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2017年春季IIAS塾ジュニアセミナー

当日の様子

2017年春季ジュニアセミナーを3月25日(土)から2泊3日(合宿型)の日程で行いました。受講者は、京都、大阪、奈良の高等学校生25名です。開校式では、開催委員会委員長(国際高等研究所長)の長尾真先生から「明治維新を成し遂げて以来、日本は西欧に伍して大いに発展した。こうした歴史にも学びながら、このからの日本の、世界の発展に尽くす人物になってほしい」との励ましの言葉がありました。慣れない議論に戸惑い、苦戦する生徒もいましたが、自分の頭で考えて議論する楽しさ、答のない問いに挑む難しさ、面白さを味わってもらえた3日間だった模様です。閉講式では、岡橋専務理事から、時代はトランスサイエンスを求めていること、また、独立自尊の志が求められていることなどの言葉が贈られ、受講生の今後の人生への期待の表明がありました。

参加者の声

よくわからない話題をふられたとき自分の知らない世界があることに気づき、もっと視野を広めたら楽しいだろうなと感じた
高校1年男子
多くの問題に対して深みのある議論をすることができた
高校1年男子
3日という短い短い期間の中で、自分の人生や心情に関わるような大きな気付き、新しい考えを得られた
高校1年女子
これからも矛盾や線引きなど答えのない問題をこの分野内で考え続けたいと考えた
高校1年女子
答えを出すということにこだわる必要はなく、答えがないのを気づくことも重要であることがわかった。これまでの視点とは異なるような人間を種として見る考え方は面白いと思い、新たな視点を得られた
高校1年男子

開催概要

講師とテキスト主題

田島 正樹

元千葉大学文学部教授。哲学者
メインテキスト
宮沢賢治に学ぶ~八方ふさがりの中で「本当の幸い」を問うこと。~
サブテキスト
宮沢賢治『ビヂテリアン大祭』(ちくま文庫1986年)『宮沢賢治全集第6巻』所収

主著:『ニーチェの遠近法』(1996青弓社)、『哲学史のよみ方』(1998ちくま新書)、『魂の美と幸い』(1998春秋社)、 『スピノザという暗号』(2001青弓社)、『読む哲学事典』(2006講談社新書)、『神学・政治論』(2009勁草書房)、 『正義の哲学』(2011河出書房新社)、『古代ギリシアの精神』(2013講談社メチエ選書)など。

【メインテキスト概要】
宮沢賢治は、明治29年(1896年)岩手県花巻に生まれた詩人・童話作家として有名です。若干37歳で亡くなるまで、文学のみならず農村の指導や青少年の教育など多彩な活躍をしていますが、その作品が有名になるのは死後の事です。文明開化から取り残された東北の地に生まれながら、彼の作品には、化学や地質学や進化論など当時の先進科学やヨーロッパの精神に対する深い理解が見られる一方、賢治自身の日蓮宗への篤い帰依をも示しています。このように、東西の文化、科学と宗教を自在に横断する賢治の精神世界がいかにして成立したのか、当時近代化の象徴と見なされていた鉄道との関連を通して論じてみたいと思います。

伊藤 之雄

メインテキスト
原 敬に学ぶ~公利(公益)に向かって、社会の秩序形成を。だが、それは、私利(怨念)を超えてこそ。~
サブテキスト
原 奎一郎『ふだん着の原敬』(中公文庫2011年)

専門は近代・現代日本政治外交史。
著書:『原敬―外交と政治の理想』上・下巻(講談社、2014年)、『伊藤博文―近代日本を創った男』(講談社、2009年〔文庫版、2015年〕)、 司馬遼太郎賞受賞作『昭和天皇伝』(文藝春秋、2011年〔文庫版、2014年〕)、『山県有朋―愚直な権力者の生涯』(文春新書、2009年)など。

