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満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」
「新たな文明」の萌芽、探究を!
第2回 けいはんなmeta鼎談
宗教哲学×国際政治学×人類生物学
「けいはんな学研都市」は、その建設理念に照らし、次代を拓く「新たな文明」の萌芽探求の好適地です。
そこで、2022年度、新たに、<「新たな文明」の萌芽、探求を!>プロジェクトを起こし、
「meta鼎談(哲学×科学×技術)」を、そして「市民懇談(roundtable)」を開催してまいります。

「日本文明」の固有性と普遍性 ―「近代文明」の限界を超えて

今、文明の岐路にある我ら、それにいかに立ち向かうのか。

日本の進むべき道は。国際社会への貢献の道は。
3人の専門家が分野を超えて語り合う「文明論」の世界。

日 時
2023年6月17日(土)14:00 〜 17:00
鼎談会場
国際高等研究所
〒619-0225 京都府木津川市木津川台9-3
参加費
無料
定 員
会場40名、オンライン100名
(先着順・定員になり次第締め切り)
締 切
2023年6月15日(木)
申 込
Peatixからの参加申込のみとなります。事前申込の上、ご参加いただきますようお願いします。(会場での申込受付は行いません。)
手続き完了後に、当日の招待メール(ウェビナー(Zoom)のURLを含む)がPeatixから送られます。
なお、開催日時の24時間前に、ご登録いただいたメールアドレス宛に、リマインドメールをお送りします。
オンライン参加の方は、受付時間(13:30~14:00)内に、事前にご連絡するURLからアクセスしてください。
主 催
公益財団法人 国際高等研究所
<「新たな文明」の萌芽、探究を!>プロジェクト事務局
e-mail:goethe0828@iias.or.jp
問合せ先
申込・視聴など、Peatixの利用方法についてご質問などがございましたら、
下記のヘルプページをご確認いただくか、お問合せ窓口にご連絡ください。
Peatix ヘルプページ   https://help-attendee.peatix.com/ja-JP/support/home
Peatix お問い合わせ窓口 https://help-attendee.peatix.com/ja-JP/support/tickets/new
開催趣旨

 ニュートン・デカルト主義的世界観に基づく「近代文明」は、科学・技術文明として隆盛を極め、地球上に「工業社会」を築き上げた。それを基盤とする国民国家は、人類に比類のない「豊かさ」をもたらした。
 しかし、その反面、生存基盤としての自然が毀損し、地球環境システムが不全に陥っている。また「工業社会」から「情報社会」へと進展する人類社会は、「国民国家」の求心力の薄弱化により、そのアイデンティティの拠り所を失いつつあり、人類は生存の危機にある。
 それに立ち向かうためには、豊かな自然観の獲得とともに、「民族」意識の基礎を置いた多様な歴史、文化、宗教などを核とする「新たな文明」と、その求心力の高まりが待望される。

鼎談者
大澤 真幸 末木 文美士 先生【宗教哲学】

国際日本文化研究センター名誉教授


今日、日本の経済や政治の劣化停滞が著しい。長い間日本の歴史は世俗権力と精神文化が拮抗しつつ協力してきた。そのような伝統をもう一度評価すべきである。


1949年、山梨県生まれ。1978年、東京大学大学院人文科学研究科単位取得。博士(文学)。東京大学、国際日本文化研究センター教授を歴任。現在、同大学、同センター名誉教授。比較思想学会理事、前会長。未来哲学研究所長。毎日出版文化賞、中村元東方学術賞受賞。仏教学・日本思想史を専攻し、その研究によって得られた知見を現代に生かし、新しい哲学・倫理学の確立を目指している。著書多数。

佐藤 文隆 三牧 聖子 先生【国際政治学】

同志社大学准教授


歴史と現在との対話の中から、再び大国間の戦争が起こってしまった世界にあって、平和と正義を取り戻すために日本はどのような役割を果たせるか、果たすべきかを考える。


同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科准教授。平和研究、日米関係、アメリカ政治外交研究。東京大学教養学部卒、同大大学院総合文化研究科で博士号取得(学術)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、米国ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学研究員、高崎経済大学准教授等を経て2022年より現職。著書に『戦争違法化運動の時代-「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』(名古屋大学出版会、2014年、アメリカ学会清水博賞)共訳・解説に『リベラリズムー失われた歴史と現在』(ヘレナ・ローゼンブラット著、青土社)。

藤井 啓祐 斎藤 成也 先生【人類生物学】

国立遺伝学研究所特任教授


中央と周辺の対立は、言語でも周圏構造と呼ばれ、ヤマト人が話す日本語の方言で知られている。ゲノムの場合に当てはめたものとして、私が提唱した「内なる二重構造モデル」がある。


