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IIAS塾ジュニアセミナー
-「独立自尊の志」養成プログラム-

現在社会にあって、科学技術至上主義や経済至上主義的風潮の下では、全人的な人間形成は困難となりつつあり、次代を拓くには、人間力の基礎をなす哲学(理性・感性)によって鍛えられた「独立自尊の志」を有する「全人」の養成が求められていると考えられます。そこで、国際高等研究所では「ゲーテの会」の中から、選りすぐりの講演をテキストとして起こし、その講演をされた当該分野の第一人者とされる講師と直接語り合えるIIAS塾ジュニアセミナー〜「独立自尊の志」養成プログラム〜を開催し、次世代を担う人物育成のためのセミナーを春季と夏季に開催しています。

概要

21世紀のこれからの時代、科学技術先進国の考え方だけではなく、日本の歴史・文化的背景を踏まえ、日本人としてのこれからの人間の在り方、物の考え方を持つことが必要になります。
本セミナーでは思想文学、政治経済、科学技術の各分野について著名な講師による講義を受け、参加者は論点整理を行い、大学院生によるティーチングアシスタント(TA)の先導のもとグループ討論を繰り返します。講義による知識の獲得に焦点を当てるのではなく、その講義を題材として正解のない課題についてグループ討議を行うことで、多様な考え方をする他者の意見を受け入れ、自分の考えをまとめる経験を通じて、新たな視点や幅広い視野を獲得する場となることを目指しています。


【過去のIIAS塾ジュニアセミナーテキストを順次公開しております。詳しくは こちら から】

2024年春季 IIAS塾ジュニアセミナー

講師とテキスト

田中 康二

皇學館大学文学部教授
メインテキスト
「本居宣長」に学ぶ ―「もののあはれを知る」と「漢意」、その多義性と先駆性―
サブテキスト
田中 康二「本居宣長―文学と思想の巨人」中公新書(2014年)

1965年大阪市生まれ。神戸大学文学部卒業。同大学院文化学研究科文化構造専攻退学。博士(文学)。
富士フェニックス短期大学専任講師・助教授、神戸大学文学部助教授、同大学院人文学研究科教授を経て、2018年皇學館大学文学部教授。
2001年第27回日本古典文学会賞(財団法人日本古典文学会)受賞。
著書に、『村田春海の研究』『江戸派の研究』(以上、汲古書院)、『本居宣長の思考法』『本居宣長の大東亜戦争』『本居宣長の国文学』(以上、ぺりかん社、宣長論三部作)、『国学史再考―のぞきからくり本居宣長』(新典社選書)『本居宣長―文学と思想の巨人』『真淵と宣長―「松坂の一夜」の史実と真実』(以上、中央公論新社、宣長伝三部作)など。

本居宣長とは何者か。日本古典文学の研究を大成した先達であると同時に、実証的に日本の優位性を主張した初めての日本人でもある。前者は国文学者の顔であり、後者は思想家の顔である。宣長は二つの顔を持つヤヌス(双面神)であった。それゆえ、どちらか一方だけを見ると、その実像をとらえ損なってしまう。評論家はそれに「宣長問題」というレッテルを貼って神棚に上げてしまった。
そこで、本講演では宣長の書いた文章に即して、国文学者としてのプロフィールを「もののあはれを知る」説を通じてとらえ、思想家としてのプロフィールを「漢意」を通して考えてみたい。いずれも宣長学を考える上で必要欠くべからざるキーワードであるにもかかわらず、かならずしも正しい理解が行きわたっているわけではない。グローバル(国際化)が合言葉である21世紀こそ、宣長の提唱した「もののあはれを知る」説を正しく理解、運用し、排他的ではない「漢意」排斥の精神を習得する必要があるということを確認したい。

齋藤 憲

専修大学名誉教授
メインテキスト
「大河内正敏」に学ぶ ―「科学主義工業」こそ、産学連携「理研モデル」の核心―
サブテキスト
『評伝 大河内正敏 -科学・技術に生涯をかけた男』日本経済評論社 (2009年)

1947年、東京都生まれ。専修大学名誉教授。
早稲田大学商学部卒、同大学院商学研究科博士課程満期退学。横浜商科大学教授、関東学院大学経済学部教授、専修大学経営学部教授、同大学経営学研究科科長などを歴任。
『新興コンツェルン理研の研究 大河内正敏と理研産業団』(1987年 時潮社 )で早稲田大学商学博士、日経経済図書文化賞受賞。その他著書に『稼ぐに追いつく貧乏なし 浅野総一郎と浅野財閥』(1998年 東洋経済新報社)など。

産学連携とは、新技術の研究開発や新事業の創出を目的として、教育機関や研究機関と民間企業が連携することなのは、現在よく知られている。しかし、そこに至るためには、多くの時間を必要とした。明治以降、外国から工業・技術を導入して産業を育成し、近代国家を目指した日本にあっては、自身の手で新技術を研究開発し、新事業を創出することなど思案の外にあった。研究開発するための教育・研究機関は不十分だったし、それを工業化する技術を持った民間企業もないに等しかった。そうした時代にあって、工学に物理実験を導入して工学教育を前進させ、「外国の模倣」を脱皮するため生まれた理化学研究所の所長に就任して同所を再建し、研究資金獲得と発明の工業化を実践するために理研コンツェルンを創った男がいた。彼の活動とその背景を概観し、合わせて産学連携を促進できる諸条件を皆さんと一緒に考えてみたい。

