第4回 けいはんな「エジソンの会」
開催概要
産総研におけるAIへの取り組み及び自然言語認識の現状と課題を理解する
講師 |
|
---|---|
開催日時 | 2016年10月3日(月)13:30~19:30 |
開催場所 | 公益財団法人 国際高等研究所 レクチャーホール |
概要 | 日本の人工知能の技術開発の現状と課題を理解する。また海外に大きく後れを取る日本の取るべき姿や対応について認識を深める。自然言語認識については、難易度の高さやその限られた応用分野での利用の現状を認識し、自然言語理解には言語以外の現場の状況が必要であることについて理解して頂く。また人工知能が社会に与える影響を考え、倫理的、社会科学的な見地からのアプローチが重要であることについて理解を深める。 |
配布資料 |
|
当日の様子
けいはんな「エジソンの会」第4回会合では、自然言語認識は非常に範囲が広く、真っ向から取り組むには我々のこれまで持っている情報からすると非常に難易度が高く、その応用については限られた分野で活用するほうが向いており、自然言語理解には言語以外の現場の状況が必要であることについて理解して頂きました。また、海外では企業や機関を跨いだ横断的なAIコンソーシアムが設立されており、AIの発展に大きな効果を上げているので、海外に大きく後れを取る日本は横断的な活動が必須であり、分野横断的且つ研究機関や企業が連携できるコンソーシアムを立ち上げる必要があること、また、人工知能が人間を超える知能をめざしている側面があるので、倫理的、社会科学的な見地からのアプローチが重要であることについて認識を新たにして頂きました。
講演①「実世界に埋め込まれる人工知能」- AIRCの紹介 -
辻井潤一 産業技術総合研究所人工知能研究センター センター長
日本の人工知能の技術開発の現状としては、米国の巨大IT産業に大きく出遅れている。日本はデータ・研究者・技術がそれぞれバラバラに活動しているため、それらを再構築することで求心力を高めていかなければならない。また、人工知能は多様な技術と多様な適用範囲があるので、それらが個々に別々な対応をしていては遅れを取り戻せないため、AIRCではそれらをAIプラットフォーム標準データ先進モジュールを介して対応することで、起業や技術移転を容易に実現できるように考えている。人工知能の進むべき道としては、一つにはIBMのワトソンやAlphaGOに代表されるような人間に迫る人工知能、一方ではビックデータ、データサイエンスからのAI つまり人間を超える人工知能があり、その二つの人工知能を統合して、人間との協働により問題解決を図っていく。
講演②「『行間を読む』言語理解のための知識と推論」
乾健太郎 東北大学大学院情報科学研究科 教授
関根 聡 ニューヨーク大学 准教授
我々は本年発足した革新知能統合研究センター(AIPセンター)の自然言語理解グループに属している。自然言語記述文の場合、記述のロジックを認識できると複数文章の集約、知識の更新、反論の生成、論述の良さの評価などが実現できるため、記述のロジックである「行間を読む」言語理解のための推論・知識・出口の順に説明する。先ず推論については、仮説推論と分散表現及びこれらに機械学習を活用する方法をとっている。仮説推論を200万のWEBページから15万のスクリプト知識を抽出し、それらをつなぎ合わせるシステマティックな仕組みとしての知識の意味合いの理解に一階述語論理を使用せず、評価関数を機械学習によりその推論の高速化を図り、その上に言い換え知識に出現文脈の似ている語は意味も似ていることを利用して、その出現頻度の行列を作り、機械学習をし、精度を向上させた。
一方ベースとなる知識については新たな属性定義を作り、色々な辞書を複合的にリンクさせて作り、それを機械学習させて精度を高め知識を持続成長するものを作る。それらを通して言わんとする内容を解釈できるので、出口としては、論述問題の解答の解析、論説文・英作文の自動添削・記述試験問題の採点支援及び「共想法」会話の評価支援等の記述問題の添削システムの実現を目指している。
[インタラクティブ・セッション]
自然言語認識がAIを進めるうえでの本丸ではあるが非常に難しい課題があり、知識と情報をどう区別するか、出口をどう想定するか、AI研究の中での言語の位置づけをどう組み込んでいくか等について、ご講演いただいた講師と会場参加者との活発な意見交換がされました。また今後AIの活用を推進していくためには研究者とユーザー間をコーディネートしていく役割が非常に重要であり、講師の方々から「エジソンの会」での分野横断的な集まりと共同研究への期待と励ましの言葉を頂きました。