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自主研究

人を健康と幸せに導く「意識」に関する研究
- 関係性との関連を手がかりに-

研究代表者:高見 茂
国際高等研究所学術参与、京都光華女子大学学長、京都大学名誉教授

今日、人類の生存に関わる諸問題が懸念される中、世界では持続可能な社会の実現に向けて文化学術研究の一層の推進が求められているところである。本研究所の所在する「けいはんな学研都市」は、建設当初よりこうした課題に対し、地球規模での環境に関する研究や自然科学と人文・社会科学との融合による文化学術研究、さらには時代を先取りした多様な試みなどについて積極的に取り組んできた。その結果、1994年の都市びらき以降多くの研究機関や企業が集積し、関西圏では類を見ない科学都市として成長を続けている。
本研究のねらいは、「先端幸福創造都市けいはんな」実現の手立ての一つとして、人を健康と幸せに導く「意識」を明らかにし、けいはんな地区住民を中心とした市民レベルのウエルビーングの向上を図る手がかりを見出すことにある。

参加研究者リスト2025.10.01現在

高見 茂 国際高等研究所学術参与、京都光華女子大学学長、京都大学名誉教授
秋山 知宏 総合地球環境学研究所上廣環境日本学センター特任准教授
国際高等研究所特任研究員
川上 浩司 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康解析学講座教授
木下 翔太郎 慶應義塾大学医学部ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座特任助教
高松 邦彦 東京科学大学戦略本部マネジメント教授
高見 佐知 未来教育研究所研究開発局長

■ 研究目的・方法

本研究は、2015年度から2017年度にかけて国際高等研究所で実施した『「けいはんな未来」懇談会』および『「けいはんな未来」専門検討部会』で提案された「先端幸福創造都市」の実現に向け、また具体的にけいはんな学研都市地域の振興を図る方策を調査検討することを目的として立ち上げられたものである。さらにそれは、本研究に先行して実施された「けいはんな地域のヘルスリテラシーの向上策の研究」の継続研究としても位置づけられる。同研究を通じて得られた知見として、健康にはⅰ)最先端の科学技術による治療や予防、ii)情報通信技術の利活用、iii)医療制度や医療現場の改善、iv)医学の発達、ⅴ)人々の助け合いの社会システムへの組み入れ、vi)個人の意識改革や行動変容、vii)以上の要素が好循環することが必要である、ということであった。そして好循環を生み出す土台の上に、地域住民、地域社会がヘルスリテラシーを備えることが重要であると結論付けられた。
こうした研究成果は、人生100年時代を迎え健康で幸せに長生きするためにウェルビーングに対する人々の関心が高まっている事とも符合する。なぜならヘルスリテラシーの向上は、人々のウェルビーング達成の有効な手立ての一つであると考えられるからである。そこで本研究では、健康と幸せの実現のために必要な要素を見出すことを究極の目的とする。そして先行研究の成果から、健康や幸せを実現している人々に共通する要素として、「関係性」の存在(良好な人間関係、何らかのつながりの感覚=「意識」の在り方)が重要であるとの知見が得られている。本研究では、健康と幸せを実現する「意識」をテーマとして取り上げた。特に「奇跡的事例」に着目し、「困難な状態から著しく健康を回復した」事例群において、共通して見られる意識の傾向や要素の抽出を試みた。

今後の計画・期待される効果

劇的寛解事例に関する論文収集と分析を通して、「意識」と「健康」の間には一定の相関関係があるのではないか、との仮説にたどり着くことができた。そこで、本研究の現時点での到達点について評価することが課題となる。そのため、2025年度には医療専門職者の目を通した本研究の仮説・推論の検証をねらいとして、また研究成果の社会発信として、「意識」と「健康」に関するシンポジウムを「けいはんな万博2025」の「ウェルビーング・ウィーク」の一環として開催することとした。

活動報告

アニュアルレポート
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