1957年生まれ。1979年東京大学理学部生物学科人類学課程卒業、1981年同大学大学院理学系研究科人類学専攻修士課程修了、1986年米国テキサス大学ヒューストン校生物学医学大学院大学修了(Ph.D.)。1989年東京大学理学部人類学教室助手、1991年国立遺伝学研究所進化遺伝研究部門助教授、2002年国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門教授・総合研究大学院大学遺伝学専攻教授(兼任)、2006年東京大学大学院理学系研究科教授(兼任)。2022年3月定年退職、同年4月から国立遺伝学研究所特任教授。

プログラム
13:30 ~ 14:00 受付
14:00 ~ 15:10 各鼎談者からの冒頭発言
15:10 ~ 15:20 休憩
15:20 ~ 16:50 鼎談(参加者との意見交換を含む)
16:50 ~ 17:00 鼎談者からのまとめ発言

2023.06.17(土)第2回「けいはんなmeta鼎談」開催概要

 2023年6月17日(土)14時から国際高等研究所において、第2回「けいはんなmeta鼎談」がハイブリッド形式で、『文明論』をテーマに開催され、全国から60人を超えるご参加がありました。本鼎談は、昨年度、「ゲーテの会」を核として立ち上げられた<「新たな文明」の萌芽、探求を!>プロジェクトの一環として開催されたもので、今回のモチーフは、『「日本文明」の固有性と普遍性―「近代文明」の限界を超えてー』。鼎談者は、宗教哲学分野から末木文美士先生(国際日本文化研究センター名誉教授)、国際政治学分野から三牧聖子先生(同志社大学准教授)、自然人類学分野から斎藤成也先生(国立遺伝学研究所特任教授)。
 鼎談に入る前、討議課題(候補)として、例えば、【国際平和】に関して、ヨーロッパ中心主義的認識枠に映る「世界」、歴史に根差した不信感が映し出す「世界」。これら特有の南北対立的「世界」に替わる普遍的「世界」はいかにして獲得されるか。ここに潜む「現実主義」と「理想主義」の立場の対立はいかにして超えられるか。【日本国家】に関して、日本・日本文化の複合性の源流を辿る。そこに見える日本列島人の「うちなる二重構造」。それと対比される近代日本の家父長国家の一元構造の危うさ。その末路。などが紹介され、今回の鼎談者及び参加者の課題意識の共有化が図られました。
 鼎談は末木先生の司会で進行。冒頭、関係者の課題意識を踏まえ、斎藤先生から、近年、DNA分析手法の開発により生物(人間)進化の系統分析の解像度が飛躍的に上がり、日本列島人の系統(アイヌ人、ヤマト人、オキナワ人)と朝鮮半島の人たちの近縁関係、ヤマト人に存在する二重構造などが次々と明らかになってきているとの説明。また、三牧先生から、G7など国際政治における欧米とグローバルサウスの対立軸の中でのアジアの国日本、「核」をめぐる核抑止論と核廃絶論の対立軸の中での被爆国日本。そのアイデンティティを如何に確立していくかは、日本の国際社会での影響力を左右する重要な事柄であるとの指摘。最後に末木先生から、日本社会は、伝統的に王権(政治世界)と神仏(精神世界)の二重構造の下にあった。また、政治世界も武士(武力装置)と朝廷(文化装置)の二重構造の下にあり、相補関係が保持されてきた。だが、明治以降の「近代化」の過程において、特に第二次世界大戦以後は、精神世界が軽んじられ、文化装置が十全に機能しなくなるなど国家の機軸が失われることとなった。日本社会の再構築が待望される所以であるなどの発言があった。
 鼎談では、冒頭発言を踏まえ、生物(人類)進化と人類の平和的共存との関係、あるいは国家(領土)を超えた平和的関係構築の糸口の探求などに関して意見が弾みました。また、質疑応答では、ユネスコ憲章の唱える「政治・経済を超える高次の「知的・精神的(道徳的)連帯こそ永続的平和の礎」を実現するには、どうすべきか。社会の在り方を上部構造と下部構造に分けて考察するとき、宗教を上部構造と位置付けるか下部構造として位置付けるのかによって、その在り方が大きく変わる。明治以降の「近代化」の過程で、日本は西洋に倣って(西洋ではキリスト教を上部構造と観念している)、宗教を上部構造に位置付けたことが今日の日本社会の空疎化を招来したのではないか。浅薄化させる因となったのではないか。伝統的宗教観に立ち返って、宗教の在り方を見直すことなしに、日本社会の再構築はないのではないか、などの意見がありました。(文責:国際高等研究所)

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