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第31回 けいはんな「エジソンの会」

開催概要

人と機械の未来 ~人間の能力を拡張する~

講師
  • 暦本 純一
    東京大学大学院情報学環 教授
    ソニーコンピュータサイエンス研究所 フェロー・副所長
  • 持丸 正明
    産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 研究センター長
開催日時 2019年6月4日(火) 14:00~18:30
開催場所 公益財団法人国際高等研究所
住所 〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地
概要 これまで科学技術の進化は、社会を大きく変える原動力となってきました。我々人間の能力(知覚・認知・身体・存在感)そのものもITで飛躍的に高める新しい技術の登場によって、高度な運動や作業が可能になるだけでなく、医療や健康や様々な分野への実用も可能となってきています。
第31回会合では、日本で初めて人間拡張を提唱し、人の能力と技術・AIが自然に融合し、時間や空間の制約を超えて相互に能力を強化し合う、IoA(Internet of Abilities)という未来社会基盤の構築を視野に入れた研究を進められている暦本純一先生に、人が本来持つ能力を飛躍的に高める「人間拡張」という新技術についての最新の研究成果についてご説明頂きます。
また、昨年11月設立の人間拡張研究センター(産総研)で、ウェアラブルセンシング、ロボット、ヒューマンインタラクション、サービス工学等の技術を統合し、人に寄り沿い、人の能力を高める技術に取り組まれている持丸正明先生より、人の行動を変え、身体機能そのものの増強を通して生み出される生活イノベーションと生活知識産業の創出についてご説明を頂きます。  
人の能力の拡張研究とそれらを利用した様々な分野への応用の可能性に触れて頂くことにより、人と機械の未来がどのように切り開かれていくのか、分野を超えた研究者・技術者、企業の様々な立場の皆様にも大いに参考にしていただけるものと期待しています。
共催、後援、協力 【後援】 国立研究開発法人理化学研究所

タイムテーブル

13:30
受付開始
14:00-15:00
「Human Augmentation:人間の能力の拡張と進化」暦本 純一 
東京大学大学院情報学環 教授
ソニーコンピュータサイエンス研究所 フェロー・副所長
15:10-16:10
「人間拡張技術による生活知識産業の創出」持丸 正明 
産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 研究センター長
16:20-17:30
インタラクティブ・セッションご登壇者(暦本純一氏、持丸正明氏)
上田 修功 エジソンの会スーパーバイザー
17:40-18:30
情報交換会
主催者による記録・広報等のため、本イベントの写真撮影・録画・録音、オンライン配信、ソーシャルメディア配信等を行う場合がございますので、予めご了承ください。

当日の様子

けいはんな「エジソンの会」第31回会合は、「人と機械の未来 ~人間の能力を拡張する~」というテーマで開催致しました。
人間の能力を拡張することは、身体、感情、その奥にある心や魂の問題にも大きく関わることを知りました。人に寄り添い、人を高めることに主眼をおいて取り組むことで、人の多様性を支え、人をよりアクティブにすることが可能となり、人間拡張技術が産業界でのビジネスへの展開においても多くの可能性を秘めていることを理解しました。
Human Augmentationは、人と機械の共同領域を広げ、様々な分野でのサービスビジネスの創出に貢献するであろうと思われますが、一方で身体の内側と外側を如何に制御していくのかという視点がさらに重要になると思います。テクノロジーには功と罪があり、人間は脆弱であることを考えると、それらのバランスを如何に取っていくべきか、どのように舵を取っていけばよいのか。社会との関わりの中で健全な未来を拓くためには、これから我々自身が多くの議論を重ねていかなければいけないことを痛感しました。
ご講演頂いた内容は下記の通りです。

