公募研究
精神発達障害から考察するdecision makingの分子的基盤
- 研究代表者:辻 省次
- 東京大学大学院医学系研究科教授
自閉症・精神発達遅滞などヒトの発達障害の中核的障害である意思決定、コミュニケーション能力障害について、その神経科学的基盤の解明により、発達障害の治療法、予防法開発の実現を目指す。そのために、1.ヒトの精神発達障害の分子病態機序の解読、2.齧歯類などの実験動物を用いた分子・回路からの脳の高次機能の解読、3.霊長類の脳機能研究、という3つのアプローチにより、意思決定機構・コミュニケーション機構など脳の高次機能、精神発達障害の分子機構を明らかにする。
参加研究者リスト2016.07.01現在
- 辻 省次
- 東京大学大学院医学系研究科教授
- 磯田 昌岐
- 自然科学研究機構生理学研究所教授
- 井ノ口 馨
- 富山大学大学院医学薬学研究部教授
- 入來 篤史
- 理化学研究所脳科学総合研究センターシニアチームリーダー
- 岡本 仁
- 理化学研究所脳科学総合研究センター副センター長
- 尾崎 紀夫
- 名古屋大学大学院医学研究科教授
- 影山 龍一郎
- 京都大学ウイルス研究所教授・物質-細胞統合システム拠点副拠点長
- 川人 光男
- 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報通信総合研究所所長
- 北澤 茂
- 大阪大学大学院生命機能研究科教授
- 坂上 雅道
- 玉川大学脳科学研究所教授
- 坂野 仁
- 福井大学医学部特命教授、東京大学名誉教授
- 内匠 透
- 理化学研究所脳科学総合研究センターシニアチームリーダー
- 東原 和成
- 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
- 銅谷 賢治
- 沖縄科学技術大学院大学神経計算ユニット教授
- 松崎 秀夫
- 福井大学子どものこころの発達研究センター教授
- 宮川 剛
- 藤田保健衛生大学総合医科学研究所教授
- 山田 真希子
- 量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所
脳機能イメージング研究部チームリーダー - 吉川 武男
- 理化学研究所脳科学総合研究センターシニアチームリーダー
- 渡邉 大
- 京都大学大学院医学研究科教授
■ 研究目的・方法
自閉症・精神発達遅滞などヒトの発達障害は、最近では約100人に1~2人存在すると報告され、社会的に大きな関心が寄せられている。特に、その発症の根本的なメカニズムはいまだに解明されておらず、有効な治療法、予防法が確立されていない。
一方、神経科学の観点からは、分子、回路、ネットワーク、個体レベルの脳機能など階層的な体系の中で研究されてきた。分子生物学や、発生工学の研究手法により、分子、回路の研究が発展してきているが、個体レベルでの脳機能を十分に解明するには至っていない。個体レベルの脳機能の研究は、心理学の分野や、機能的MRIをはじめとする非侵襲的な解析方法などのアプローチがあるが、脳機能をネットワークレベルの機能として解明するには至っていない。
以上の背景から、本研究は、1.ヒトの精神発達障害の分子病態機序を読み解くアプローチ、2. 齧歯類などの実験動物を用いて分子、回路から脳の高次機能を読み解くボトムアップアプローチ、3.霊長類を用いたトップダウンアプローチ、という3つのアプローチの交点となる領域を主たる研究領域とし、意思決定機構、コミュニケーション機構をはじめとする脳の高次機能の解明、および、精神発達障害の分子機構とそれによってもたらされる高次機能の障害メカニズムの解明を行う。また、脳機能として、意思決定機構、コミュニケーション機構などを切り口とした焦点の絞られた研究テーマを扱う。
3つの異なる階層からの研究者による研究チームを構成し、徹底的な議論・討議に基づき、3つの分野の交点となる新たな研究分野の創成の実現とそこから生まれる研究成果を目指している。
今後の計画・期待される効果
本研究2年間の成果として、学際的な研究分野が立ち上がりつつある。分子レベルからは、近年のゲノム解析技術の飛躍的進歩を取り入れて、自閉症の発症に関与するゲノム異常が明らかにされつつある。
分子、回路から脳の高次機能を読み解くボトムアップアプローチは、マウスなどのモデル動物を用いた研究が発展している。霊長類を用いたトップダウンアプローチでは、2匹のサルを用いて自己と他の認識機構の解明研究が進んでいる。resting state functional connectivity MRIという解析手法を用いた研究では、実際に自閉症患者の解析に基づき、特徴的なfunctional connectivityを見いだしており、自閉症スペクトラムのバイオマーカーに応用する研究が発展している。また、neurofeedbackを用いた介入により、このfunctional connectivityの調整することを自閉症の治療へと応用する可能性が示されている。
2016年度は、分子からの自閉症の発症に関わる分子基盤の神経回路への機能解析というボトムアップアプローチを進めると共に、モデル動物を用いたトップダウンアプローチによる脳機能の解明、さらにこれらの成果を基盤としてヒトの脳の病態をどのように深めるかを検討する。自閉症患者を対象としてresting state functional connectivity MRIを用いた研究分野を取り入れるなど、自閉症患者研究をコアに置くと共に、研究を統合し意志決定機構について新たな研究成果を目指す。
研究会の開催状況
- 2016年度
- 2015年度
- 2014年度
活動報告
アニュアルレポート |
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