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第30回 けいはんな「エジソンの会」

開催概要

機械と人の未来 ~しなやかなロボット開発と新たなAI研究~

講師
  • 鈴森 康一
    東京工業大学工学院 教授

  • 谷口 忠大
    立命館大学情報理工学部 教授
    パナソニック株式会社ビジネスイノベーション本部 客員総括主幹技師
開催日時 2019年3月27日(水) 13:30~19:30
開催場所 公益財団法人 国際高等研究所
住所 〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
概要 これまで科学技術の進化は、パワーと確実性を追い求め、確実な動作を求めて機械も材料も「かたさ」を追求してきました。近年、機械・電子、情報処理、材料科学等、複数の異なった分野で、生体システムが持つ「やわらかさ」を指向する新興学術が同時多発的に勃興してきています。
第30回会合では、ロボティクスの分野において、NHKをはじめ多くのメディアで注目され、2018年度から文部科学省新学術領域「ソフトロボット学の創成」で生体・人間中心の新たな学術領域に取り組まれている鈴森康一先生に、「やわらかさ」を目指すロボットを通した「人と機械の未来」についてご説明を頂きます。また、人間の言語の獲得や進化に至るダイナミズムに焦点を置き、人間の認知発達と類似した過程で言語や概念を獲得していく最新の人工知能研究と企業での製品開発への取り組みについて、谷口忠大先生にご説明を頂きます。
多分野との融合を図りながら、新たな発想により進められているソフトロボット学の研究とロボットに自らの認識とその発達ダイナミクスを持たせることで、人とコミュニケーションを可能としていく汎用人工知能に向けた研究を通して、人と機械の未来を議論することにより、分野を超えた研究者・技術者、企業の様々な立場の皆様にも非常に興味深く、大いに参考にしていただけるものと期待しています。
配布資料
講師:谷口 忠大 「機械と⼈の未来 〜ロボティクスと⼈⼯知能〜」
PDF [9 MB]
共催、後援、協力 【後援】 国立研究開発法人理化学研究所

タイムテーブル

13:00
受付開始
13:30-14:50
「ソフトロボティクス ~しなやかなロボット開発~」鈴森 康一 東京工業大学工学院 教授
15:00-16:20
「機械と人の未来 ~ロボティクスと人工知能~」谷口 忠大 立命館大学情報理工学部 教授 
パナソニック株式会社ビジネスイノベーション本部 客員総括主幹技師
16:30-17:50
インタラクティブ・セッションご登壇者(鈴森康一氏、谷口忠大氏)
18:00-19:30
懇親会
主催者による記録・広報等のため、本イベントの写真撮影・録画・録音、オンライン配信、ソーシャルメディア配信等を行う場合がございますので、予めご了承ください。

当日の様子

けいはんな「エジソンの会」第30回会合は、「機械と人の未来 ~しなやかなロボット開発と新たなAI研究~」というテーマで開催致しました。
 ソフトロボット学は、これまでのロボット学の常識を180度転換する画期的な取り組みであり、ロボットの限界を超えるブレイクスルーになると思われ、大きな期待を持ちました。なかでも、日本人の発想から生まれた「E-kagen」好いかげんの思想に基づく研究開発は、大きな可能性を持つものであり、新学術領域としての異分野融合は学術界のみならず産業界も含めた大きな流れであると理解しました。E-kagenによる日本のソフトロボット学が世界を牽引する潮流となってくれることを期待します。
また、汎用人工知能分野で人間の幼児の発達過程に範を置く教師なし学習の研究は、人工知能研究の新たな挑戦であり、かなりの段階まで研究が進んできていることを実感したと同時に、今後の取り組みについても大きな期待を持ちました。
科学技術の進化が益々我々の社会に影響を及ぼす時代において、人と機械の関係や役割をどう考え、我々は何を準備し、来るべき未来の社会に備えていく必要があるのか、深く考えさせられる会合でした。ご講演頂いた内容は下記の通りです。

