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高等研カンファレンス2012「Evolutionary Origins of Human mind」

開催報告

高等研カンファレンスは、国際的にも一流の研究者が最新の知見を持ち寄り、それをもとにした議論に多くの時間を充てていることが大きな特色で、著名な研究者を集めてこれまでの成果を解説してもらう従来の国際会議とは大きく異なる。 前年度のカンファレンスでは、心を担う器官としての脳を、神経科学の最前線から、その神経細胞や、さらにはそれを介する神経伝達物質や分子的機構といった要素に還元して理解しようと試みた。

それに対し、今回のカンファレンスでは、心の働きを神経基盤だけでなく、社会基盤、発達基盤、進化基盤の解明を目指し、特に日本固有の貢献として霊長類学やロボティクス(ロボット科学)の視点も取り入れ、非還元的なアプローチで分野横断的な広い視点から脳と心の問題を捉えるという目的を共有して、白熱した議論が展開された。こうした全体的アプローチは欧米にはない発想だが、欧米の脳研究者の中には、こうしたユニークな全体論の枠組みに多大な関心を寄せている人が決して少なくない。心の働きの包括的理解を目指した「心の起源」の先端研究は、今後学問として大きく発展していくことが期待され、単に研究成果の発信ということだけでなく、広く研究者、学界等に向かって、新たな学術研究が展開する可能性を示すことができた。 これを継続していくことにより、当研究所の主たる目的がより具現化され、昨年度に引き続き今回のカンファレンスが成功裏に終わったことは、今後の展開につながる有意義なものであった。

カンファレンスでは、招待講演のほか、公募により選抜された若手研究者によるポスター発表が行われた。当研究所のある関西文化学術研究都市内の研究機関や京都大学、大阪大学などからはもちろん、全国の大学や研究機関から40件の応募があり、28件が採択された。ポスター発表の時間は、2日目に2時間の枠を設けたが、ポスター発表の会場と夕食懇談会の会場を併設したため、夕食懇談会においても、引き続きポスターを前に若手研究者と著名な研究者らが意見交換や議論する姿が見られた。また、その中から最も優れたポスター発表として選ばれた若手研究者2名に、翌日30分の研究発表の時間が与えられた。このように、一流の研究者を前に自身の研究発表をする機会を得たことは若手研究者にとって大変貴重な体験であり、またそれに対する議論やアドバイスは、彼らの研究活動に大いに示唆を与えるものであり、今後の研究活動に大きな励みを与えることができたものと確信している。 さらに、本研究所が、国際的に一流の研究者を招へいし、そこで質の高い議論する「場」を提供できる機関として、招待講演者や参加者はいうまでもなく、それ以外のコミュニティにもその存在を知らしめることができた。