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本シンポジウムは終了いたしました。
多数のご参加をいただきありがとうございました。

市民共同参画シンポジウム
―市民とともに考える先端科学技術の行方―

IIAS「哲学と先端科学」の対話シリーズⅠ

第1回テーマ 生命科学
技術を「哲学」する

国際高等研究所は設立から35年、「人類の未来と幸福のために、何を研究すべきかを研究する」ことを基本理念に、人類が直面する諸課題の予見と解決策の追究をすすめています。
「健康・長寿社会への対応」は現代社会の課題であり、その解決のために「生命科学/技術」の在り方が注目されています。「生命」を「科学」することの可能性と限界、「生命科学」自体の可能性と限界を明らかにするとともに、先端科学技術を日常の身近な問題に置き直し、「人間」を置き去りにした「技術文明」への批判的視座を得るなどによって、現在、大きな期待が寄せられている「ゲノム編集」などの「生命科学/技術」の本質的理解に迫ります。
  • 生命科学/技術の在り方は、東西の自然観・生命観の違いによって、特に「人為と自然」の理解によって、異なるのではないか。
  • 生命科学/技術の目的は、本来、「より良い生」を追求するものであるならば、人文科学的・社会科学的視野が不可欠ではないか。
  • 生命科学/技術の本質に迫るには、生物学的・物理学的・心理学的、かつ、主客を超えた多角的アプローチが不可欠ではないか。

討論への誘い

私達ヒトにとって最も身近でかつ最も難解な対象である「生命」は医療や生命科学のみならず、工学や情報科学等様々な分野の研究対象となってきています。改めてこの生命と向き合うことで私達人類が向かうべき未来へ志向する足がかりとなればと考えています。皆様方と議論をする中から一筋の光が見いだせるような会にできれば幸いです。
議論の様子
開催日時
2019(令和元)年
9月20日 (金)18:00〜
開催場所
国際高等研究所 コミュニティホール

木津川市木津川台9丁目3番地

アクセス
http://www.iias.or.jp/access
定 員
先着70名
参加費
2,000円(30歳以下の大学院生・学生は無料)、飲み物、茶菓等代含む

※主催者による記録・広報等のため、本イベントの写真撮影・録画・録音、オンライン配信、ソーシャルメディア配信等を行う場合がございますので、予めご了承ください。

PDFはこちら

このシンポジウムはみなさまの意見で討論がはじまります。
(事前ウェブアンケートは終了しました。ご協力いただき、ありがとうございました)

アンケート結果はこちら
  • お問合せ先:公益財団法人国際高等研究所市民共同参画シンポジウム事務局
  • tel:0774-73-4000
    e-mail: iias_cjpsymposium@iias.or.jp
  • 主催:公益財団法人国際高等研究所
  • 企画:満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」/けいはんな「エジソンの会」/集合知プラットフォームの構築プロジェクト
  • 後援:国立研究開発法人理化学研究所

登壇者紹介

佐伯 啓思 氏

佐伯 啓思 氏対談者

京都大学こころの未来研究センター
特任教授
京都大学名誉教授

共生文明学、現代文明論現代社会論、社会思想史が専門。現代社会を文明論的観点から捉え、政治、経済の分野を中心に広く評論活動をおこなっている。

鈴木 晶子 氏

鈴木 晶子 氏対談者

京都大学大学院教育学研究科教授
理化学研究所革新知能統合研究センター
人工知能倫理・社会チームリーダー

教育哲学、科学哲学、歴史人類学、死生学が専門。現在、新たなAI 技術文明の時代に生きる人間のための産官学連携による総合倫理プラットフォーム構築のプロジェクトに取り組んでいる。

藤原 広臨 氏

藤原 広臨 氏コメンテーター

京都大学大学院医学研究科講師
理化学研究所革新知能統合研究センター
客員研究員

精神科医であり一方では剣道愛好家でもある。こころや認知機能を生命科学的にさまざまな技術で調べると共に、生活の中で日本古来の伝統・思想を大事にしてバイオロジカルな考察と東洋的思想を背景とするわざの修練をブリッジングしていきたいと考えています。

金澤 洋隆 氏

金澤 洋隆 氏コメンテーター

国際高等研究所特任研究員
京都府立医科大学研究員
京都府立医科大学医学部医学科卒

専攻は生物物理学、政治哲学。人間の「生」に対して、数理的および哲学的アプローチという異なる二つの方向から考え、その交差点としての医療現場を見据えながら、「生」に大事なのは何か、全員で共有できる言葉を探りたいと思っています。

