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第5回 けいはんな「エジソンの会」

開催概要

AI先進企業での具体的な活用と今後の展開に対する理解を深める

講師
  • 鈴木 清幸
    株式会社アドバンスト・メディア代表取締役会長兼社長
  • 澤 博史、他
    データセクション株式会社 代表取締役社長
  • 向井 永浩、他
    株式会社 Nextremer CEO
  • 武田 秀樹
    株式会社 FRONTEO 取締役最高技術責任者 行動情報科学研究所 所長
  • 丸山 宏
    株式会社 Preferred Networks 最高戦略責任者
開催日時 2016年11月2日(水)13:30~19:30
開催場所 公益財団法人 国際高等研究所 レクチャーホール
概要 AI対話テクノロジー、ソーシャルメディア分析、風評リスク対策、AI画像解析、深層学習・機械学習、自然言語処理、音声認識、行動情報データ解析など、AIを駆使した先進的なソリューションを展開している企業に焦点を絞り、AIの普及に向けた経営戦略、技術的なハイライトの解説、そしてデモンストレーションを通して、AIの具体的な活用と展開に対する理解を深める。
配布資料
講師:鈴木 清幸 「未来のコミュニケーション ~Augmented Intelligence~」
PDF [5 MB]
講師:武田 秀樹 「FRONTEOの人工知能 KIBIT(キビット)のご紹介」
PDF [2 MB]

タイムテーブル

13:30〜15:10
講演(20分/社)株式会社アドバンスト・メディア
データセクション株式会社
株式会社Nextremer
株式会社FRONTEO
株式会社Preferred Network
15:20〜16:35
個別ブースでの技術紹介
16:40〜17:50
インタラクティブ・セッション
18:00〜19:30
懇親会

当日の様子

けいはんな「エジソンの会」第5回会合では、AIを駆使した先進的なソリューションを展開されている代表的な5社の企業に焦点を絞りご登壇頂きました。各社は、AI対話テクノロジー、ソーシャルメディア分析、風評リスク対策、AI 画像解析、深層学習・機械学習、自然言語処理、音声認識、行動情報データ解析など、これまでに類を見ないAI活用で業界をリードしておられる新進気鋭の企業の方々です。
各社のトップマネジメントによるAIの普及に向けた経営戦略、技術的なハイライトの解説、そして個別ブースに移動しての具体的なデモンストレーションの実施と参加者とのQ&Aを積極的に行って頂き、参加者の方々には AIの具体的な活用と展開に対するご理解を深めて頂きました。

鈴木 清幸 株式会社アドバンスト・メディア 代表取締役会長兼社長

当社は1997年に創業した。音声認識を通して「未来のコミュニケーション」を図ってきた。人工知能(AI)とはAugmented Intelligenceと捉えている。私たちのコア技術であるAmiVoice(音声認識エンジン)は深層学習を通じてエンジンのコア技術革新を進めることで、データ蓄積と教師学習や教師なし学習を通して多数の実用エンジンへと飛躍的に向上し、自己進化を遂げてきた。今後AIとHI(Human Interface)が結びつくHCI(Human Communication Integration)が実現され、社会はボイスコミュニーケーションが当たり前の時代となるだろう。HCIの実現に向け、音声認識をCLOUD化し入力に最適なEdge Deviceを活用して、医療現場の入力作業の効率化を推進している。その他のHCIの具体的な例としては、AmiVoiceのエージェントを活用しコールセンター業務の負荷軽減を行っている。1次受付で定型業務においてはAmiVoiceエンジンを活用して自動応答し、個人名、住所等の受付内容をコミュニケーターが確認する。別途苦情や相談業務等についてはコミュニケーターが通話を文字化するとスーパーバイザーに同時表示され、スーパーバイザーからの適確な助けやコミュニケーターの人材育成にも利用できるものとしている。当社のAmiAgentをロボットや家電に搭載することで、「いやし」「おもてなし」「おたすけ」が重要なキーワードとなる未来社会(高齢者社会)に貢献していきたい。

澤 博史 データセクション株式会社 代表取締役社長
今井 真宏 データセクション株式会社 知能研究開発部長

当社は2000年に創業した。深層学習技術を活用したビジネスを展開しており「株価変動予測システム」ではファンドの効率運用を実現し、「不適切画像フィルタリングサービス」では、1日当たり100万画像の機械学習とAI論文の技術活用を通して98%の精度を実現し、業界では世界一と自負している。画像認識技術での利用シーン発掘サービスとしては、SNSの画像からの発見リサーチサービスを行っている。また、単眼カメラ(車載、防犯)による汎用画像認識エンジン、医療データの認識エンジン、介護対象者の顔の様子を見て判断や異常発見ができるロボット等の開発を手掛けている。
今後の技術展開としては、動画情報のみから移動の軌跡を求めることにより、ドローン・アクションカメラへの応用(カメラの行動ベクトル推定)、深度推定(カメラと物体との距離推定)、物体追跡(同一物体を検出してトラッキング)等を実現していくことが挙げられる。多くの技術開発を行っているが、企業として研究開発した技術を実利用するためには、如何に開発サイドとビジネスのベクトルを合わせるかが重要であり、当社はそのベクトルのブレーキ要素を出来るだけ排除して、「徹底した課題解決」と「大きな目標」の両立を図る組織構築を行ってきた。また、企業や大学などの研究機関との連携を図り研究開発を促進させることで、世界規模へと取り組みを広げていく活動を進めている。

