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公募研究

人工知能に関する問題発掘型対話基盤と新たな価値観の創出

研究代表者:江間 有沙
東京大学教養学部附属教養教育高度化機構特任講師

Acceptable Intelligence with Responsibility (AIR)は人文・社会科学、情報学とその両者を有機的に結び付ける科学技術社会論を専門とする異分野協同研究グループである。分野を超えて人工知能の社会的影響を議論し、政府による干渉や産業による利益誘導に左右されない、異分野間の対話・交流を促すための媒体や基盤を構築する。また、人工知能の目指すべき共通アジェンダや社会の未来ビジョンを設計し、技術開発・実装時の新設計基準や規範・倫理・制度に関する価値観を提案する。

参加研究者リスト2017.04.01現在

江間 有沙
東京大学教養学部附属教養教育高度化機構特任講師
秋谷 直矩
山口大学国際総合科学部助教
市瀬 龍太郎
国立情報学研究所情報学プリンシプル研究系准教授
大澤 博隆
筑波大学システム情報系助教
大谷 卓史
吉備国際大学アニメーション文化学部准教授
神崎 宣次
南山大学国際教養学部教授
久木田 水生
名古屋大学大学院情報科学研究科准教授
久保 明教
一橋大学大学院社会学研究科准教授
駒谷 和範
大阪大学産業科学研究所教授
西條 玲奈
京都学園大学経営経済学部非常勤講師
田中 幹人
早稲田大学政治経済学術院准教授
服部 宏充
立命館大学情報理工学部准教授
本田 康二郎
金沢医科大学一般教育機構講師
宮野 公樹
京都大学学際融合教育研究推進センター准教授
八代 嘉美
京都大学iPS細胞研究所特定准教授
吉澤 剛
大阪大学大学院医学系研究科准教授
吉添 衛
立命館大学大学院情報理工学研究科博士前期課程

■ 研究目的・方法

現在、人工知能に関する話題は多く、人工知能の社会的影響についての異分野間対話の必要性が認識されている。情報学系の研究者には、未来への影響を見据えた技術設計への期待が増化しており、人文・社会科学系研究者には、科学者・技術者とともに問題を設定、定義していくことが求められている。そしてそのような場を可能にするような対話の場の形成も求められている。

本研究プロジェクトの意義は、まさに今、現場で技術を作り出している若手・中堅の人工知能研究者が人文・社会科学の研究者と対話することによって、技術の設計・思想段階から有機的に結び付き、新たな概念や技術へのアプローチ法を模索することにある。このような観点から、本研究プロジェクトは、1)人文・社会科学系研究者による倫理的・法的・社会的問題(Ethical, Legal and Social Implications:ELSI)調査グループ、2)人工知能研究者によるAI社会応用調査グループ、3)科学技術社会論や科学コミュニケーションを専門とする対話基盤設計グループを設け、人工知能の社会的影響を議論し、(1)政府による干渉や産業による利益誘導に左右されない、異分野間の対話・交流を促すための媒体や研究拠点をボトムアップで構築し、(2)対話を通して、人工知能の目指すべき共通アジェンダや社会の未来ビジョンを設計し、技術開発・実装時の新設計基準や規範・倫理・制度に関する価値観を提案することを目的とする。

今後の計画・期待される効果

2017年度は、これまでの議論を受けて人工知能の目指すべき共通アジェンダや社会の未来ビジョンの検証と、それを具体的に技術実装のプロトタイプまで落とし込む予定である。そのためにはシステム開発だけではなく、運営・設計論の評価システムの考察を行うことも重要となる。例えばAIRは2016年春に2本の論文を投稿したが、両方とも著者数が多すぎると雑誌側より再考を求められた。しかし本報告は「異分野の研究者が知見を持ち寄った」成果である。「ギフト・オーサーシップ」が「縦のつながり」を利用したシステムであるのに対し、協同研究、特に異分野間のそれは「横のつながり」を意識的に作り上げようとする試みであり、共著論文は異分野の弱いつながりを公的につなげる糊の役割を果たす。このような主張を受け入れていただき、「情報管理」は共著者全員を、「情報処理」は「AIR」を著者としていただいた。現在、異分野協同研究が推奨されているが、異分野協同研究は参加する研究者だけでなく、所属機関や同僚の理解、研究助成や評価システムの支援があって可能となることを改めて実感する機会となった。AIRの活動をきっかけとして異分野研究グループの活動がさらに活性化されることを期待したい。

活動報告

アニュアルレポート