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満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」
「新たな文明」の萌芽、探究を!
けいはんなmeta鼎談
(哲学×科学×技術)

「けいはんな学研都市」は、その建設理念に照らし、
次代を拓く「新たな文明」の萌芽探求の好適地です。
2022年度、新たに、<「新たな文明」の萌芽、探求を!>プロジェクトを起こしました。
年度ごとに討論テーマを定めて、
異分野の学識者3名が、 哲学・科学・技術の切り口でテーマを深堀するクロス討議として、
「meta鼎談(哲学×科学×技術)」を開催してまいります。

第3回「生命論」

「生命(いのち)の輝き」を探る

~新型コロナウイルスから学ぶ~

宗教哲学×生命科学×文化人類学


西洋近代合理主義の経済的豊かさの下で、
私たちは「生と死」をどのように捉えてきたか。
真に豊かな未来を切り拓くために、
本来の「生命(いのち)の輝き」に目を向けるべきではないか。

日 時
2024年7月13日(土)14:00 〜 17:00
鼎談会場
国際高等研究所
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9-3
参加費
無料
定 員
会場40名、オンライン100名
(先着順・定員になり次第締め切り)
締 切
2024年7月11日(木)
申 込
Peatixからの参加申込のみとなります。事前申込の上、ご参加いただきますようお願いします。(会場での申込受付は行いません。)
手続き完了後に、当日の招待メール(ウェビナー(Zoom)の事前登録案内を含む)がPeatixから送られます。
なお、開催日時の24時間前に、ご登録いただいたメールアドレス宛に、リマインドメールをお送りします。
オンライン参加の方は、受付時間(13:30~14:00)内に、事前にご連絡するURLからアクセスしてください。
主 催
公益財団法人 国際高等研究所
<「新たな文明」の萌芽、探究を!>プロジェクト事務局
e-mail:goethe0828@iias.or.jp
問合せ先
申込・視聴など、Peatixの利用方法についてご質問などがございましたら、
下記のヘルプページをご確認いただくか、お問合せ窓口にご連絡ください。
Peatix ヘルプページ   https://help-attendee.peatix.com/ja-JP/support/home
Peatix お問い合わせ窓口 https://help-attendee.peatix.com/ja-JP/support/tickets/new
開催趣旨

 人類の歴史は多様性ゆえの発展と対立の歴史であった。技術革新と経済成長は地球規模での環境破壊、パンデミックや対立、そして大量破壊兵器をももたらした。生命科学が神の領域に迫り、情報やAIが社会を支配しつつあり、いま人類は「第5の波」という大きなうねりの中にいる。
 そのような中で、私たちは「生と死」をどのように捉えてきたか。経済成長第一主義の下で、自らの生存基盤に無頓着となり、知らず知らずのうちに「生と死」を視野の外に置いてきてはいないか。だが一方、昨今の気候危機がもたらす巨大自然災害、新型コロナウイルスによるパンデミックでは、否応なく「生と死」の問題に直面せざるを得ない。
 私たちは、今こそ華美な経済的豊かさの幻影から覚め、本来の「生命(いのち)の輝き」に目を向けるべきではないか。真に豊かな未来を切り拓くために、新型コロナウイルスの人類への本当のメッセージは何かを考えたい。「生命(いのち)」のダイナミズムに希望を託し、「生命(いのち)の輝き」とは何かを探りたい。

鼎談者
松山 大耕 先生 松山 大耕 先生【宗教哲学】

妙心寺退蔵院 副住職


欧米的な二元論の価値観に支配され、分断が進む世界。私たち人間ができることは限られる。今一度、私たちは自然や宇宙など、目に見えない偉大な存在や力に対し、謙虚に受け入れ、自らを省みる必要がある。


1978年京都市生まれ。2003年東京大学大学院農学生命科学研究科修了。埼玉県新座市・平林寺にて3年半の修行生活を送った後、2007年より退蔵院副住職。日本文化の発信・交流が高く評価され、2009年観光庁Visit Japan大使に任命される。2016年『日経ビジネス』誌の「次代を創る100人」に選出され、同年より「日米リーダーシッププログラム」フェローに就任。2018年より米・スタンフォード大客員講師。2019年文化庁長官表彰(文化庁)、重光賞(ボストン日本協会)受賞。現在、京都観光大使、京都市教育委員、(株)ブイキューブ社外取締役、(株)ESA 監査役。


【参考図書】
『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』(中川毅):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部、2017年

平野 俊夫 先生 平野 俊夫 先生【生命科学】

大阪大学 前総長、大阪国際がん治療財団 理事長


人類の歴史は多様性ゆえの発展と対立の歴史で、技術革新と経済成長第一主義は人類社会に正と負の結果をもたらした。新型コロナウイルスの人類への本当のメッセージは何かを考えたい。