小長谷 有紀

国立民族学博物館名誉教授
メインテキスト
「梅棹忠夫」に学ぶ ―「文明論」的視点をもって考える。「旅」はその基盤-
サブテキスト
梅棹忠夫『文明の生態史観ほか』中公クラシックス(2002年)

1957年大阪府生まれ。1979年に、日本人女性として初めて、社会主義下のモンゴルへ留学し、以来、遊牧民たちの生業技術から儀礼まで幅広く研究してきた。1987年にはまだ文化大革命の傷が深く残る内モンゴル社会科学院に留学し、文献学の研鑽を積む。近年では、中国およびモンゴル国で口述史を収集し、社会主義化前後のリアルな記憶を鮮やかにうつしとることに成功している。長年、国立民族学博物館に勤務し、1998年には特別展「大モンゴル展」を、2011年には特別展「ウメサオタダオ展」を企画運営した。2013年春に紫綬褒章を受章した他、モンゴル国から2007年に友好勲章、2022年に北極星勲章を受章した。

梅棹忠夫の山歩きや探検の記録は、ほぼすべて国立民族学博物館に残されており、「梅棹アーカイブズ」と総称されている。それらは現在も整備中であり、随時、公開されている。講演者は国立民族学博物館に勤務した最初の仕事として、梅棹著作集第2巻『モンゴル研究』の編集を任され、没後には、著作集に関わった最年少者であったため、追悼展を担当した。その際に、モンゴルに限らず、アフリカ、ヨーロッパなど世界中に出かけた彼の足跡を資料で追いかけ、「梅棹アーカイブズ」の全容を調査しなければならなかった。この時の経験は、拙著にまとめてあるのでぜひご参照いただきたい。今回の講演では、とりわけ「文明の生態史観」に関連する資料を取り上げ、綿密な観察と記載、素朴な発見を経て、大まかな見取り図が完成する様を確認しよう。また、そうした思索の旅の原点がモンゴル調査であったこともぜひ追認しておきたい。

泉本 宗玄

裏千家 今日庵 業躰 教授方
メインテキスト

体験学習―心身の学 テーマ:『茶道を通じて体得する「もう一つの知、身体知」』

昭和48年1月28日奈良県生まれ。
平成9年 裏千家今日庵入庵。
平成20年 裏千家今日庵業躰昇格。
裏千家において、業躰(宗家の内弟子で家元直属の指導者)として国内外で茶道指導を行う。また、文化事業や国際親善行事では宗家に随行するなどして茶道文化の振興・普及に努めている。
現在、月刊『淡交テキスト』(淡交社)にて「茶趣としつらい十二ヵ月」を連載中

開催日時
2024年3月23日(土)~3月25日(月)

募集要項

募集対象 高校及び大学の学生で、IIAS塾ジュニアセミナー開催委員会において、受講を認めたもの概ね20名。
開催形式 2泊3日の合宿型募集案内リーフレット
ただし、1月下旬配布・配信予定の教材(メインテキスト、講義動画など)による事前学習が必須。
応募方法 申込フォーム(Googleフォーム)より必要事項を記載のうえ送信。ただし、高校生にあっては、当該高等学校の教員の推薦及び保護者の同意を得たうえで「推薦書・同意書」を郵送またはE-mailにて送付。いずれも提出締め切りは、2024年1月14日(日)
受講決定 選考結果は、2024年1月下旬、応募者本人宛て、「申込フォーム」に入力された住所へ郵送により通知。
開催場所 公益財団法人国際高等研究所(京都府木津川市)
宿泊場所 国際高等研究所の施設内にある宿泊棟(予定)
参加費用 10,000円(食費を含む宿泊費)
問い合わせ・申込先 公益財団法人国際高等研究所
IIAS塾ジュニアセミナー開催委員会事務局
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9-3
Tel:0774-73-4000/Fax:0774-73-4005
E-mail:iias19-2015@iias.or.jp
URL:https://www.iias.or.jp/
共催、後援、協力 【主催】公益財団法人国際高等研究所(IIAS塾ジュニアセミナー開催委員会)
【後援】京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県の各教育委員会(予定)
【協力】京都大学、大阪大学

申込から受講までの主な流れ

日程

応募の流れ

お申し込み
2024年1月14日(日)まで

※高校生は当該高等学校の教員の推薦及び保護者の同意を得て、推薦・同意書を添付の上、お申し込みください。

選考結果
2024年1月下旬郵送にて通知

受講決定後の流れ

オンデマンド学習
受講決定者には、学習要領送付、教材配布・配信
書類提出
受講者は事前書類を Google フォームより送付
セミナー当日
2泊3日の合宿型