• 国際高等研究所てどんなところ?
  • 高等研報告書
  • 寄付

第65回 けいはんな「ゲーテの会」

開催概要

未来に向かう人類の英知を探る- 時代の裂け目の中で、人々は何に希望を見出してきたか -

65

科学・技術

「日本の医学発展の礎を築いた『北里柴三郎』の大生涯」

【講演者】
森 孝之北里研究所北里柴三郎記念室次長
【講演者経歴】
横浜市出身。学校法人北里研究所北里柴三郎記念室次長 医学博士。
北里柴三郎博士の生涯を医史学の観点から研究している。尚、北里大学特任講師として自校教育「北里の世界」の講義を担当。他方、学外からの講演依頼も多く幅広い年齢層を対象にした講演活動も積極的に行っている。
【講演要旨】
今から120年程前の日本人の平均寿命は男性42.8歳、女性44.3歳でした。劣悪な栄養状況、衛生環境の不備、そして貧困あるいは教育の欠如などに加え、致死率の高い感染症の蔓延も要因の一つでありました。「衛生行政の立ち後れと学問知識の未熟さゆえに毎年、何万という尊い命が伝染病で失われていく。これで文明国といえるのか」と近代国家を目指す日本の盲点を指摘した北里柴三郎は伝染病研究所を創設したのです。ベルリン大学のローベルト・コッホ博士から病原細菌学を学んだ彼は医薬品や予防治療法の研究・開発を推進しました。一方では関連法案の制定に参画すると共に衛生思想の普及にも努めたのです。北里が掲げた近代日本医学の在り方とは何かを考えてみたいと思います。

【参考図書】ご講演の内容の理解を促進するために次の図書が有益です。
山崎光男『北里柴三郎-雷と呼ばれた男-』、(上・下)、中公文庫、2007年
開催日時
2018年11月22日(木)18:00~20:30
開催場所
公益財団法人国際高等研究所
住所
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
参加費
2,000円(交流・懇談会費用を含む)
定員
40名(申し込みが定員を超えた場合は抽選)
締切
2018年11月21日(水)必着

当日の様子

2018年11月22日(木)18時から国際高等研究所において、第65回満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」が開催されました。テーマは「日本の医学発展の礎を築いた『北里柴三郎』の大生涯」。講師は森孝之先生(北里柴三郎記念室次長)。

北里の働きぶりと、その人格形成に関して、豊富な資料に基づいてお話があった。

北里の働きぶりに関しては、留学先のドイツでコッホに師事し、世界に先駆けての破傷風菌純粋培養の成功と免疫抗体と血清療法を発見するなど現代の免疫療法につながるノーベル賞に値する医学研究の成果を挙げ、また、「伝染病予防法」など現代日本の衛生行政の骨格に関わる行政システムの確立に尽力。

北里の人格形成に関しては、熊本医学校の時代、実学党を標榜した横井小楠の思想に触れ、また、その系譜にある山田武甫の薫陶を受け、若くして「医道論」を著し、医学を通じて社会に貢献することを終生の目標とし、その追求に生涯を捧げた。特に、コレラ、ペストなどの感染症(伝染病)を目の当たりにし、その制圧を自らの使命として引き受け、福沢諭吉をはじめ、多くの人々の支援と協力を得て、その実践に邁進した。その境地は「真理の根源に迫り実用に転換する」というものであった。その精神は、ノーベル生理・医学賞受賞者、大村智先生(元北里研究所長)に継承されている。
質疑応答では、明治時代は、現代における拝金主義的な風潮とは異なり、社会貢献的な精神が横溢していた。その背景には一般に社会の存続への危機意識が今の比ではなかったことが挙げられるとの指摘があり、更に、感染症(伝染病)対策における国家の役割に関して、サーズ、ジカ熱、エボラウイルス病など、個人レベルでの対処には限界があり、国家の役割は、以前にもまして大きなものがあり、その存在は欠かせないなど、現代の問題に引き寄せての質疑応答が続きました。(文責:国際高等研究所)

  • ギター:福島 修二(One Note音楽事務所)
最新に戻る