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第53回 けいはんな「ゲーテの会」

開催概要

日本の未来を拓くよすが(拠)を求めて- 時代の裂け目の中で、人々は何に希望を見出してきたか -

53

政治・経済

野口遵と新興コンツェルン

【講演者】
下谷 政弘住友史料館長、京都大学名誉教授
【講演者経歴】
1944年金沢市生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。京都大学経済学部教授、ハーバード大学招聘教授、福井県立大学学長などを経て、現在は住友史料館館長。著書に、『日本化学工業史論』(御茶の水書房)、『日本の系列と企業グループ』(有斐閣)、『持株会社解禁』(中公新書)、 『松下グループの歴史と構造』(有斐閣)、『持株会社の時代』(有斐閣)、『新興コンツェルンと財閥』(日本経済評論社)、『持株会社と日本経済』(岩波書店)、『経済学用語考』(日本経済評論社)、ほか。
【講演要旨】
野口遵(1873~1944)は日本窒素肥料の創業者、技術者、いわゆる「日窒コンツェルン」の総帥。かれは朝鮮興南の地に「東洋一」とも謳われた一大化学コンビナートを建設した事業人として知られる。その性格は天衣無縫、野口は言葉らしき言葉は遺さなかった。しかし、果敢な開拓者精神によって新技術を積極的に導入し、技術開発し、また巨大なスケールの水力発電ダムをいくつも遺した。あるいは、かれは自ら展開した新事業をつぎつぎと分社経営した点においても注目すべきで、世に「新興コンツェルン」と呼ばれる新たな組織方式(企業グループ)形成の先駆けともなった。
波乱の1930年代日本経済を舞台に活躍した野口遵の事蹟について追いかけながら考える。
開催日時
2017年11月8日(水 )18:00~ 20:30
開催場所
公益財団法人 国際高等研究所
参加費
2,000円(交流・懇談会費用を含む)
定員
40名(申し込みが定員を超えた場合は抽選)
締切
2017年11月5日(日)必着

当日の様子


今回のテーマは「野口遵と新興コンツェルン」。平成29年11月8日、第53回満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」が開催されました。講師は下谷政弘先生(住友史料館館長、京都大学名誉教授、元福井県立大学学長)

野口遵(のぐちしたがう)は、1908年、日本窒素肥料(現・チッソ)を創業。戦前には、日本の生んだ最大の事業家であるとも目されていた。その業績を掲げると、国内での石灰窒素、硫安など肥料生産で経済基盤を確立し、その後、朝鮮半島に進出。そこで東洋一の大コンビナートを建設、巨大規模の水力発電事業を起こした。分社経営により、いわゆる日窒コンツェルンを形成し、旧財閥企業にも比肩し得る日本有数の規模を誇る企業集団となった。戦前は化学を志す学生にとっては最も人気の高い企業でもあつた。しかし戦後は、公害問題の発生もあってか、彼の業績は忘れ去られてしまった。

だが、1930年代、重化学工業化により日本経済が隆盛をきたすなかでの企業規模の拡大に伴い、次々と分社化を進めコンチェルンを形成、その総師として腕を振るった。そのパイオニア的企業精神、積極果敢な技術導入による経営手腕には眼を見張るものがあった。彼は書いたものを何も残していない。だが、全財産を公に寄付するなど、その人生は国家(公)に生涯を捧げた類まれなスケールの大きい技術者として、後世に語り継がれるべき人物であることに間違いはない、とのお話であった。

質疑応答では、産業分野を横断する企業集団「財閥」と、同一産業分野の下での親子型「企業グループ」、いわゆる「コンチェルン」との違い、その形成過程、そのマネージメントのあり方など、興味の尽きない熱を帯びた会話が交わされました。(文責:国際高等研究所)

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