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第61回 けいはんな「ゲーテの会」

開催概要

未来に向かう人類の英知を探る- 時代の裂け目の中で、人々は何に希望を見出してきたか -

61

政治・経済

『菊と刀』にこと寄せて「民主主義」の行方を考える -公共政策規範としての「将来世代に対する責任」-

【講演者】
足立 幸男京都大学名誉教授
【講演者経歴】
京都大学名誉教授。1947年10月名古屋に生まれ、京都大学法学部及び同大学院法学研究科での学習・研鑽を経て、1975年4月帝塚山大学教養学部に着任、1985年4月から京都大学に奉職(教養部、京都大学大学院人間・環境学研究科)、2008年3月退職の後、関西大学政策創造学部(2008年4月~2013年3月)、京都産業大学法学部(2013年4月~2018年3月)教授を歴任、また京都府立大学公共政策学部・大学院創設(2008年4月)以来今日に至るまで客員教授を務める(京都大学名誉教授)。
主要業績に、『議論の論理』(木鐸社)、『政策と価値』(ミネルヴァ書房)、『公共政策学入門』(有斐閣)、『公共政策学とは何か』(ミネルヴァ書房)、Transition Management for Sustainable Development (United Nations University Press)、Policy Analysis in Japan (Policy Press)、等がある。
【講演要旨】
「将来世代に対する責任」というコトバは今日各界のリーダーが好んで口にするものの一つであるが、それがはたして単なるコトバ以上の「生ける倫理」として定着し現実の公共政策に体現されるようになったかといえば、極めて疑わしい。民主主義の正規の手続きに則って堂々と将来世代の福利に致命的打撃を与えかねない「近視眼的」政策が繰り返し採択されているからである。自然への畏敬の念を抱き、(先行世代から受けた恩義を後続世代への配慮という形で返すことを要求する恩の倫理を大切にし、周囲を顧みず己一人の本能と欲望の赴くままに生きるがごときは畜生道に他ならない、また「末代までの恥」になるような行いだけは何としてでも避けねばならないと諭す教えが忘れ去られてしまった今日、将来世代への責任の倫理をどうすれが蘇らせることができるか。どのような制度の新規導入が将来世代の福利に配慮した政策の選択・実施の可能性を高めることが出来るのだろうか。

【参考図書】ご講演の内容の理解を促進するために次の図書が有益です。※特にご推奨する書籍です。
※ルース・ベネディクト『菊と刀』(講談社学術文庫)
※足立幸男(編)『持続可能な未来のための民主主義』(ミネルヴァ書房)序章p.1-14
ハンス・ヨナス『責任という原理―科学技術文明のための倫理学の試み』(東信堂)
フリードリッヒ・ハイエク『法と立法と自由』(全3巻 春秋社)
山岡正義『魂の商人 石田梅岩が語ったこと』(サンマーク出版)
イェヘッケル・ドロア『統治能力』(ミネルヴァ書房)

開催日時
2018年7月27日(金)18:00~20:30
開催場所
公益財団法人国際高等研究所
住所
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
参加費
2,000円(交流・懇談会費用を含む)
定員
40名(申し込みが定員を超えた場合は抽選)
締切
2018年7月25日(水)必着

当日の様子

2018年7月27日(金)18時から第61回「ゲーテの会」が高等研で開催されました。テーマは、『菊と刀』にこと寄せて「民主主義」の行方を考える。~公共政策規範としての「将来世代に対する責任」~。講師は足立幸男先生(京都大学名誉教授)。
かつて日本人の生活を律していた倫理、「恩と恩返し」「末代の恥」などの規律を失った今、それに替わって人々の行動を律するものは何か、何であるべきか。武士道、商人道から学ぶべきものは何か。

ところで、現代社会では、特に、科学技術の飛躍的な発展によって、地球環境どころか人の「生」や「死」さえ科学技術の関数となってしまった。科学技術の高度化によって命の誕生も、終結も操作対象となった。そこに生命への畏れの念はない。
現在世代の将来世代への責任。これも言葉としては市民権を得ているが、実態は怪しい。「現在崇拝」のメンタリティの下で、現代人にとって、それは全くリアリティを欠いたものとなっている。将来世代の福祉は、現在世代によって、その生殺与奪の権を握られている。

こうした現代社会の諸状況にあっても、より良い社会を展望するためには、民主主義に期待せざるを得ない。だが、その民主主義が実質を備えるためには、市民の成熟いわば人間精神としての民主主義と、社会の成熟いわば政治制度としての民主主義の充実が不可欠である。

人間精神としての民主主義の充実に当たっては、教育、特に幼少期からの実体験を踏まえての自律的課題解決能力の養成が肝要である。アメリカでは小学生にあっても、現場視察による体験学習が繰り返し行われている。
政治制度としての民主主義は、質を捨象し算術的平均値へと収斂し、多数者の支配に堕していく傾向がある。これを避けるためには、例えば、二院制の下で単純多数決制を採らない院を構想する、あるいは選挙の洗礼を受けないチェック機関、例えば、裁判官、公務員、専門家などの高度公共人材の育成が待望される。
そもそも、人間の本性は、最近の行動心理学などの研究成果によると、私的利益のみで行動するものではなく、ボランティア活動など公的利益への貢献を意識して行動している事例が数多くある、との報告がある。「石門心学」などを想起するとよい。そこに大いなる希望があるとも言える。(文責:国際高等研究所)

  • サクソフォン:酒井康充(OneNote音楽事務所)
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