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第45回 けいはんな「ゲーテの会」

開催概要

日本の未来を拓くよすが(拠)を求めて日本社会の古層から日本的なるものを発掘した人物

45

政治・経済分野

『湛山回想』を読む

【講演者】
猪木 武徳大阪大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。
【講演者経歴】
1945年生まれ。大阪大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。専門は、近現代の経済思想・経済史。著書に『経済思想』(岩波書店)、『自由と秩序』(中央公論新社)、『大学の反省』(NTT出版)、『戦後世界経済史―自由と平等の視点から』、『経済学に何ができるか』(中公新書)などがある。
【講演要旨】
1956年12月23日、石橋内閣は全閣僚を総理が兼任して親任式に臨むという異例のスタートを切った。その2か月後、病のため辞意を表明、石橋内閣は総辞職する。戦前、透徹した自由主義思想の言論人として健筆をふるった石橋湛山は、当時の日本を代表する優れた知識人であった。しかし今日ではその進歩主義的な側面のみが強調されることが多い。本講義では『湛山回想』を素材にしつつ、彼の軍隊の見方、普選運動への姿勢、地方自治重視のデモクラシー観、植民地論、中国観などを取り上げる。彼はなぜ戦後公職追放されたのかについても、占領下の政界の複雑さが見え隠れする。その潔い引退を政治家としてどう評価するのか。メディア経営者、思想家、政治家としての石橋湛山の実像に迫ってみたい。
開催日時
2017年3月14日(火)18:00~20:30
開催場所
公益財団法人国際高等研究所
住所
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
参加費
2,000円(交流・懇談会費用を含む)
定員
40名(申し込みが定員を超えた場合は抽選)
締切
2017年3月9日(木)必着

当日の様子

2017年3月14日(火)、平成28年度最後の第45回「ゲーテの会」が開催されました。今回テーマは「『湛山回想』を読む」で、猪木武徳先生(大阪大学名誉教授)にお話を賜りました。
今回の「ゲーテの会」は、2015年5月以来約2年間にわたって掲げてきたテーマ「日本の未来を拓くよすが(拠)を求めて。日本の近代化を導いた人々の思想と行動、その光と影を追う。」の最後を締めくくるものでした。
猪木先生のお話は、テーマのとおり、『湛山回想』『湛山座談』を読みながら、言論人、経済政策家、政治家、そして思想家(読書家)としての石橋湛山を振り返り、石橋湛山から何を学ぶかについてのお話で、湛山といえば「理想主義者」「平和主義者」、あるいは日本の帝国主義政策への批判者として語られることが多いが、その事績を広い角度から、振り返ってのものでした。
大正初期の普通選挙問題、昭和初期の金解禁論争、そして戦後、マッカーサーと渡り合う湛山の事績を振り返りながら、そこに、アイディアリストであるとともにリアリストとしての顔が見える湛山、福沢諭吉の影響の下、自主独立の精神を発揮する一方、諦観思想の持ち主でもあり、権力への執着がないなどの性向が見られるとし、また、人間の感情としての民族主義、ナショナリズムを恐れていた湛山の姿が見られるとのお話でした。
質疑応答でも、普通選挙問題での湛山の晩年の回想に「果たして民主政治で人間が出来るものだろうか」、軍備を巡っての湛山の態度「国連の保護だけを要求して、協力はイヤだというのでは、日本は国際間に一人前に立てゆくことはできません」などの発言にかかわって、湛山という人物の本質に迫る質疑が交わされました。

今回の演奏、演目は「つながり」「花は咲く」、歌唱はソプラノ福本彩夏、奏者はピアノ井本絢子さんでした。(マイリズム音楽事務所)

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