「ソフトロボティクス ~しなやかなロボット開発~」

鈴森 康一 東京工業大学工学院 教授

これまでのロボット学では、機械・電子・コンピュータで構成され、正確なプログラムとパーフェクトな情報処理を行うことを前提に、固い金属等の材料による動作を実現してきた。一方、生き物を見ると、柔らかい身体、しなやかな動き、適応性のある知能を備え、想定外のことが起きても、適応力が高く、融通が利く。そこで、ロボット学の限界を超えるソフトロボット学が科学技術の潮流として注目を集め、学術界の大きな流れとなってきた。
そもそも日本では1980年代から他国に先行してソフトロボットの研究が行われていたが、学術界や産業界からはなかなか受け入れられず、2007年より世界的な研究ブームが始まり、ここ数年で急激に関心が高まってきた。 
当研究グループでは、新学術領域としてソフトロボット学を扱い、従来の学術領域である機械、電子、情報科学に加え、材料科学と生物学を加味した、しなやかな身体・動き・知能を目指した異分野融合の取り組みを始めている。
「しなやかな身体」では、変形・変化する身体の理論を、「しなやかな動き」では、エネルギー・筋肉・メカニズムが一体となった柔らかい動きを、「しなやかな知能」では、連続体の情報を扱う新しい数理モデルと情報処理アルゴリズムを創り出すことを目指している。
研究の実例としては、空圧ラバーアクチュエータを開発し、形状適応性を持ったロボットハンドや移動ロボット、柔軟な体幹を持つ管内点検ロボット等を活用した自走式大腸内視鏡、バリウム検査等の医用ロボットへの応用に結び付けている。また、機能性表面の研究では、ゴムの表面改質による表面力制御、集積型小型吸盤等が挙げられる。
しなやかな人工筋肉の開発では、細径人工筋肉の実用化により、様々な運動アシストや筋駆動ロボット、ジャコメッティロボットへの応用が実現可能である。
従来のロボット学で追及してきた、力、スピード、精度、確実性から、形状適応、優しい接触、受動動作、冗長性を備えること、それらを総称して“E-kagen” (好いかげん)科学技術と名付けた。従来のロボット学から、新学術領域研究としてのソフトロボット学を誕生させ、柔らかい、“E-kagen”を志向する学術領域と異分野融合による社会への展開を図り、新しい価値観を生み出しながら、ロボットのこれまでの限界に挑戦し、“E-kagen”科学技術で人と機械の未来を切り開いていきたい。

「機械と人の未来 ~ロボティクスと人工知能~」

谷口 忠大 立命館大学情報理工学部 教授 
パナソニック株式会社ビジネスイノベーション本部 客員総括主幹技師

人工知能とは人工的に知能を造ることではあるが、知能の定義は非常に難しく、統一的理論はなかった。一つ前のAIブームは、入出力関数で適切なパターン処理のプログラムを組んで変換処理を行う枠組みと捉えることが出来る、ルールベースAIと言える。しかし、不確実で不安定な実世界情報と触れ合うためには、ルールそのものを人間が作り、知能の処理自体をデザインすることには限界がある。そもそも、人間の知能や認識は究明されておらず、人間は認識を明示的に理解できないため、それらをデザインすることは困難であった。そこで、人間からの情報の受け渡し方について、例えば人が犬の絵や猫の絵を見分け、その情報をラベル付き学習データとして機械学習を行う方法が生まれ、また人間の工夫で特徴抽出をしてきた。やがて入力に使われるラベル付き学習データは膨大となり、特徴抽出と機械学習を一気に行うディープラーニングブームの時代となった。特に機械翻訳は出口も文字列のため、大きな進化を遂げた。また、画像データからテキスト出力やロボットの動作系列が可能となるなど、扱い難くかったものが扱えるようになり、隣接分野の研究にも大きく広がっている。
人間と機械のコミュニケーションについては、家庭用ロボットを例に取ると、声の理解はほとんどがルールベースであるため、人間が教えてやらないと言語コミュニケーションが成立せず、なかなか普及してこなかった。しかし、人間の幼児の発達を考えると、ラベルデータがないにも関わらず知能の獲得を行っており、知能を何に基づいて獲得しているのだろうか。そもそも知能は進化の産物であり、環境への適用として実世界の中で生まれてくるものなので、センサー情報から記述できないといけないし、センサー・モーダル情報だけから立ち上がって言語に至るダイナミクスが存在するはずである。
これからのロボティクスにおいては、ロボットが物体をつかみ、マルチモーダルでカテゴライズしながら概念を形成し、場所の概念も自分で形成していき、セマンティックマッピングを作成してある領域の名前を憶えていくような、ロボットが環境とセンサー情報でインタラクションしていく知能ロボティクスを目指している。実世界の不確実性の問題、知識の相対性の問題、社会性の問題などにより、人と機械のコミュニケーションは決して100%にならないので、変化する環境とのインタラクションを通して全体のダイナミクスをしっかりと理解して適用していきたい。
人間の発達プロセスを学習しながら、確率的生成モデルとニューラルネットワークの融合を図り、認知発達やその先にある言語獲得等をボトムアップで学習して捉える記号創発ロボティクス研究にこれからも邁進していきたい。

[インタラクティブ・セッション]

人間と機械の関係や役割、コミュニケーションにおける言語の限界、自然の理解と認知科学、ロボット論、人間の幸せとロボット、機械学習のラベル提供問題、マルチモーダル教師なし学習、異分野融合、ハードウェアにおける最適な形状の創発、AIと知性・感性、ロボットの自律的情報選択と社会適用の関係など、多岐にわたる意見交換が為されました。

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