「Human Augmentation:人間の能力の拡張と進化」

暦本 純一 東京大学大学院情報学環 教授
ソニーコンピュータサイエンス研究所フェロー・副所長

Human Augmentation、人間拡張の歴史を振り返ると、顕微鏡図譜を発刊したロバートフックは、「顕微鏡は視覚の拡張であり、他の感覚を拡張する機械も発明されるだろう」と、1665年の時点で既に予言していた。
i-Padやスマホの普及により、今日、赤ん坊がマルチタッチで雑誌の写真を操作している映像にあるように、生活に溶け込んでいく技術は、我々の見えない、目立たないところで、我々の生活のクオリティを上げている。Calm Technology、静かな技術と呼ばれるが、人間拡張の技術も近い将来には同様になっていくだろう。
ガートナーのレポートでも見られるように、人間拡張は今後の展開が最も期待される研究分野であり、我々の研究室では、身体の拡張、存在の拡張、知覚の拡張、認知の拡張およびそれらを組み合わせた研究を行っている。深層学習を利用した超音波エコーによる無発声コミュニケーションの研究では、人間とニューラルネットをつなげ、人と機械が相互に学習すると、どのような相乗効果が生まれるのかを実験している。また、英語の映像に字幕を出しながら視線トラッキングを行うと、かなり正確に語学力を推定することが出来ることから、人間の視線トラッキング情報を機械学習すれば、AIと人間との双方向的な進化が期待できるのではないかと考えている。
Human Interfaceには、ダイレクト・マニピュレーションと自律的ロボットなどとのインターフェースがあるが、AIやニューラルネットが人間に埋め込まれるように、より密接に関係していくと、今後ニューラルネットを介して外界と交流するHuman-AI Integration(人とAIの統合)が実現でき、さらなる可能性が広がるだろう。
通信と人間とをつなげ電脳世界にコネクトすることをジャックインと呼んでいるが、人と人、人とロボット、人とモノがつながり、個々の拡張を他に繋いでいくことを、IoA(Internet of Abilities)と呼んでいる。IoAにより、テレポーテーション体験の共有や体外離脱視点による技能支援、遠隔地にいながら国際会議へ参加できるテレプレゼンスの活用など、存在感を伝達する点においても非常に活用が期待される。
技術の進歩は人を幸せに出来るのか。テクノロジーとハピネスは簡単には結び付かないと思われるが、表情フィードバック仮説を立てて笑顔の実証実験を行ったところ、メンタルは行動に左右されることが分かってきた。また、人はすべて自動化されたらうれしいのか。人間は自分で何かを作り出すことでストレスが下がり幸せになることも分かってきた。不便なことにチャレンジしていくことで得られる達成感が人間には必要であることも考慮していかなければならない。
効率性と効能感は密接にバランスを取る必要があるが、効率からいうと必ずしも改善しないが、より満足感が高まり、効能感を得られるところについては、人間拡張の技術が効果的に作用する。効能感を向上させ、我々人間を幸福にするためには、先ず我々は何をやったらうれしいのかを設計し、そこを見据えてどのように人間拡張の技術でサポートしていくのか、自ら影響を与えることで、人と機械の未来に貢献していきたい。

「人間拡張技術による生活知識産業の創出」

持丸 正明 産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 研究センター長

昨年11月に発足した人間拡張研究センターでは、「人に寄り添い、人を高める技術」を研究の理念として、環境や道具が身体能力を拡張するだけではなく、長期的に身体そのものも増強し、wearable(身に着けているもの)からinvisible(見えなくなるもの)になることを目指している。
人は外界を変えようとする生物であり、外界の変化から自分の能力がどのくらい外界を変えられたかを感じ取っているので、これまでの考え方を見直し、人間工学的な視点で新しくデザインし直すことで超人感のような新しい体験を創り出し、得意なところを伸ばし、人をもっとアクティブにしていきたい。また、健康増進につながる運動習慣と心理行動を考えると、人間拡張により共体験を高めたり、健康増進行動を誘発する動機づけが可能である。
理化学研究所とは、運動による遺伝情報制御の解明と応用について共同研究を行っているが、脳が学習して身体の変容を定着させるのではなく、元々人間が持っている身体を作る能力を人間拡張で引き出すことが出来るか、という遺伝子発現に取り組んでおり、筋肉、身体、脳神経系に発現が起こるかを検証中である。
介護分野への応用では、ロボット介護機器により、介護が必要な部分を状況に応じて機能拡張できるので、被介護者のバイタル情報、IoTの情報、利用ログ、生活データをつなぐことで、日々の健康、介護など、生活への支援につなげることが出来ると考えている。ロボットと人との協調の実証例としては、仕事の流れ全体を把握した上で就労現場に運搬ロボットを導入して、作業プロセスの見直しを図り、顧客対応や従業員のモチベーションの向上、生産性の向上につなげている。
我々は機械と人間の協調領域を広げることで、ものづくりからサービスへ展開していくことを目指しており、介護、健康、就労など様々な出口を見据えながら、我々の立地している街全体を知の創出拠点として、サービス標準による市場創出を図っていきたい。

[インタラクティブ・セッション]

テクノロジーの功罪と人間の脆弱性のバランス、技術の進化と幸福感、人間拡張における生物的リスクと社会的リスク、人間拡張の環境側からのアプローチ、人間拡張の目指すゴール、自在化身体と脳機能、人間拡張とWell-Being、共感と自己表現、モチベーションの誘導とコントロール、e-スポーツと武道、人間拡張とデジタル人材の育成、人とAIの共進化など、様々な角度からの活発な意見交換が行われました。

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