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第91回 けいはんな「ゲーテの会」

開催概要

「新しい文明」の萌芽を探る日本と世界の歴史の転換点で、転轍機を動かした「先覚者」の事跡をたどる

91

科学・技術

私の見た「朝永振一郎」

【講演者】
小沼 通二慶應義塾大学名誉教授
【講演者経歴】
1931年東京生まれ。東京大学理学部卒業、同大学院修了、理学博士。専門は物理学、物理学史、科学と社会。東京大学、京都大学、慶應義塾大学、武蔵工業大学(現在の東京都市大学)勤務、慶應義塾大学と東京都市大学の名誉教授。日本学術会議原子核特別委員会委員長、日本物理学会会長、アジア太平洋物理学会連合会長、パグウォッシュ会議評議員、素粒子奨学会会長、公益財団法人下中記念財団理事、世界平和アピール七人委員会委員・事務局長などを務めた。素粒子メダル功労賞、ハンガリー科学アカデミー名誉会員、アジア太平洋物理学会連合フェロー。
【講演要旨】
朝永振一郎は、今日の物理学の多くの分野で使われている「くりこみ理論」を世界に先駆けて手がけ、構築した物理学者であって、日本で二人目のノーベル賞を受賞した。日本で初めてのノーベル賞受賞者である湯川秀樹と同級生であり、二人は生涯にわたる親友であるとともに、厳しいライバルだった。二人のノーベル賞の業績は相互に影響しあっていた。東京教育大学学長、日本学術会議会長をつとめるという行政手腕も持っていた。さらに湯川の勧めによって、パグウォッシュ会議に参加。核兵器による抑止はできないことを論証。これらを通じで得た科学に内在する矛盾についての洞察から、科学者の社会的責任を主張した。鋭く厳しい学問への取り組みと共に、庶民的、洒脱な人柄から、多くの人から愛された。興味深い大量の講演・座談の記録、随筆が残されている。私は19歳のときに朝永を訪ねて1日で魅了され、その後亡くなるまで30年近く、多大な影響を受けた。
開催日時
2022年4月20日(水)18:00~20:00
開催場所
公益財団法人国際高等研究所 

【重要なお知らせ】今回はオンラインと会場参加のハイブリッド開催となります。

住所
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
参加費
今回は無料
定員
オンライン 100名  会場参加25名(先着順・定員になり次第締め切り)
締切
2022年4月20日(月)必着

当日の様子

2022年4月20日(水)18時から国際高等研究所において、本年度初の第91回「満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」が開催されました。演題は『私の見た朝永振一郎』。講師は小沼通ニ先生(慶應義塾大学名誉教授)。

この「ゲーテの会」は、本年度から始まる〈「新たな文明」の萌芽、探求を!〉プロジェクトの取組として位置付けられ、その上期のテーマ「量子論」を踏まえて開催されました。ハイブリッド形式で開催され、対面のほか、全国からの遠隔参加を含め、80名近い方々の参加申し込みがありました。

朝永振一郎の生涯を俯瞰しながら、ノーベル賞受賞につながる湯川秀樹とのライバル的友情に支えられての学問業績のほか、その師、仁科芳雄亡き後の理論物理学界をはじめとする大学学長・日本学術会議会長等アカデミアで発揮された高い行政手腕、また、パグウォッシュ会議への参画などを通じて平和問題に強い関心を寄せていたことなどについて、自己の実体験を交えながらの紹介がありました。

特に、湯川秀樹との対比の紹介には興味深いものがありました。大局的・創造性・透徹力に富む湯川に対し、鋭い観察力を持ち緻密で着実な朝永、歌舞伎や能などを好む高尚な湯川に対し、落語など洒脱なユーモアセンスに富む朝永、教育者として湯川の放任主義に対し、朝永の基礎からの着実な指導など、人間性とその魅力への言及が印象的でした。

更に、朝永振一郎は、早くからゲーテの『ファウスト』に親しみ、晩年、「科学」と「社会」との関係に深く思索を巡らせたときにも『ファウスト』を思い起こし、「科学」の有用性とともに、その原罪性への認識を欠いてはならないことを喚起するに至ったこと、また、色彩論などを巡って、分析的志向の強いニュートンの科学論を認めるとともに、自然をありのままに観察しようとするゲーテの科学論にも親和性を感じていたなどが紹介され、興味深いものがありました。

質疑応答では、「デュアル・ユース」を巡って、嘗てのように、科学技術研究を、軍事利用か平和利用かに単純な区分をすることができなくなっている。長期的視点に立った国家の科学技術政策の改革など、科学と社会をめぐる現代的課題が抱える矛盾を意識して慎重に判断していく必要性などについても、熱心に意見が交わされました。(国際高等研究所)

  • 小沼先生
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