【メインテキスト概要】
原敬は、1918年に初めて本格的な政党内閣を創り、次第に軍や宮中までも内閣の下で統制し、第一次大戦後の状況に適応し国際協調外交路線をしいた人物である。
1856年に南部藩(現・岩手県)の上級武士の家に生まれるが、維新で没落。苦学をして、新聞記者・外交官から政党政治家となった。青年期に中江兆民の私塾でフランスの啓蒙思想、中でも「公利」という概念を身につけ、生涯「公利」を求めた。その実現の具体的手段として、輿論にもとづくイギリス風の政党政治と、東アジアや世界の安定した国際平和秩序の形成を理想とし、それを実現可能な手段で追求した。
原は、人間を身分・男女、人種など生まれながらに変えられないもので評価しがちな当時の状況にとらわれず、努力し自立した理性的人間に価値を置いた。
政治や外交や、政治家のあるべき姿が見えにくい現代、原敬から学ぶものを考えてみたい。

松居 竜吾

龍谷大学国際学部国際文化学科教授
メインテキスト
南方熊楠に学ぶ~すべてのものごとはつながっている。この世界を一つながりのものとしてとらえる「知」のあり方を模索することが重要。~

専門は、比較文学・比較文化。
著書:『南方熊楠、一切智の夢』(1991)、『達人たちの大英博物館』(共著・1996)、『クマグスの森』(2007)などがある。小泉八雲奨励賞受賞(1992)。日本国際文化学会常任理事・学会誌編集委員。南方熊楠顕彰会理事・学術委員。

【メインテキスト概要】
南方熊楠(みなかた・くまぐす、1867-1941)が土宜法龍(どぎ・ほうりゅう、1855-1923)に宛てて1903年の夏に書いた手紙には、「南方マンダラ」と呼ばれる独自の世界観が披露されている。この「南方マンダラ」において、熊楠は科学的な思考の枠組みを大乗仏教の思想を用いて広げようとする試みをおこなっている。その一方で、従来、これらの書簡における試論は、那智での滞在期に限定されるものであり、熊楠の思想の全体像を示すものではないという見方もなされてきた。
しかし、和歌山・東京からアメリカ、ロンドン、那智、紀伊田辺と移動しながら形成された熊楠の思想の流れを考えると、「南方マンダラ」が徐々に準備され、その後の学問活動においても一定の基盤となっていたことがわかる。今回の講演では、こうした観点から、南方マンダラの形成過程とその後の展開について、最近発見された資料や新たな研究的視角を紹介しつつ話したいと考えている。

募集要項

募集対象 関西地域(京都府・大阪府・奈良県)に所在する高校及び大学の学生で、IIAS塾ジュニアセミナー開催委員会において、受講を認めたもの概ね20名
応募対象 「申込書(別記様式)」に必要事項を記入し、公益財団法人国際高等研究所IIAS塾ジュニアセミナー開催委員会事務局宛てに、郵送により、2017年1月20日(金)必着で提出すること。
ただし、高校生にあっては、当該高等学校の教員の推薦及び保護者の同意を得ること。
受講決定 選考結果は、2017年2月上旬、応募者本人宛て、「申込書」に記載された住所へ郵送。
開催日 2017年3月25日(土)10:00~2017年3月27日(月)17:15
開催場所 公益財団法人国際高等研究所アクセスマップ
宿泊場所 公益財団法人国際高等研究所内にある宿泊棟を用意
参加費用 メインテキスト代、朝昼夕食を含む宿泊費は、主催者が負担
自宅と会場間の交通費、指定の図書(サブテキスト)購入費は自己負担
問い合わせ・申込先 公益財団法人国際高等研究所
IIAS塾ジュニアセミナー開催委員会事務局
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9-3
Tel:0774-73-4000/Fax:0774-73-4005
E-mail:iias19-2015@iias.or.jp
URL:http://www.iias.or.jp/
共催、後援、協力 【後援】
京都府教育委員会、大阪府教育委員会、奈良県教育委員会
【協力】
京都大学、大阪大学

日程

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