是非一緒に革新を紡いでいきたい。

[インタラクティブ・セッション]

産業構造の変化に伴い重要となる人材育成や教育の在り方、データサイエンティストの養成、日本の強みを活かすための方策、今後のビジネスモデルの動向などについて活発な意見交換が行われました。

その後の懇親会では、関局長、谷口社長と参加頂いた方々との名刺交換が行われ、積極的な意見交換の場となりました。

最新に戻る