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第82回 けいはんな「ゲーテの会」

開催概要

「新しい文明」の萌芽を探る日本と世界の歴史の転換点で、転轍機を動かした「先覚者」の事跡をたどる 

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科学・技術

「応用をやるなら基礎をやれ」化学者たちの京都学派 -福井謙一をはじめとする喜多源逸の後継者たち-

【講演者】
古川 安総合研究大学院大学客員研究員, 東京大学非常勤講師
【講演者経歴】
科学史家。静岡県生まれ, 神奈川県育ち。1971年東京工業大学卒業。米国オクラホマ大学大学院博士課程修了。Ph.D.(科学史)。帝人株式会社を経て, 東京電機大学教授, 日本大学教授, 化学史学会会長を歴任。現在, 総合研究大学院大学客員研究員, 東京大学非常勤講師。主著に『科学の社会史—ルネサンスから20世紀まで』(ちくま学芸文庫), Inventing Polymer Science (University of Pennsylvania Press), 『化学者たちの京都学派—喜多源逸と日本の化学』(京都大学学術出版会)がある。2001年日本産業技術史学会賞, 2004年化学史学会学術賞, 2018年英国化学史学会モリス賞受賞。



当研究所では新型コロナウィルス感染防止のため、感染予防対策を実施したうえで本イベントを開催いたします。
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【講演要旨】
戦前から戦中にかけて京都大学工学部工業化学科教授の喜多源逸は, 「化学の京都学派」と呼ばれる学派をつくり, 独自の学風を植え付けた。その門下からは, 桜田一郎, 兒玉信次郎, 古川淳二, 小田良平から, ノーベル化学賞受賞者の福井謙一, 野依良治, 吉野彰らへと連なる才気あふれる化学者の一群が輩出した。理学部ではなく工学部でありながら「応用をやるなら基礎をやれ」という喜多の理念のもと, 「化学の京都学派」は高分子化学, 有機合成化学, 量子化学など関連基礎分野の開拓とその研究者養成に顕著な役割を果たした。本講演では, とくに創始者の喜多源逸(1883-1952)とその弟子で日本初のノーベル化学賞受賞者の福井謙一(1918-1998)の研究者・教育者としての生き方, 考え方に注目することで京都学派の学風を考え, 科学技術における創造性や人材育成のあり方を考えるヒントを探って頂きたい。
開催日時
2020年10月2日(金)
開催場所
公益財団法人国際高等研究所
住所
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
参加費
2,000円(お釣りの無いようご協力ください)
定員
25名(先着順・定員になり次第締め切り)
締切
2020年10月1日(木)必着

当日の様子

2020(令和2)年10月2日(金)18時から国際高等研究所において、第82回満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」が開催されました。テーマは『「応用をやるなら基礎をやれ」化学者たちの京都学派ー福井謙一をはじめとする喜多源逸の後継者たちー』。講師は、古川安先生(総合研究大学院大学客員研究員・東京大学非常勤講師)。

「化学者たちの京都学派」の源は喜多源逸(1883∼1952)。彼は、応用化学に偏した東京大学の化学系学科を嫌って、基礎化学推進の可能性を求めて京都大学の化学系学科に転籍。「応用をやるなら基礎をやれ」。これが彼の信念であった。そこから、桜田一郎(ビニロン発明者)をはじめとする著名な理論化学の徒が多く輩出された。特筆すべきは、その門下から福井謙一、野依良治、吉野彰と、ノーベル化学賞の受賞者が相次いだことである。

福井謙一(1918~1998)は、「数学が好きなら化学をやれ」との喜多源逸の言葉に心を揺さぶられ、喜多のいる京都大学工学部化学系学科に進む。そこで基礎科学として当時最先端の量子力学を学び取り、それを化学と結合させ、理論化学の新たな地平「量子化学」分野を拓く。その学問的成果の一つが「フロンティア軌道理論」。それにより有機化学反応の機序が解明されることとなり、ノーベル化学賞の栄に浴した。

ノーベル化学賞受章者 福井謙一の誕生は、彼の非凡な才能にあったことは確かだが、京都大学工学部には喜多の意向で設置された理論物理学講座があり、あるいは理学部と工学部の施設が近接し、理論と応用の異分野の人的交流の機会に恵まれていたことなどが与っている。まさに「コンタクトゾーン」、異質結合の環境に身を置けたことがその主因となった。彼の言葉に「ベクトルの異なる分野の学び、「逆方向の学び」が創造力の源泉だ」がある。これは、彼自身の学びの実体験そのものであった。

質疑応答では、東京大学に代表される直接的効用を旨とする関東の知的空間と、京都大学に代表される基礎理論を旨とする関西のそれとの違い、個人の才能の違いを超えて学問体系に反映される地域の自然環境などの風土の重要性、更に、それに反して展開する近年における学術研究の大型化、あるいはグローバル化の行く末、また、時間軸に沿って科学の発展を眺めることにより開けてくる新たに学術界の風景など、科学・技術研究の在り様を巡って興味深い質疑が交わされました。(文責:国際高等研究所)

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