大阪大学名誉教授、公益財団法人大阪国際がん治療財団理事長。1972年阪大医学部卒業、米国NIH留学、熊本大学助教授、阪大教授、生命機能研究科長、医学系研究科長・医学部長、第17代阪大総長などを歴任。日本学術会議会員、日本免疫学会会長、総合科学技術会議議員、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構理事長等を歴任。The Sandoz Prize for Immunology、藤原賞、The Crafoord Prize、日本国際賞、Clarivate Citation Laureates 2021 in Physiology or Medicine などを受賞。紫綬褒章、瑞宝大綬章を受章。インターロイキン6(IL-6)を発見し、作用機序と慢性炎症性疾患との関連性を解明。関節リウマチや重症の新型コロナウイルス感染症治療薬開発の道を開いた。

石井 美保 先生 石井 美保 先生【文化人類学】

京都大学 教授


人間は、危険であり豊饒な自然とどのように関わり、その力を受けとりつつ、いかに適切な距離を保てばよいのか。文化人類学の視点から、人間と自然の関係の可能性を考えていく。


文化人類学者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。宗教実践や環境運動をテーマにタンザニア、ガーナ、インドで調査を行う。主な著書に『環世界の人類学』(京都大学学術出版会、2017年)、『めぐりながれるものの人類学』(青土社、2019年)、『たまふりの人類学』(青土社、2022年)、『遠い声をさがして』(岩波書店、2022年)などがある。第14回日本学術振興会賞受賞(2017年)、第10回京都大学たちばな賞受賞(2018年)。現在、京都大学人文科学研究所教授。


【参考図書】
「センザンコウの警告」村上陽一郎編『コロナ後の世界を生きる —私たちの提言』岩波書店、pp.219-232、2020年
『環世界の人類学 —南インドにおける野生・近代・神霊祭祀』京都大学学術出版会、2017年
『めぐりながれるものの人類学』青土社、2019年
『たまふりの人類学』青土社、2022年

プログラム(予定)
13:30 ~ 14:00 受付
14:00 ~ 15:05 各鼎談者、冒頭発言
15:05 ~ 16:05 鼎談
16:05 ~ 16:45 鼎談(参加者との意見交換を含む)
16:45 ~ 17:00 鼎談者からのまとめ発言

2024.7.13(土)第3回「けいはんなmeta鼎談」開催概要

 2024年7月13日(土)14時から国際高等研究所コミュニティホールで第3回「けいはんなmeta鼎談」が開催されました。会場には30名近い人の参加。鼎談の模様はzoomで全国に配信され100名を超える方の視聴がありました。
 本「meta鼎談」は、2022年度に立ち上げられた〈「新たな文明」の萌芽、探求を!〉プロジェクトの一環として開催されたもので、「哲学」・「科学」・「技術」のクロス討議を通じて新たな知見を紡ぎ出そうとするもの。今回のテーマは「生命論」で、「生命(いのち)の輝きを探る〜新型コロナウイルスから学ぶ〜」をモチーフとして開催。鼎談者は、松山大耕氏(宗教哲学、妙心寺退蔵院副住職)、平野俊夫氏(生命科学、大阪大学名誉教授・前総長)、石井美保氏(文化人類学、京都大学人文科学研究所教授)。
 「meta鼎談」では、先ず、平野先生から感染症の人類史的意味についての解明があり、引き続いて各鼎談者から自己紹介を兼ねた課題意識について冒頭発言。取り上げられた論点は①新型コロナウイルス禍からの学び、②科学技術の発展と人間性(こころ)の行方、③感染症に逆照射される「共生社会」への希望。意見交換では、人間社会における野性への鋭利な眼差しの必要性、科学・技術の発展と自然破壊とのトレードオフ関係への洞察、また、人間社会の多様性の爆発的進展と対立の深まり、その矛盾とその克服などについて意見が交わされました。更に、参加予定者から予め寄せられた意見①パンデミックによる社会の変容、②「見えない偉大な力」の学び、③「破局」回避への道の探究に対する鼎談者からのコメントとともに、会場から、またzoomのQ&Aで寄せられた意見・質問に関して、鋭い意見表明が続きました。
 ①新型コロナウイルス感染症は、新興感染症の一つであり、人学の営みの拡大に伴う地球環境問題にその主因があるのではないか。こうした新興感染症は、これからも生じ得る。このグローバルな問題に対するには、多様性の壁を乗り越えて、人々は協力する必要がある。先ずは、人学は単一種であること、地球市民であることの自覚が必要ではないか。
 ②今回の新型コロナウイルス感染症では「生権力」概念を考える機会にもなった。グローバルサウスを構成する人々の生を軽んじる差別的意識が先進国にあるのではないか。
 ③永遠の生(不死)の希望(欲望)に正対する態度に、科学的立場と宗教的立場は対照的である。その根底にあるのは生命観の違い、他者(環境)との関係性の中に生命(いのち)を見るか否かの違いか。
 ④コロナ禍の下で、エッセンシャルワーカーへの関心の高まりが見られたが、そのケアラーをケアするシステムが欠けている。そうしたケアラーをケアすることに宗教界の出番があるのではないか。
 ⑤G20など先進国の中で多神教の国はインドと日本に限られる。一神教世界で続発する対立抗争を超えていく上で、多神教世界にある日本の果たすべき役割には大きいものがあるのではないか。
このような興味深い意見交換が次々と交わされ、参加者それぞれに充実感を覚えながら会場を後にしました。(文筆:国際高等研究所)

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