川竹 絢子 氏

川竹 絢子 氏コメンテーター

京都大学医学部医学科6年
WAKAZO 執行代表

専攻は心理学。2019年よりWAKAZO執行代表。全国4都市で、「2025 年万博若者会議」を開催する。生命科学の進歩による、生物としての「ヒト」に対するより深く包括的な理解の獲得や生命現象の新たな解明を、 いかに「人類の未来と幸福」につなげていくか、議論の中でふれることが できればと思っています。

駒井 章治 氏

駒井 章治 氏ファシリテーター

国際高等研究所客員研究員
理化学研究所未来戦略室
イノベーションデザイナー
奈良先端科学技術大学院大学先端科学研究科准教授

プログラム

18:00 開会
18:00~18:15 参加者事前アンケート結果の紹介
18:15~18:45 対談(佐伯啓思先生×鈴木晶子先生)
18:45~19:00 休憩(軽食・交流懇談、質問・意見提出)
19:00~20:15 ワールド・カフェ*形式によるグループ討議
グループ討議結果の紹介
20:15~20:40 対談(佐伯啓思先生×鈴木晶子先生)
まとめ(討議・対談を踏まえての問題提起)
20:40 閉会

*ワールド・カフェ形式とは
参加者が少人数に分かれたテーブルで自由に対話を行い、相互理解を深め、話し合いを発展させていく手法。

当日の様子

2019年9月20日(金)18時から国際高等研究所において、『IIAS「哲学と先端科学」の対話シリーズⅠ』の第1回シンポジウムが開催されました。テーマは、『生命科学/技術を「哲学」する』。メインゲストは、佐伯啓思先生(京都大学名誉教授)、鈴木晶子先生(京都大学大学院教育学研究科教授)。
本シンポジウムは、満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」と、けいはんな「エジソンの会」との共同特別企画によるもので、集合知プラットフォームの構築プロジェクトの協力を得、また理化学研究所の後援を得て開催されました。
また、本シンポジウムは、「市民共同参画」シンポジウムと銘打って、参加者から事前アンケートをいただき、その意見を踏まえての対談・討論により、生命(いのち)についての認識を深め、現代社会における焦眉の課題である「健康・長寿社会」への対応について考えていきました。

事前アンケートには、「生き様」関して、「自然と共に生きる」「利他に生きる」「死を意識して生きる」「今の一瞬を生きる」「地域社会に生きる」「いのちの遣り取り下に生きる」などが寄せられていました。 ファシリテーター:駒井章治先生(奈良先端科学技術大学院大学准教授)からその報告を受けた後、佐伯先生と鈴木先生に対談していただきました。
「科学技術」の発展に未来を託す空気が強い現代ではあるが、多くの人が「万物に生命がある」を肯定しているなど、アンケート結果を見る限り「自然観」など日本古来の価値観にさほどの変化は見られない。
人間理性に絶対的な信頼を置く西洋近代社会。自然や物を人間に有用な物理的手段とみなす西洋に対し、感性を重んじる日本人は、そこに精神性を見出し、崇拝、あるいは物さえも供養の対象とするなどの特徴が見られるとのお話しがありました。
それら対する各参加者から意見を7つのカテゴリー(科学技術・生と死・AI・精神性、医療・西洋と東洋・学び,適応)に分けて討議テーマを設定し、ワールドカフェ形式により意見交換。それを踏まえてコメンテーター:藤原広臨氏(京都大学医学研究科講師)、金澤洋隆氏(京都府立医科大学研究員)、川竹絢子氏(京都大学医学部学生)などからコメントをいただき、再び佐伯・鈴木両先生の総括対談により生命(いのち)の哲学的意味、彼我の差異などについて探求していただきました。
人間は自らの生死に立ち会うことはできず、その体験を語ることはできない。ひと(他人)によって語られるしかない。それによって人間の生死は語り継がれていく。生者は「ひと(他人)」と共に生きていくしかなく、その死は「ひと(生者)」と共に在るしかない。

科学技術は人間が創り出すものである限り、純粋中立では在り得ず、その人間の質に左右される。今や人間の質が問われている。人間とは何か。人間を対象化し、客観的物理的現象として解明することは可能であろうか。そうした西洋的アプローチは正鵠を得ているのであろうか。もう一つのアプローチが求められているのではないか。今、確かな人間観、自然観、死生観が希求されている、との総括的な発言がありました。
最後に、ファシリテーターから、こうした議論を積み重ねながら未来へ向かおうとの提起があり、短時間ながら濃厚な市民共同参画シンポジウムを終えました。本シンポジウムは、参加者にとって生命について深く考える機会となったようで、感動を覚えたなどの感想が寄せられました。

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