向井 永浩 株式会社Nextremer CEO
古川 朋裕 株式会社Nextremer CEO
壹岐 太一 株式会社Nextremer CEO

当社は2012年に創業した。事業内容としては人工知能対話エンジンの開発を行っている。対話エンジンはメインが「ルールベース」で、AI的アプローチは全文検索とAI(Neural Network)ベースで行っている。音声対話インターフェースの例として、スマホでのチャットボット、高知銀行で採用されている「頭取くんと秘書子ちゃん」等が挙げられる。特に高知銀行では人工知能と人のサポートの協業を実現している。
技術面では、独自開発の対話プラットフォーム(A.I.Galleria)への取り組み として対話相手の意図解析・シナリオベース対話・画像による個人の認識 により、人の能力をスケールアップするシステムを目指している。また、機械学習による個人の「その人らしさ」を活かした対話に取り組んでいる。構造化によって単純な情報の抽出は可能だが、その抽出をもとにして「その人らしさ」を生成することは難しい上に、抽出した「らしさ」を活かすためには機械が意味を十分理解して文を生成する必要がある。そのために単なる単語/文字の出現確率の学習から意味理解への進化を目指している。
その一環として、自然言語処理システムに想像力を与える試みを行っている。簡単な意味のある文章生成にはある程度対応は可能であるが、小説のような複雑な文章の生成は非常に難しい。大きな課題としては、普通の文章は背景知識が省略されているためニューラルネットワークの学習ではデータにならないので、背景知識をオントロジーなどでカバーしながら融合させていくことを目指している。

武田 秀樹 株式会社FRONTEO 取締役最高技術責任者 行動情報科学研究所 所長

当社は2003年に創業した。AIを導入するためには、一般的に数千万~数億円規模の導入コストが見積もられ、実装期間も深層学習もそれ自体を専門家が行うため、通常のシステム実装と同等か、それ以上の時間がかかる。
当社は人工知能KIBITを活用したデータ解析事業を行っており、特長としては、テキストに特化し、少量の学習で解析が可能なことである。少量の教師データと処理に必要な設備負担が僅かで済むため、低コストで早期の導入を図ることが出来、実用化しやすい。KIBITを活用して3つの分野(ヘルスケア・ビジネスインテリジェンス・デジタルマーケティング)を柱にした情報解析事業の世界ナンバー1企業を目指している。
導入事例としては、ビジネスインテリジェント分野においてレポート作成に必要なニュースの絞り込み作業を約50%効率化して迅速な経営判断をバックアップしたり、ヘルスケア分野では症状悪化の予兆を捉えて障害者の就労支援をサポートするシステムを提供している。
これからのKIBITは、BtoCでは決断を豊かにするための理由の提示、BtoBでは何が分かったかだけではなく、そこからどうするか、解決策の提示を実現できるよう取り組んで行く。

丸山 宏 株式会社Preferred Networks 最高戦略責任者

当社は2014年に創業した。人工知能はこれまでにブームというものが2回あり、現在が第3次ブームと言われている。各ブームで使われた技術から、常に新しい手法が誕生している。今の人工知能に使われている機械学習は大量の訓練データと膨大な計算機パワーが得られるようになったことから過去の延長上にあるときはうまく働くが、汎用的な人工知能には技術的課題が多く実現は当分出来ないと考える。しかし機械学習を統計的に活用することでモデルを想定することは可能である。現在のシステム設計では、システム完成後に問題が判明したときに修正に時間、コストがかかるのを避けるため、要件定義に時間やコストをかけている。対象システムが不明でも、統計的な機械学習を活用し、入力情報と望むべき出力を定義し、AIにおけるシステム開発においては、トレーニングデータを準備し、シュミレーションの世界で結果をフィードバックし、強化学習をすることにより、システムの事後要件定義が可能となる。その後、実データで実行することにより不具合があれば再度シュミレーションをして修正をするという新しいシステムづくりの方法が実用化出来る。当社はこのような機械学習等のパッケージソフトをいち早く提供するというビジネスを実施している。
演繹的なシステム設計で100%保証が出来ないのと同様に、統計的な機械学習の手法でも訓練データに含まれないデータなしの領域や、訓練データサンプリング時にバイアスがあるので100%保証は出来るというものではない。人工知能,Iotの普及には、そのシステムの特性を理解した上での社会的な受容が必要と考える。

[インタラクティブ・セッション]

世界へ羽ばたくための切り口は? 今後ますますAIの活用を進めるためのブレイクスルーは? AIは今後人間的なクリエイティビティを実現することが出来るか?AI実装について品質、価値の評価をどのように考えていくべきか? 機械学習で重要なデータについて、正しい・悪意がある をどう判断していくことが出来るか? 等ご講演いただいた講師と会場参加者との活発な意見交換がなされました。また、AIの実装については、現状においては技術面、レギュレーション等諸々の面で問題はあるが、未完成であるが故に将来が楽しみであり、AIの実装を広げるためには今後益々積極的に共同研究・共同開発等を行い、各種機関との連携を増やしていくことが重要であるということが認識されました。講師の方々からも、「エジソンの会」に期待が寄せられ、今回の会合を1つの機会として、オープンイノベーションを推進するために、けいはんな学研都市の多くの機関企業との連携を図っていきたいとの意見が出されました。

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