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第84回 けいはんな「ゲーテの会」

開催概要

「新しい文明」の萌芽を探る日本と世界の歴史の転換点で、転轍機を動かした「先覚者」の事跡をたどる 

84

思想・文学

仏教の核心に「霊性の自覚」を見出した「鈴木大拙」の思索。その世界性。

【講演者】
佐々木 閑花園大学文学部教授
【講演者経歴】
1956年福井県生まれ。京都大学工学部工業化学科および文学部哲学科卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学後,米国カリフォルニア大学バークレー校留学を経て現職。文学博士。専門はインド仏教学,仏教哲学,仏教僧団史。日本印度学仏教学会賞,鈴木学術財団特別賞受賞。著書に『インド仏教変移論』『科学するブッダ 犀の角たち』『日々是修行』『生物学者と仏教学者 七つの対論』(斎藤成也氏との共著)『仏教は宇宙をどう見たか』『真理の探究 ー仏教と宇宙物理学の対話ー』(大栗博司氏との共著)『ごまかさない仏教:仏・法・僧から問い直す』(宮崎哲弥氏との共著)『ネットカルマ』『大乗仏教 ブッダの教えはどこに向かうのか』。翻訳に鈴木大拙著『大乗仏教概論』(岩波文庫)等。


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【講演要旨】
鈴木大拙の仏教理解は、華厳経などの大乗経典の世界観に、独自の「霊性」という概念を導入することで成り立っている。この大拙の主張は、禅や浄土思想など多数の仏教を包括する汎用性を持っているため、さまざまな領域の人たちから承認され愛好されている。ただしそれは、「諸法無我」を説く釈迦の教えとだけは融和しない。霊性というある種の神秘的実在を想定する大拙の考えと、一切の不変実体を想定しない釈迦の思想とを比較した時、大拙の考えの特性と、その限界が見えてくる。今回は、釈迦の仏教を比較の物差しとすることで、大拙の主張の意味とその特性について語ります。
開催日時
2020年12月1日(火)
開催場所
公益財団法人国際高等研究所
住所
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
参加費
2,000円(お釣りの無いようご協力ください)
定員
25名(先着順・定員になり次第締め切り)
締切
2020年11月30日(月)必着

当日の様子

2020(令和2)年12月1日(火)18時から国際高等研究所において、満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」が開催されました。テーマは、『仏教の核心に「霊性の自覚」を見出した「鈴木大拙」の思索。その世界性』。講師は佐々木閑先生(花園大学文学部教授)。

釈迦の説いた仏教の真髄は、人は本性として自らの存在の永続性を望むが、因果の法則が貫徹する世界はそれを許さない。それ故に苦しみから逃れることができない。その苦しみから逃れる方法は、ただ一つ。永続性を望む自分自身を変えること、出家し僧侶となり、厳しい修行によってその望み自体を滅することであると言う。
つまり、「諸行無常」「諸法無我」の下では「一切皆苦」であり、安寧を得るためには、「涅槃寂滅」が唯一の道であると言う。

また、釈迦は、世界の外にこの世界を救済し、あるいは差配する大いなる存在を、あるいは身体から遊離した霊魂の存在を一切認めない。この世界は、種々の要素が集積することによって、その時その場で成り立っているものに過ぎず実体はない。その集積が表出した瞬間的な姿に過ぎない。世界の基体を認めない。それは科学的思考と相似形である。

釈迦の説いた仏教は、その後、中国を経て日本に伝来するが、その過程の中で、大きく変容する。現在、日本に広く根を下ろしているものは、『大乗起信論』を原典とする救済仏教としての大乗仏教である。
その典型例の一つが、鈴木大拙の説く「日本的霊性論」であり、世界の基体としての「霊性」認めるいわば「大拙大乗経」とでも言うべきものである。これは、「空」を唱える「般若思想」、経典を本体とする「法華思想」、極楽往生を欣求する「浄土系思想」、世界の中心に大日如来を置く「華厳思想」、秘事を旨とする「密教的世界観」などとも共振する変幻自在の思想である。これは特定の思想というより、言わば「フォーム」であり数式である。変数、例えば、「真如」「仏性」「浄土」「霊界」「いのち」などを代入することによって如何様にも変形していくもので、多様性を内包している。
また、そこには、出家による厳しい修行が不要であるばかりでなく、日常の生活そのものに修行の意義を認め、日々の生活の中でお経を上げ、念仏を唱えることによって救済されていくとする思想も入り込んでいる。釈迦の説いたいわゆるインド仏教とは真反対の日本仏教の姿が見られる。敢えて言えば、バラモン教への回帰現象さえ見て取れる。

質疑応答では、鈴木大拙が「日本的霊性」を提唱した時代背景とその影響(戦前・戦中・戦後)、宇宙大の科学的認識の到達点と宗教的認識の相同、宗教体験・信念の個別性と宗教学理の共有性などについて、興味深い意見交換がなされました。(文責:国際高等研究所)

  • 講師:佐々木先生
  • 講演の様子
  • 質疑応答の様子
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