磯部 洋明 先生
京都市立芸術大学准教授
量子論は様々な技術的応用のみならず、人間の世界認識に関わる哲学的な問いを投げかける魅力的な理論です。しかし市民懇談で議論するには中々難しいテーマでもあります。原子力や遺伝子編集技術など、多様な価値観を持つ市民の話し合いが大切な科学技術のテーマは多くあります。しかし現時点で量子論の技術的応用に大きな社会的対立が見られるわけではなく、その一方で科学的理解が曖昧なまま量子論の哲学的示唆だけを現実の社会問題の解決に結びつけて語ることは、下手をすると非科学的なものを科学の言葉で語る過ちに陥ります。量子論を語ることの魅力と危険。このことを「メタな視点」で話し合うことで、科学技術の高度化に伴う知のブラックボックス化といった、普遍的な問題について一緒に考えることができればと思います。
1977年神奈川県生まれ、主に岡山県育ち。京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士課程修了。京都大学宇宙総合学研究ユニット、同大学院総合生存学館等を経て2018年から京都市立芸術大学美術学部准教授。専門は宇宙物理学で特に太陽活動とその地球への影響の研究。宇宙人類学、宇宙倫理学、古文献を用いた天文学などの学際的研究や、科学コミュニケーション活動も行っている。平成21年度文部科学大臣表彰・若手科学者賞受賞。