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第50回 けいはんな「ゲーテの会」

開催概要

未来に向かう人類の英知を探る- 時代の裂け目の中で、人々は何に希望を見出してきたか -

50

思想・文学分野

「井筒俊彦」の世界観 言語と宗教を超えて

【講演者】
池内 恵東京大学先端科学技術研究センター准教授
【講演者経歴】
1973年東京生まれ。1996年東京大学文学部イスラム学科卒業、2001年に東京大学大学院総合文化研究科博士課程を単位取得退学し、アジア経済研究所に入所。国際日本文化研究センター助教授・准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授。ケンブリッジ大学客員研究員(2010年)、ウッドロー・ウィルソン国際学術センター客員研究員(2009年)、アレクサンドリア大学客員教授(2008年)等を歴任した。専攻はイスラーム政治思想史、中東地域研究。2016年に第12回中曽根康弘賞を受賞。著書に『現代アラブの社会思想──終末論とイスラーム主義』(講談社現代新書、2002年、第2回大佛次郎論壇賞)、『書物の運命』(文藝春秋、2006年、第5回毎日書評賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書、2015年、第69回毎日出版文化賞・特別賞受賞・2015年)など。『増補新版 イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2016年)に井筒俊彦論が二編収録されている。
【講演要旨】
井筒俊彦は日本のイスラーム教研究の先駆者・第一人者として長く知られてきた。井筒はどのようにしてイスラーム教に出会ったのだろうか。そしてイスラーム教研究を経て、さらにどのような地平に進んでいったのだろうか。井筒は言語学者であり、宗教哲学者である。イスラーム教のみならず、東洋と西洋の大きく異なる諸宗教を、「言語」という観点から比較し、その奥深くにある共通性を探り続けた。また、言語を介した存在の認識そのものを超える、本質直観の道を模索し続けた。この講義では、多岐にわたる井筒の著作の中から、一貫していた一つのテーマを読み解いていく。井筒の生育環境に遡り、幼少期に体得した、言語を超えた超越的な直観の獲得を、その原体験としてとらえる。長じてのちの井筒は、この言語を超越した直観の体験を、言語を通じて論理化するというさらに困難な課題に取り組んでいった。井筒は数多くの宗教や哲学体系を遍歴するが、イスラーム教は超越的な神の言葉の現世の人間への「啓示」という観念において、井筒を惹きつけて止まなかった。宗教間の対立や摩擦が目立つ現代だが、井筒が深く分け入った諸宗教の言語の根底にある共通の地平は、対立を超える手がかりを与えるかもしれない。
開催日時
2017年8月8日(火)18:00~ 20:30
開催場所
公益財団法人国際高等研究所
参加費
2,000円(交流・懇談会費用を含む)
定員
40名(申し込みが定員を超えた場合は抽選)
締切
2017年8月3日(木)必着

当日の様子

2017年8月8日(火)。第50回目の「ゲーテの会」は、午後6時、華やかなマリンバの演奏で始まりました。今回の講演テーマは、「『井筒俊彦』の世界観 言語と宗教を超えて」。講師は池内恵先生(東京大学先端科学技術研究センター)。イスラムへの関心の高まりもあって、大阪、兵庫など近畿各地から、また、東京など関東からの参加者もあり、40名を超える方々の参加となりました。
井筒俊彦は、嘗てのポストモダンの寵児としてでなく、今、その思想の在処を訊ねての深い理解が求められている。『井筒俊彦全集』の刊行等も進み、研究環境が整ってきたこともあり、読み直し「再評価」の動きがあります。
言語を超越した体験から出発して、その言語化を目指した井筒俊彦。論理を追うギリシャ哲学の原初に、直観による世界把握を志向する東洋哲学との共通性の片鱗を発見した井筒俊彦。言語によって認識される分節的世界の先に、「言語アラヤシキ」を通じて把握される無分節的世界を見、異文化融合の可能性を論じ、あるいは文化の新生を夢見た井筒俊彦。池内先生と参加者との間で興味深い意見交換が時の経つのを忘れて続きました。(文責:事務局)

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